台湾でも、定番の食事として親しまれている麺料理。ローカルグルメ店や麺専門店で、現地の味を楽しめるのはもちろん、スーパーやコンビニには台湾ならではの麺をパッケージ化した「泡麵(カップ麺)」も、ずらりと並びます。
台湾で親しまれている麺料理にはどんな種類があり、またカップ麺となったそれらは、どのようなパッケージに包まれているのでしょうか?
カップ麺にも生まれ変わる台湾の麺料理には、どんな種類がある?
台湾の麺料理としてまず思い浮かぶのが、煮込み牛肉のせ麺「牛肉麵」。赤みを帯びたピリ辛スープの「紅燒牛肉麵」と、透き通るあっさりスープの「清燉牛肉麵」の大きく2種類があり、お店では太麺、細麺、刀削麺など、麺の太さや種類を指定できることも多いです。この牛肉麵をパッケージ化したものは、台湾カップ麺の定番として、非常によく見かける1品となっています。
ソースを絡めていただく混ぜ麺も、台湾ではポピュラーな麺料理。中でも、豚そぼろや刻んだ豆干(=木綿豆腐を圧縮したような硬い豆腐)などを加えたしょっぱいソースと絡めていただく「炸醬麵」は、その代表格。ソースと細切りきゅうりなどを添えただけのこのシンプルな麺は、カップ麺にも有名商品があるほど、現地で広く親しまれています。
台湾でよく見かけるものとしては他に、煮込みそぼろやゆで海老などをのせた台南伝統の麺料理「擔仔麵」や、たっぷりの具材とともに小さな鍋で麺を煮込んだ「鍋燒麵」なども。
平打ち麺と揚げ麺、2つのタイプがある「意麵」や、台湾式そうめんとも言われる細麺「麵線」、米粉から作る弾力のある細麺「米粉」など、麺自体の種類も非常にバリエーションに富んでいます。
では、カップ麺として変身を遂げた台湾の麺料理たちは、一体どのようなパッケージに包まれているのでしょうか?コンビニやスーパーのカップ麺コーナーから、一部をピックアップしてみたいと思います。
豪華絢爛なイメージを打ち出した牛肉麺のカップ麺「滿漢大餐」シリーズ
牛肉麵をパッケージ化したカップ麺の中でも、スーパーやコンビニで必ずと言っていいほど見かけるのが「滿漢大餐」シリーズ。清朝時代の豪華絢爛な宮廷料理・滿漢全席の精神がインスピレーション源となっており、豪華なカップ麺を提供したいという想いから生まれた1品です。
滿漢大餐の牛肉麵は、スープの風味によって「珍味」「蔥燒」「麻辣鍋」の3種類が。中央に大きく配置された金色の立体的なロゴと、雲をかたどったような赤、オレンジ、紫の地色との強いコントラスト、ベースには龍の意匠を施したゴールドが敷かれ、華やかかつ豪勢なイメージが打ち出されています。
調理パックから加える牛すじ肉は、ほろほろの煮込み加減が本格派。ビーフのうまみが詰まったスープが、平打ち麺によく絡みます。顔の大きさほどもあるカップにたっぷりで、ボリュームも満点。カップ麺の中では少し高めの価格帯ですが、その分の豪華さがしっかりと打ち出されています。
台南の伝統麺料理からヒントを得たカップ麺の定番「統一麵」シリーズ
麺自体の写真もイラストも一切レイアウトされておらず、パッケージからは中身が想像できない。それでも、このデザインだけで消費者の食欲を刺激し続ける「統一麵」シリーズは、台湾で50年以上の長きにわたって愛され続けている定番のカップ麺。年月を経ても変わらぬ味わいと、積み重ねられて来た人々の「おいしい」記憶あってこそ成せるデザイン、と言えそうです。
台湾南部の街・台南の伝統麺料理をヒントに生まれたという統一麵。小さな椅子に座って麺を作る料理人と、その背後で食事を楽しむ人々の素朴なイラストは、まさに台南の街角で擔仔麵を味わっている様子が思い出されるビジュアルです。
「肉燥」「鮮蝦」「肉骨茶」「蔥燒牛肉」の4つの風味の他、肉燥風味では米粉でいただくタイプも。ビビッドなピンクやブルーでバリエーション展開されたパッケージは、カップ麺コーナーには欠かすことのできない存在となっています。
「肉燥」風味では、調味油に入っている揚げエシャロットの香ばしさと、小さなサイコロカットの豚肉に効かされた胡椒の香りがアクセント。この上なくシンプルながら、台湾ならではの風味を存分に堪能できる1品です。
「乾麵附湯 一桶兩吃」のコピーに注目したいカップ麺「︎維力炸醬麵」
統一麵と同じく、昔ながらのパッケージが現在まで愛され続けている例として、「維力炸醬麵」も外せない1品。青、赤、黄など原色を使ったメリハリたっぷりなデザインの注目ポイントは、黒い線で縁取りされた2つの碗。黒地に白抜きで添えられた「乾麵附湯 一桶兩吃」のコピーと共に、維力炸醬麵ならではの食べ方を表現しています。
「乾麵附湯 一桶兩吃」とは「混ぜ麺+スープ 1カップで2つの食」の意味で、パッケージを開けると、カップが2つに分離。麺入りカップは湯切りの後、調味油を混ぜ合わせた炸醬麵として。空っぽの方では、スープ用調味料と湯切りのお湯を混ぜ合わせてスープとして。別碗の準備もお湯の無駄もなく、1つのパッケージで完結するように設計された発想がユニークです。
豆板醤のピリ辛が効いたソースと、好みの硬さに仕上げた麺をしっかり混ぜ合わせて。うす塩味のスープを合間に啜りながらいただきます。
カップ麺でしか味わえない国営企業のオリジナル麺料理「︎花雕麵」シリーズ
台湾の国営企業・台酒の「花雕麵」シリーズは、このカップ麺でしか食べられないオリジナル麺料理。パッケージの片隅にレイアウトされている「花雕酒」を加えていただく独自の食べ方が注目され、一時は売り切れが続出したこともあるほど、根強い人気を誇ります。
シリーズ人気の火付け役となった「花雕雞麵」は、赤、白、青のカラーリングと、大きくレイアウトされたシズルが目を惹くデザインに。右隅や側面に敷かれた金の布地が、伝統的で煌びやかなイメージを演出しています。「花雕酸菜牛肉麵」では、酸菜を連想する深緑を取り入れ、バリエーション展開が成されています。
花雕酒を加えることによる華やかな香りと甘み。後味のキレの良さも、チキンのうまみが詰まったスープにほどよく加わり、最後の1滴まで余さず味わいたい仕上がりです。
アニメ風キャラや流行語コピーが目を惹く「︎雙響泡」シリーズ
ユニークなパッケージで、ひときわ目を惹かれる「雙響泡」シリーズ。全7種類の風味それぞれを人格化したようなアニメ風キャラクターたちと、彼らに合わせた流行語コピーの相乗効果で、他のカップ麺とは一線を画すユーモア満点なデザインとなっています。
商品名に「雙」とあるように、麺のかたまりが2つ入っているのも、大きな特徴。カップも深く作られておりボリューム満点で、食べ盛りな若者たちの心をつかむ商品づくりが成されています。
7種類の風味の中で、魚やエビのうまみを閉じ込めた調味料・沙茶を加えていただく「沙茶鍋燒湯麵」は、特に台湾らしい味わいの1品。沙茶独特の香ばしさが加わって、鍋焼麵のおいしさがカップ麺で上手に再現されています。
まとめ
台湾カップ麺のパッケージデザインに注目してみました。
長年親しまれ続けるレトロな趣あるデザインから、若者の心をつかもうと試みる挑戦的なデザインまで、台湾カップ麺のパッケージもバリエーション豊富。現地へお越しの際には、お湯を入れて3分で楽しめる台湾グルメにも舌鼓を打ってみては?
<プロフィール> Mae
2012年より台湾・台北在住。グラフィックデザイナーとしてお仕事をする傍ら、現地生活や旅行情報を綴るブログ『にじいろ台湾』の運営や、ライターとしても活動しています。日本と近くて、似ているようで、本当は色々違っている。そんな台湾での発見を、みなさんとシェアしていきたいです。
ブログ『にじいろ台湾』 → https://kazukimae.com/
※掲載商品・パッケージ等のデザインは当サービスの制作実績ではありません。
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