
今回はボスニア・ヘルツェゴビナでブランディングやパッケージデザインに携わっているEmir Kudic氏の作品を紹介したいと思います。Emir Kudic氏の強みは洗練されたデザインはもちろん、色選びのセンスかと思います。どんなにいいデザインでも色選びに失敗してしまっては勿体ないですよね。使用色の絞り方や魅せ方についてEmir Kudic氏の作品は凄く参考になるので、是非ご覧ください。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。(Thank you, Emir Kudic!)
Kudic氏の配色が「印象に残る」のは「予想外だけど不快ではない」色の組み合わせだから
Emir Kudic氏のパッケージの配色が記憶に残るのは、「この商品カテゴリーで通常使われない色」を選びつつ、「商品の魅力を損なわない」範囲に収めているからです。
食品パッケージで紫を使う、化粧品パッケージでオレンジを使う。通常は選ばれにくい配色を採用することで、棚の中で「異質な存在」として視線を集めます。ただし、「異質すぎて気持ち悪い」配色は逆効果です。Kudic氏の配色が「印象的だけど好感を持てる」のは、「予想外の色を使いつつ、色同士の相性(補色関係や明度のバランス)は計算されている」からです。
アメリカのベーカリーのブランディングとパッケージデザイン

「Bakelove」は、アメリカ・カリフォルニアに拠点を置くベーカリーです。ブランド名にちなんでハートと麦が合体したロゴアイコンが可愛らしいですね。シンプルな線で描かれているので他の文字とのバランスも良く感じます。ロゴの文字は丸みのあるセリフ体で堅すぎず、甘すぎない印象です。全てのパッケージや販促物の使用色はレッド、アイボリー、ネイビーの3色に絞られています。
テイクアウト用の紙袋にはハートと麦が分裂したデザインが背景に使われています。ポップで可愛らしい印象です。メインで使用するカラーに合わせてアイボリー背景なら、ロゴはネイビー、またネイビーを背景にするならロゴはアイボリーと、どのパターンにしてもお店の印象が崩れず汎用性があり素晴らしい色選びとなっています。
この法則は、他のパッケージになっても同じく活用できるのでショップカードやカップ、エプロン、包み紙や缶バッジまで統一感を持ったブランディングになっています。色で認識してもらえば視覚的に印象に残りますね。
高級感と親しみやすいさを兼ね備えたチョコレートブランドのパッケージデザイン

『CHOCO LATE』はフレーバーチョコレートを販売しているオランダのチョコレートブランドです。イラストを使用したカラフルで魅力的、且つ高揚感のあるパッケージデザインにしたいというクライアントからの要望があったそうです。全体の構成やレイアウトにラフ感や動きのあるイラストを入れることで競合他社との差別化を図っています。カラフルという要望ですが、取り入れたのはポップになりすぎない深みのある三色。ですが決しておとなしくは感じさせない色のチョイスが流石ですね。



フレーバーによってカラーの組み合わせを変えていますが、使っている基本色は三色にまとまっているので統一感があります。バナナのフレーバーにはイエロー、ベリーにはレッド、ミントにはグリーンを使用しています。中央にレイアウトしたボックスは背景色とのコントラストで、しっかりと引き立っていますね。背景のイラストと同じテイストで描かれたカカオのイラストと、背景色と文字色が揃えてあるおかげで全体がしっくりと馴染んできます。高揚感もありつつ、高級感も共存しているパッケージデザインに仕上がっています。
多色使いに魅せられる美しいお菓子ブランドのパッケージデザイン

ポートパステルは、職人が手がけるオーストラリアのお菓子ブランドです。高品質でこだわりを持った製品を販売しています。色とりどりのお菓子をイメージしたのでしょうか、使用色を8色に絞りました。一見デザインに使うには多いように感じる8色なのですが、パターン化する事によって万能且つ汎用性の高い使い方ができるのだと感じました。作例をご覧ください。

2パターンのデザインパターンを使用しています。抽象的な滑らかなデザインと、規則的なデザインです。どちらも使用色は同じ8色。色数は多いのですが、グリーン系とレッドからオレンジ系でまとめられているのでごちゃついたイメージはありません。ワクワクするような印象はありますが、子供っぽくはない絶妙なラインが素晴らしいです。

ロゴ部分は白背景を置き、8色の中で一番濃い色を文字色に使用して統一感を持たせています。紙箱やCOFFEのテイクアウトデザイン、カップデザインなどにも同じパターンが使用されています。印象に残る色選び、またパターンがある事で人々に覚えてもらいやすいでしょう。
Kudic氏のパッケージにおける「マットな質感」と「鮮やかな色」の対比効果
Kudic氏のパッケージでは、マットな質感の素材に鮮やかな色が印刷されているケースが多く見られます。この「マット×鮮やか」の組み合わせが独特の視覚効果を生んでいます。
光沢紙に鮮やかな色を印刷すると「派手」「ポップ」な印象になりますが、マット紙に鮮やかな色を印刷すると「落ち着いた鮮やかさ」「抑制された活力」という矛盾した印象が共存します。同じ色でも印刷する素材によって印象が変わる。この「色×素材」の組み合わせによる印象のコントロールは、パッケージ制作で意識する価値のある設計変数です。
まとめ
デザインを作りながらイメージに合わせて色を決める方も、最初に使用色を決めてスタートする方もいらっしゃるかと思います。Emir Kudic氏のようにブランディングに取り掛かる際に、デザインと使用色のリストを照らし合わせていくと制作の方向がぶれずに保ちやすいと感じました。また、色を中心に統一感を持たせる事で、汎用性の高いデザインが出来上がることも素晴らしいと感じました。
design : Emir Kudic(Tuzla, Bosnia and Herzegovina)
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