グラフィックデザイナーのLuke Ritchie氏は、南アフリカ共和国のケープタウンを拠点に活躍しています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ジョー マローン ロンドン、マクドナルド、ケンタッキーフライドチキン、アマゾン、といった世界的ブランドのプロジェクトを数多く手がけてきました。
得意分野は、レタリング、イラストレーション、ブランディング、パッケージデザインです。Ritchie氏のポートフォリオから、特徴的な、力強い作品をいくつか見てみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Luke Ritchie ! )
シズル感たっぷりのマックフルーリーのレタリング
マックフルーリーは、ソフトクリームにさまざまなトッピングを加えたマクドナルドの人気スイーツです。英国では、2014年に「Chewy Chocolate Cookie(ザクザクチョコクッキー)」が発売され、販売促進キャンペーンが展開されました。キャンペーンビジュアル用のレタリングをRitchie氏は手がけています。
チョコレートの質感を再現したレタリングは、まるでチョコレートペーストで書いた文字のようで、とてもおいしそうです。
アイデアのエッセンスが最終稿まで生きた好例
Ritchie氏は、レタリングやサムネイル、レイアウトの構想を手書きでスケッチしました。実際に公開されたビジュアルと見比べてみると、Ritchie氏のアイデアがそのまま踏襲されているのがわかります。
レタリングを含め、キャンペーンビジュアルを仕上げたのは、クライアントあるいは代理店社内のクリエイティブチームだということですが、Ritchie氏のレタリングのニュアンスは損なわれていません。
デザイン案のエッセンスがフィニッシュまでしっかりとキープされ、ディレクションがスムーズにうまくいくためのヒントが、このチョコチップ・フルーリーの事例から見つけられるかもしれません。
細部に思いが込められている
Ritchie氏のレタリングでは、「C」「y」「s」のスワッシュ(ひげ飾り)がチョコレート感を演出する要素のひとつとなっています。やわらかいカーブやふくらみ具合が秀逸です。
レタリングの案には、ベットリしたバージョンとベットリしていないバージョンのふたつがありました。ベットリバージョンでは、溶けたチョコレートがあちらこちらで垂れています。ベットリしていないバージョンでも、わずかですが、溶けかけた部分やしずくが描かれていました。
公開されたビジュアルのスワッシュやしずくなどは、Ritchie案と完全に一致しているわけではありませんが、こういった細部の表現によって、Ritchie氏の意図が正確に伝わったことは確かでしょう。
トーン演出に一役買っていることば遊び
キービジュアルの文字は、「chewy(歯ごたえ)」「chocolatey(チョコ風味)」に加えて、見慣れない単語が並んでいます。
これは、「yummy(うまい)」「tasty(おいしい)」「deliciousness(おいしさ)」の頭を「chocolate(チョコレート)」と同じ「ch」に置き換えた造語です。
チョコにひっぱられた言葉のおもしろさを見せると同時に、「C」「y」のスワッシュによるチョコレート感の演出を揃えるための工夫とも考えられます。
老舗ビールブランドのシンボルをリニューアル
イタリア、オーストリア、ハンガリー、クロアチアに囲まれている国、スロベニアでは、ワインと並んでビールもよく飲まれています。首都リュブリャナのビール醸造会社「Union(ウニオン)」は、1864年創業の老舗ブランドです。
街とブランドのシンボルを版画タッチでアップデート
リュブリャナのシンボルはドラゴン。首都の紋章になっています。また、4頭のドラゴンの彫刻が飾られている「竜の橋」は、首都の観光名所のひとつです。
ビールブランドUnionのマスコットもドラゴンのイラストです。このブランドのマスコットをアップデートしないか、とRitchie氏に声がかかりました。
ヘンドリック・ホルツィウス(Hendrik Goltzius)、ヤン・ファン・デ・ヴェルデ(Jan van de Velde)といった、17、18世紀のオランダの版画家に強く影響を受けているというRitchie氏。竜の橋のドラゴン像をベースに、魅力的なドラゴンのイラストを銅版画風のスタイルで描き上げました。
歴史的醸造所のイラストとビール博物館
Ritchie氏は、Unionの古い醸造所も版画風イラストに仕立てています。Unionでは、ビール博物館と製造ラインを見学できる「Union Experience」というツアーをおこなっていますが、ツアーのロゴと組み合わされたRitchie氏のイラストが来場者を迎えます。
クリスマスの袋を飾るオリジナルレタリング
英国で2012年に創業した「The Handmade Christmas Co.(ハンドメイド・クリスマス社)」は、クリスマス用のグッズを販売しています。
サンタクロースのプレゼントをもらうために、いまでも大きな靴下が吊るされます。同社は、その代わりとなる、現代にふさわしい袋を提供することをコンセプトとしました。開発に2年をかけて2014年にリリースした、名入れできるクリスマスの袋(サンタサック)が話題となります。
The Handmade Christmas Co.のサンタサックは、名入れできるタイプもレディーメイドタイプも、ひとつひとつ丁寧に手作業で仕上げられています。最高級の麻布を使った、愛情あふれるデザインのサックは、英国以外でも多くのファンを獲得しました。
Ritchieスタイルが生み出す温かいデザイン
サンタサックのデザインには、Ritchie氏のレタリングとイラストレーションの技が、遺憾なく発揮されています。
クリスマスに関連するキーワードが、オリジナルのレタリングで散りばめられています。装飾的でオーガニックなレタリングは、レトロ感とモダンな印象が融合。喜びとぬくもりを感じるデザインです。
サンタ・クロースやトナカイ、クリスマスベル、ギフトボックス、雪景色なども、Ritchie氏ならではの版画タッチ。イラストとレタリングが、古書の表紙や扉絵のようにレイアウトされています。The Handmade Christmas Co.ブランドのプレミアム感が伝わります。
レディメイドタイプのデザインは、もう少しシンプルでモダンな仕上げです。こちらもすべて、Ritchie氏のオリジナルレタリングで上品に飾られています。
いずれのタイプも、サンタサック自体がうれしいギフトと言えるでしょう。
ケンタッキーのキャンペーンビジュアル用素材
ケンタッキーフライドチキン(KFC)が南アフリカで展開した、バーレル(バケツ)販売促進キャンペーンのキービジュアルに、Ritchie氏の作品が起用されました。
キービジュアルでは、Ritchie氏の作品が印刷されたペーパーが、バーレルと一緒に写っています。ペーパーには、Ritchie氏のレタリングが所せましとぎっしりレイアウトされています。ところどころに、バーレルやオリジナルチキン、ニワトリなどのイラストも。
レタリングの文字は、有名なタグライン「It’s finger lickin’ good(誰にも真似できないおいしさ)」を始め、手作り、新鮮、ハーブ、スパイスといった言葉です。レタリングの中には、コサ語やズールー語で書かれた「ようこそ」「ドラム」などの言葉も混ぜられています。南アフリカ共和国の公用語は、なんと11言語もあるそうです。
design : Luke Ritchie ( Cape Town, South Africa )
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