
台湾でもポピュラーに飲まれている「啤酒(ビール)」。公営企業が手がけるビールブランドに加え、近年では民営企業が生産するビールの種類もどんどん豊富に。パッケージデザインも従来までのクラシカルなイメージとは一線を画する、一見ビールとは思えないユニークなものがたくさん見られるようになりました。
斬新なビールが続々登場している台湾のスーパーマーケットから、売り場で特に目を惹かれたアイテムをピックアップしてご紹介します。
【台灣啤酒 水果系列】おいしい記憶を呼び覚ますカラーリングで、バリエーション展開。時代とともに変化を続ける公営企業のフルーツビール

台湾でビールといえば、昔から広く親しまれているのが「台灣啤酒」。
公営企業である台灣菸酒が手がけるビールブランド「台灣啤酒」には現在、ブランドを代表するビールとなっている「金牌台灣啤酒」をはじめ、クラシカルな味わいにこだわった「經典台灣啤酒」、生ならではのおいしさを届ける賞味期限18日の「18天台灣生啤酒」など、13種類にわたるビールシリーズがラインアップ。時代とともに変化を続けながら、台湾の定番ブランドとして愛され続けています。
台灣啤酒が手がけるビールの中でも、ポップな魅力が光る「水果系列」。水果とはフルーツのことで、台湾名産フルーツのフレーバーを加えたビールシリーズが販売されています。

パッケージデザインは、台湾啤酒のロゴはそのままに、色鮮やかなカラーリングでかわいらしい印象に。フレーバーは、葡萄(ぶどう)、芒果(マンゴー)、鳳梨(パイナップル)の3種類。ロゴの左下にジューシーなフルーツの写真を添えたレイアウトと地色のカラーリングで、シリーズとしての統一感が保たれています。
ロゴまわりや缶の下方にある丸みを帯びたサンセリフ体の英字や、「水果系列」と書かれた角丸大きめなアイコン周りのデザインがまた、やわらかで親しみやすいイメージを強めてくれています。
購入したのは、マンゴーフレーバーの「芒果」。赤と黄のカラーリングは、ひと目で完熟した愛文マンゴーが連想され、台湾を代表するフルーツを食べた時のおいしい記憶が自然と呼び覚まされます。
プルタブを開けた瞬間からふわっと立つマンゴーの香りのとおり、ひとくち目からしっかりと感じるフルーティな甘み。そこに絡んでくるビールの苦味がキレの良さを演出し、非常に飲みやすいドリンクに仕上げられています。
公式サイトでは「微醺系列(ほろ酔いシリーズ)」にラインアップされている通り、アルコール度数は2.8%とかなり低め。カクテルグラスに注いで食前酒として振る舞うのも似合いそうな、なじみやすい1缶です。
フレーバー違いの色展開は「ロゴを固定し、地色だけで変化をつける」のが鉄則
水果系列に見られる「ロゴとレイアウトは共通、地色の変化でフレーバーを識別する」手法は、シリーズ展開の教科書的なアプローチです。消費者は棚で複数のフレーバーが並んでいるとき、「色だけで味の違い」を0.5秒で判断しています。ロゴの位置やサイズまで変えてしまうと、シリーズとしての一体感が崩れ、「同じブランドの別商品」ではなく「別のブランド」に見えてしまいます。
日本で飲料や菓子のシリーズ展開パッケージを制作する際にも、「何を固定して、何だけ変えるか」のルールを最初に決めてからデザインに入ることが、棚でのシリーズ認知を高める基本です。
【SUNMAI 晃晃仙桃】モチーフは日本の昔話!? キュートなイラストが目を惹く、ピーチフレーバーの缶ビール

台湾でビールを生産する民営企業の先駆けとして知られる「金色三麥」。おいしい味わい、おいしい時間を「分享(シェア)」することをコンセプトに掲げて成長を続け、台湾各地にて西洋式の大皿料理と共にビールを楽しめるビアホールが運営されています。
そんな金色三麥は、家庭で楽しめる缶ビールや瓶ビールを生産するブランド「SUNMAI」も展開。「蜂蜜啤酒」や「經典小麥啤酒」など、世界のビールコンテストで賞を獲得したビールをはじめ、バリエーション豊富なフレーバーを楽しめるビールが多数ラインアップされています。
中でも、思わず売り場でじっくり眺めてしまったのが、ピーチフレーバーのビール「晃晃仙桃」。ピーチを連想させるピンクを多めに取り入れつつ、緑や青など淡めのカラートーンで構成されたイラストが何ともキュート。独自のアプローチで、数多くのパッケージが並ぶビールコーナーでもひときわに目を惹かれます。

パッケージに描かれているのは、日本の昔話・桃太郎をモチーフにしたと思われるイラスト。
桃のマークと太郎の文字がプリントされた何ともゆるいタンクトップを身につけて、大きな桃の上に乗った男の子がビールを飲みながら、川に揺られてどんぶらこ。一緒に流されていく動物たちは、犬、猿と来て、雉ではなく小鳥や兎であるという、絶妙なハズし方。台湾らしい自由な解釈でデザインされたパッケージは、つぶさに観察するほどにおもしろい発見が溢れています。

品名になっている「晃晃」は、ふらふらという意味。
缶の側面に添えられたコピーには「出門到處晃晃(あちこちへふらふらとお出かけ)」×「微醺搖搖晃晃(ゆらゆらふらふらとほろ酔い)」と書かれており、アルコール度数4.0%でひかえめである点もかわいらしく訴求されています。
グラスに注いだ瞬間の泡立ちの良さが、見るからにおいしそう。まろやかな泡に口を浸しながら飲んでみると、ふっと鼻に抜けるのは、ほんのり香るピーチの香りと酸味。あとから追ってくる芳醇な苦味で、本格派なビールであることもしっかり主張されています。
フルーツらしい甘みはひかえめ。キュートなパッケージと、意外にキリッと大人な風味とのギャップにもまた、グッと心を掴まれます。
「ストーリー性のあるイラスト」がクラフトビールのパッケージで効果的な理由
SUNMAIのパッケージで印象的なのは、日本の桃太郎を連想させるようなイラストがビール缶に描かれている点です。クラフトビール市場では、大手メーカーとの差別化のために「ビジュアルで物語を感じさせる」パッケージが増えています。
この手法が効果的なのは、クラフトビールの消費者が「味だけでなく体験を買っている」からです。大量生産品との違いを伝えるには、「誰かの想いやストーリーが込められている」ことを視覚的に示す必要があり、イラストレーションはその最も直感的な伝達手段です。日本のクラフトビールでも、地元の伝説や季節の風物詩をイラストで描くパッケージが成功する理由と同じ構造です。
【臺虎精釀 朦朧柑橘優格啤酒】とびきりポップなデザインが斬新!オレンジヨーグルト風味のビールって、一体どんな味?

パッケージデザインのポップさという意味ではピカイチな、「臺虎精釀」の「朦朧柑橘優格啤酒」。
キャップを被った大きな四つ目のオレンジが、虎が描かれたヨーグルトのカップの上にのほほんと座っている、不思議な画面構成。そのまわりにペイントツールで落書きしたような太陽や雲、花などのラフなイラストが散りばめられ、見るだけで元気をもらえるデザインに仕上げられています。


成分表示を除いてどこにも中国語が書かれておらず、一番に目につくのも、青地のギザギザ吹き出しの中に「オレンジヨーグルトBEER」と大きく書かれた日本語。
今にも破裂しそうなふっくらとした丸文字のフォントで、ポップな印象がより強調されており、缶ビールのパッケージとしては非常に斬新なアプローチとなっています。

そしてやっぱり、気になるのはお味。
グラスに注いでみると見えるのは、ビールの中にふわふわと漂うオレンジピールのような粒。オレンジのさわやかさから始まり、ヨーグルトのまろやかな酸味、そして最後にビールの苦味と、口の中で次々と変化していく風味のグラデーションがとてもユニーク。一見ミスマッチに思えるフレーバーながら、全くの違和感なくドリンクとして成立させているバランス感覚が秀逸です。
このビールを生産している臺虎精釀は、他にもアルコール度数9.99%の強めのビールにパッションフルーツやミルクなどのフレーバーを合わせた「9.99」シリーズや、台湾のポピュラーなフルーツであるグァバと烏龍茶のフレーバーをミックスしたビール「芭青哥果茶啤酒」、紫蘇とクランベリーのフレーバーを組み合わせたエール「紫蘇蔓越莓艾爾」など、ユニークなビールを多数発売しています。
民営企業としては最大規模を誇るビール工場を有する臺虎精釀。実験室から生み出される遊び心とアイデアあふれるビールが絶えず発表されており、新しいもの好きな台湾の人々の好奇心に応え続けています。
「ビールらしくないデザイン」は意図的な業界慣習の逸脱
臺虎精釀のパッケージが「一見ビールに見えない」のは、ビール業界の視覚的慣習(緑や金色の配色、麦のモチーフ、クラシカルなフォント)から意図的に離れているからです。
この「業界らしくないデザイン」戦略は、「その業界の棚の中で異質な存在として目立つ」ことを目的としています。周囲がすべて従来型のビールパッケージの中に、スイーツのようなポップなデザインが1つ混じっていれば、嫌でも視線が止まります。ただし、この戦略はリスクも伴います。「ビールだと認識されない」レベルまで業界慣習から離れると、そもそもビール売り場で手に取ってもらえない可能性がある。「業界の慣習を外しつつ、商品カテゴリーは伝わる」ギリギリのラインを攻めるさじ加減が制作上の課題です。
まとめ
台湾缶ビールのパッケージデザインに注目してみました。
ユニークなフレーバーやデザインのビールが、続々と登場している台湾。現地へお越しの際にはぜひパッケージにも注目しながら、進化を続ける台湾のビールを堪能してみては?
<プロフィール> Mae
2012年より台湾・台北在住。グラフィックデザイナーとしてお仕事をする傍ら、現地生活や旅行情報を綴るブログ『にじいろ台湾』の運営や、ライターとしても活動しています。日本と近くて、似ているようで、本当は色々違っている。そんな台湾での発見を、みなさんとシェアしていきたいです。
ブログ『にじいろ台湾』 → https://kazukimae.com/
※掲載商品・パッケージ等のデザインは当サービスの制作実績ではありません。
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