みなさんはポスターやフライヤーのデザインにコンピューターを使いますか。それとも昔からのアナログ手法、手描きで一つ一つイラストレーションを構成しながら制作しますか。コンピューターで綺麗で正確に整ったグラフィックデザインを制作するのが主流となった現在ですが、あえて「手描き」で様々なデータを視覚化しているデザイナーもまだまだ大勢います。
手の跡が残るイラストレーションは、見る人に親しみや共感、また物語性を感じさせ、オリジナリティを出すことに大変有効です。
また、「手描き」といっても、シンプルに鉛筆やペンで描かれた走り書きやスケッチ風なもの、淡い色彩を使ってイメージを表現する水彩画風なもの、細部まで丁寧に描き込まれた精密画風なもの等、色々なスタイルがあります。これらのスタイルに加えて近年世界的に何かと注目を浴びているのは『マンガ』や『アニメーション』のテイストを満載したグラフィック作品。日本が牽引するポップカルチャー、マンガとアニメですが、日本以外にも至る所に個性的なグラフィックデザイナーが数多くひしめき、時代性を反映した刺激的なデザインが次々と発表されているジャンルです。
今日は、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで活躍するグラフィックデザイナー・イラストレーター Nikolas Anizetti 氏のポスター・フライヤーデザインを見てみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Nicolas ! )
双頭の恐竜がインパクト抜群なミュージックライブのフライヤーデザイン
Trap Safariは2013年の10月にアメリカ合衆国カリフォルニア州のオークランドで開かれたミュージックライブパーティーです。Anizetti氏はこのイベントの ロゴやフライヤーのデザイン、またwebページの制作を手がけました。
ブレインストーミング(課題抽出)と称されているアイデア満載のメモを見ると、彼の制作プロセスが伺えます。イベントへのコンセプトには、視覚アイデンティティを形成するためのキーワード(オークランド・サウンド・動物・ボディ・植物系・熱帯系・ヒップホップ…など)が多数列挙。また、ロゴやフライヤーのデザインの基本的な形体やファーストイメージが描かれています。
出来上がったロゴは、奥行き感のあるアルファベットTRAPとSAFARIの文字を組み合わせたロゴタイプです。各文字の大きさや文字の配列には微妙な動きを感じさせられるように考慮されており、親しみやすさが感じられます。
フライヤーの主人公は双頭の恐竜にまたがる女の子。熱帯雨林を背景にコミックのようなテイストで全体が描かれています。華やかで軽快な音楽イベントにふさわしい、明度の高いカラーリングがなされています。
情報のまとめ方がお洒落なイベントフライヤー作成例
次はブエノスアイレスにあるDisco Killerでのパーティーイベントフライヤーです。Disco Killerはブエノスアイレスの若者に人気なライブスポット。期間ごとにテーマを決めて 一年中音楽ライブパーティーを開催しています。Anizetti氏はこのライブパーティーのフライヤーとFacebookのカバーイラストのデザインを担当しました。
一見すると、赤いスタジアムジャンパーを羽織っている女の子のキャラクターが主体のイラストレーションですが、ジャンパーに付けられているバッジやワッペンに、ライブの日時、参加アーティスト名、また「午前二時までは無料」等の料金の情報が上手く組み込まれてデザインされています。
フライヤーデザインの表面と背面が、キャラクターの前向きと後ろ向きに対応しているのも実にユニークで、アニメーションテイストのイラストならでは、のレイアウトですね。コントラストの強い赤色と黄色をベースにした配色も、見る人の目を引く効果抜群の組み合わせです。
シンメトリーな構図で迫力のあるライブフライヤーデザイン
こちらは同じくブエノスアイレスにあるパブ Makena Cantina Club で開かれた衣料品店 De Hoy No Pass 社主催のライ
ブパーティーのフライヤーです。
フライヤーのレイアウト構成をするにあたって、その構想が手描きで綴られています。De Hoy No Passの頭文字を取ったDHNPを上部に配置し、大まかなイラストレーションとライブインフォメーションの位置を示しています。
イラストのモチーフの『手』には「カットされた指」や「花柄のタトゥー入り」などの注釈を付け、イラストの背面には「水、太陽、または大地?」とのコメントもあり、この作品に対するAnizetti氏の制作プロセスが伺えるメモですね。このようなアイデアスケッチは、デザイナーにとって思考をまとめていく上で欠かせない重要な作業の一つです。
出来上がったフライヤー・facebookカバーデザインは、タイトルDHNPが飾り文字で構成され、ストリート感がありつつも、色使いや花柄から華やかなテイストをイメージさせられるものに仕上がっています。
サングラスをアイコンとして効果的に活用したフライヤー作成例
最後はBAU(Buenos Aires Underground)のミュージックイベントのフライヤーです。BAUはヒップホップミュージックやそれに付随するカルチャー(タトゥーやグラフィティーなど)を促進するグループです。
グループ名BAUの字を白地で塗りつぶし記号化した形と、黄色の星型のサングラス、マリファナがこのフライヤーのメインのモチーフです。アーティスト名や各種情報は黄色の背景に統一して記載されており、視覚的にも大変優れています。
コミックのようなテイストでデザインされたNikolas Anizetti氏の作品を見てきました。アナログとデジタルの境界線を取り払う様々なソフトウエアを使って美しいデザインを作ることが可能な昨今、グラフィックデザインの作成方法も益々広がりを見せています。
アナログ的な感覚で制作を開始し、最終的に親しみやすくも刺激的な作品を多数発表している Anizetti 氏の今後の活動にこれからも期待したいですね。
design : Nicolas Anizetti ( Argentina )
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