イベントの告知や製品の紹介になくてはならないポスターやフライヤー。皆さんはどのようにデザインしますか。
ポスターには掲示することによりその内容を不特定多数の人に知らせるという役割があります。駅・街頭・イベント会場・広場など、人の多く集まる場所に掲載されるポスターは、分かりやすく情報を伝えながら、多くの人の目を誘導させるものでなければなりません。そのため、魅力的なイラストレーションや写真の活用、記憶に残るようなカラーリングやキャッチコピーの使用、視認性を上げるレイアウトの構成など、ポスター制作には 考慮すべき事項が多々あります。
中でも、文章の補足を促し、情報の内容をイメージとして伝達できるのがイラストレーションです。的確なイラストレーションを使ったポスターは見る人の注意を促し、親近感を抱かせる効果を持っています。ビジュアルで訴えたいことをしっかりとPRできるイラストレーションが、優秀なポスターを作る鍵といっても過言ではありません。 今日は、人の心を魅了するイラストレーションを使って数々のポスターやフライヤーをデザインしている Fago Studio のデザインをご紹介します。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Fago Studio! )
Fago Studioは、Lena氏・Axel氏・Baptiste氏の三人のデザイナーによって設立されたグラフィックデザインスタジオです。フランス、ロワール地方最大の都市ナント市を拠点に活動し、美しくオリジナル性の高いイラストレーションを用いたデザインに定評があります。
ヒューマンビートボックス競技大会のグラフィックデザイン制作例
まずは、『Championnat de France — Human Beatbox』のグラフィックデザイン制作例を見てみましょう。
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皆さんはヒューマン・ビートボックスをご存知でしょうか。人間の口や鼻の発生器官を使って創り出す音楽表現のひとつがヒューマン・ビートボックスです。発生器官から発せられる擬音により、レコードのスクラッチ音・ベースやドラムの音、またはリズムマシンのミキシングによる音色などを基本的に一人で再現し、パフォーマンスを行います。 海外、特にフランスでは、このヒューマン・ビートボックスは独自の音楽表現として確立されており、インターナショナルコンテストが毎年開催されています。
Fago Studioが担当したのは、2015年11月にナントで開催された第9回ヒューマン・ビートボックス・フランス選手権の全般にわたるグラフィックデザインです。
通常、ヒューマン・ビートボックスのコンサートやコンテストのポスター・フライヤーには、「マイク」や「音符」のイラストレーションや、出演するビートボックスミュージシャンの画像がモチーフとして用いられることが多いのですが、Fago Studioが提案したのは、機械にも負けず劣らない発声能力を示唆する、人間の持つ可能性を強調したイラストレーション。人間の頭の中に各種の楽器や様々なミキシング装置を配し、それぞれの各器官を通過した音が口から発声されるまでを頭部の断面図で表した絵柄です。まさにヒューマン・ビートボックスそのものを物語っているデザインですね。
ひとつひとつの楽器や装置をシンプルにアレンジしながら丁寧に描きこみ、ベタ塗りにすするのではなく所々に掠れを入れて出来上がったイラストレーションは、ユーモラスでどことなくレトロな雰囲気を醸し出しています。ヒューマン・ビートボックスを知らない人にも、一見して「なんだろう」と注意を喚起し、記憶に留まらせる効果を持つ秀逸なイラストレーションです。
カラーリングには赤系と緑系が採用。とりわけ赤色はこのイベントのグラフィック媒体のメインカラーとなっています。 この印象深いイラストレーションを全面に配置し、下部にイベントタイトルや日時・場所等のプログラム、スポンサー名を整然と明記しレイアウト構成されたポスターデザインは、視覚的にも非常にバランスが取れ、親近感を抱かせるテイストに仕上がっています。
イラストレーションと赤のメインカラーは、ポスターデザイン・フライヤーデザインに加え、Webサイトのバナーやイベントの会場やステージ構成にも使われ、一貫としたブランディングデザインを形成しています。
企業のアイデンティティを表現したグリーティングカードのデザイン
次に見て頂くのはSemitan社の グリーティングカード『Carte de vœux』のイラストレーションです。
Semitanは、ナント市の都市交通であるナント・メトロポール(Nantes Métropole)公共交通ネットワークの会社です。ナント市民の足として欠かせないバスやトラムの運行業務をしています。Fago StudioはSemitan社より、2016年を祝う2015年のクリスマスカードのデザインの依頼を受けました。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=20&v=Oj-SXs9SAIc
Semitan社の2016年へのスローガンは、「クリーンなネットワークを一緒に築こう」。実際に、水素をエネルギーとして運行するシャトルバスNavhybusやハイブリッドバスの運行を実施したり、トラム路線に面するいくつかの建物に太陽光発電パネルを設置したりと、自然エネルギーで展開する交通ネットワークを目指し、生態系に優しいまちづくりを奨励しています。
ナント市の中心を走る大切な公共交通機関であることの再認識を施し、エコロジーの意識が高いSemitan社というアイデンティティーを反映できるようなイラストレーションがこのプロジェクトのコンセプトとなりました。
メインイラストレーションを見てみましょう。歴史的価値の高い中世の建造物、ロワール川、自転車で行き交う人々やのんびりと散策・歓談している人たち、緑に恵まれた豊かな自然環境など、ナントを表現するアイテムで構成された背景の中に、Semitan社のバス・トラム・連絡船をアレンジした2016の数字が巧みにはめ込まれています。 一見して即座に「2016」が認識され、ゆっくりと全体を見渡すとナント市のピースフルでゆったりとした時間の流れが彷彿されるデザインです。 エコロジーをイメージさせるグリーンやブルーを主体としたカラーリングに、赤や黄色が要所要所にアクセントとして使われています。
カードは見開き状に構成されていて、表紙には「pour faire advancer/notre réseau/nous avons besoin de/toute votre énergie(私たちのネットワークが前進するためにはあなた方のエネルギーが必要です)」との提唱が、メインイラストレーションに使われたいくつ化のアイテムと一緒に表現されています。
カードを開けると、左サイドには2016年の到来を祝うフレーズ、右サイドには2015年の業績報告と2016年の業務目標が確認でき、中央にはまるで額装された一枚の絵画の様に見えるメインイラストレーションが配置されています。内包されたSemitan社の社長の挨拶レターパッドにもカードと同じイラストレーションが使われ、統一したデザインとなっています。
青がテーマの音楽イベントのグラフィック制作例
最後は、ナントの文化機関「Culture UB」が提供するミュージックイベントのグラフィックデザインです。
Culture UBは、現代音楽における芸術創造の開発を推奨している文化機関です。自由で文化的な音楽イベントを通して一般市民へのデジタル社会における問題意識を高め、経済の自由化に伴う間違った消費スタイルに警鐘を鳴らすことを目的としています。 Fago Studioは、2016年5月にナント市民に愛されている植物庭園 Jardin des Plantes で開催された『À l’Heure Bleue(青の時間で)』のグラフィックデザインを担当しました。
この植物庭園を散策した多くの人たちが感じる高揚感や特別な雰囲気を、イラストレーションやタイポグラフィーを通して、分かち合うことのできるデザインにすることがこのプロジェクトのコンセプトだったそうです。
イベントタイトルにマッチして、カラーリングには青色が主体。精巧に美しく描きこまれた庭園の夜景イラストレーションからは、イベント前の静寂さやピースフルで神秘的なムードが伝わってきます。
下部に配置された筆記体で流れる様に構成されたイベントタイトル文字との組み合わせも抜群で、 ハイセンスなイメージを全体に漂わせる秀逸なグラフィックデザインです。
文字に比べ、瞬時に内容をイメージさせることのできるイラストレーションは、ポスター・フライヤー制作の重要な要素です。見る対象は誰か、内容を想像できるか、テーマと合っているか等を充分に考慮したイラストレーションは、見る人の記憶の中に強い印象を残します。 Fago Studioのイラストレーションが皆さんのアイデアの参考となれば幸いです。
design : Fago Studio ( France )
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