「適材適所」という言葉があります。適した場所に適したものを、という意味ですが、ポスターの制作や設置はまさにその適材適所を意識することがとても大切です。誰に、何を伝えるために、どのようなものをどこに掲示するのか。そのためにはどのようなデザインで作るべきなのか。掲示される様子を想定しながら制作することがポスターデザインには欠かせない要件の一つです。
イベントや映画などの宣伝には、日時や場所、出演者や主催者などの情報、商品の宣伝ポスターなら、品名や価格、発売日や紹介文など、掲載しなければならない情報がある程度決まっています。ポスターはそういった情報を伝達することも大きな役割の一つですが、もう一つ大きな役割があります。それは「イメージ」の伝達です。
ポスターはチラシなどに比べサイズが大きく、掲示される場所は人通りの多い場所がほとんどです。露出度が高くデザイン次第ではとても目立つ存在となるでしょう。絵柄を大きく見せることが可能なので、写真やイラストといったビジュアル表現を発信するには適した媒体といえます。そうした特性を生かし、アパレルブランドのポスターを制作している、インドネシアのイラストレーターIsa Panic Monsta 氏の作品を紹介したいと思います。POPで奇抜、夢のような世界観を商品化しているアメリカのブランド「MOKUYOBI」とのコラボレーション作品です。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Isa Panic Monsta!)
アパレルブランドとのコラボレーションポスター
アパレルブランド「MOKUYOBI」は、日本語の「木曜日」に由来します。欧米の週末の感覚は日本とは少し違い、日本で言うところの「金曜の夜」に当たるのが木曜日。すなわち、これからはじまる週末のワクワク感を感じる曜日が「木曜日」というわけです。MOKUYOBIは、木曜日同様に、高揚感を感じてもらえるような商品づくりをコンセプトにしています。バッグやウェアはとても個性的で、POPな色使いや奇想天外なイラストレーションの柄物を中心に、アメリカのカリフォルニアから世界中のおしゃれ好きの若者に支持されています。
そんなMOKUYOBIがポスターの制作依頼をしたのがインドネシアのイラストレーターIsa Panic Monsta 氏です。さまざまなタッチで描き分ける彼のイラストの世界は、どれもイマジネーション豊かで幻想的。そして、常に時代の「今」を感じさせるファッショナブルな部分も持ち合わせています。MOKUYOBIの世界観と彼の世界観は重なる部分が多く、コラボレーションが実現しました。
どの絵柄も、ビビッドな色味を背景に、動物や人物が楽しそうに描かれています。色彩理論をうまく活かし、背景に対しどのイラストも引き立てられるようなカラーリングで描かれています。動物も人も物も、従来の存在や動きに縛られることなく自由にのびのびと描かれているのが印象的です。人物が身に着けている衣服やバッグ、小物などはもれなく同ブランドのものを取り入れ、これらの商品が馴染むブランドの世界観を見事に表現しています。
このポスターデザインシリーズは、一貫して情報量が少なく、ブランドのイメージを表現する目的で制作されました。用途としては、店内外の掲示用、店内インテリア装飾、商品購入者特典にノベルティとしてのプレゼントなどです。ターゲットをこのブランドの支持層である10代~20代の若者に絞り、彼らが自己投影できるような世界をイラストで作り上げることで、広告物としてのポスターをより価値のあるものへと昇華させたのです。
ポスターには、細かな情報を伝えるために制作されるものもありますが、こうした宣伝を目的としながらも、「アート」である部分を大切にし、作品であるポスターそのものに価値を見出すパターンも存在しています。特に、著名なアーティストと自社製品のコラボレーションなどはそれだけでも大きな価値があり、ターゲット以外の新たな顧客層にもアピールすることができます。
まとめ
ポスターには、装飾用のタペストリーに代表されるように、広告媒体のほかに「インテリア」や「ファッションアイテム」としての見方も存在します。また、イメージを重視するブランドの広告である場合、今回紹介した事例のようにその両方の側面をもった媒体となることもあります。ポスターは「読むもの」ではなく「見るもの」。眺めるに値するハイクオリティーなポスターデザインは、例え広告としての役割を終えたあとでも、いつまでも残っていくものなのかもしれませんね。
design : Isa Panic Monsta (Indonesia)
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