
ポーランドのフリーランスデザイナー Piotr Łapa 氏は、ポーランド国内でいくつものブランディングを手掛け、ブランドの顔となるロゴマークを多数デザインしてきました。
彼は工科大学の出身で、当時は設計を専攻していたそう。その片鱗はグラフィックデザイナーとなった今も随所に見られます。彼の手掛けるデザインは、均整のとれた安定したプロポーションでシンプルなラインを持つものが多く「構造的な美」を感じられるデザインが数多く見られます。
ロゴデザインにはさまざまなものがあり、ブランドの特徴によってデザイン表現は無限の選択肢があります。その中でも幅広い層の人をターゲットにする事業やサービスの場合、多くの人が見て好感を覚えるようなデザインが求められます。
彼の得意とするデザインは、多くの人に安定感と美しさを感じさせるデザイン。設計や建築の知識を持った彼が、どのようなロゴデザインを作っているのか作品集より抜粋して見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Piotr! )
「論理的な美しさ」を持つロゴに共通するのは「構築の過程が見える」透明性
この事例集のロゴが「論理的」と評されるのは、完成形を見たときに「この形がどういう手順で構築されたか」が推測できるからです。円を重ねて交点を取った、グリッドに沿って線を引いた、黄金比を適用した。構築の論理が完成形から透けて見える。
「論理的に美しいロゴ」は、制作プロセスをプレゼンする際に「なぜこの形になったか」を幾何学的な手順で説明できます。この「構築プロセスの説明可能性」が、クライアントに「感覚で作ったのではなく、論理的に導き出した形です」という信頼感を与えます。
左右対称で安定感のある美しいロゴデザイン
1.デジタルグッズストア「VECTOR HEAVEN」のロゴ

真ん中にあるエンブレムを中心にシンメトリーな構図でデザインされたロゴマーク。
エンブレムの外形を象るのは「VECTOR」の「V」、その中には「HEAVEN」の「H」が入り一体化しています。シンボルマークの上下を「VECTOR HEAVEN」と「DEGITAL GOODS STORE」で囲み、全体を円形にまとめています。
カクカクとしたシンボルマークと周りを囲む円形のラインが相反しながら調和し、クラシックなエンブレムというモチーフを現代的に昇華させています。
2.森林保護団体「ARBORISTS ASSOCIATION」のロゴ

森林保護団体らしい木のピクトを中心に左右対称なデザインがなされています。
木のピクトは、木の幹をセンターに枝が左右それぞれに同じ角度で伸び、対称さを強調しています。さらに、木全体の三角形のフォルムと上下反転するように、背景となるベースが逆三角形に配置されているのもポイント。左右対称と同じように、上下対称も規則的な美しさを感じさせる配置です。
3.ワインハウス「MEGAN&MORRIS」のロゴ

こちらも、エンブレムをシンボルにした左右対称なロゴマーク。先ほどのデザインとは違い、線が細くやわらかな印象でまとめています。
ブランド名にある「MEGAN」と「MORRIS」。この二人の名前を対称に扱い、対比させるようにデザインすることで、二人が共同で行っている事業であることを印象付けています。
エンブレム下段にある縦と横のライン、横ラインは「MEGAN」、縦ラインは「MORRIS」をあらわし、上段にある「M&M」で統一を図っています。
4.パーソナルプロジェクト「FUSIONS」のロゴ

用途は明らかではありませんが、個人的な目的で制作された「FUSIONS」のロゴ。
中心にある罫線で囲われた箱の中にある「FUSIONS」を境に、上下対称に配置された植物のモチーフ。鏡に映った象とは異なり、左右が逆転していることから、「回転対称」といわれ、美しく見える構図の一つとして用いられています。身近なものでは、トランプや家紋などによく登場します。
5.ハンドメイドジュエリー「LORINI」のロゴ

手作りの宝石を扱うジュエリーショップ「LORINI」のロゴデザイン。
上から、「The LORINI HANDMADE JEWELLERY」となるように配置された文字。真ん中のショップ名と宝石のイラストを中心に、左右対称に構成されています。
ショップ名を飾るリボンが3段にも及び、宝石を扱うのにふさわしい豪華な雰囲気を演出しています。しかしながら、同じ太さの線で描いたモノラインの絵柄は、いたってシンプル。豪華な演出ながら、華美な感じを出さないデザインは、現代らしいモダンな描き方といえるでしょう。
頭文字やイニシャルを印象的な形にしたロゴデザイン
1.デザイナー自身のロゴマーク「Piotr Łapa」

イニシャル「P」を真ん中に、左斜め上に「Ł」を配置し、二つの文字をぐるりと曲線でつないでいます。
二つの文字から成るモノグラムは、ロゴマークのデザインのモチーフとしては定番的なパターンの一つですが、このデザインのように連結部分を二か所設け、文字以外の装飾と溶け合うように一体化しているのは珍しい例。文字の組み合わせとしても美しく、一つの図形として見た時にも美しい、秀逸なロゴデザインです。
2.不動産サービス「Pocket Place」のロゴ

「Pocket Place」は、立地にこだわった物件を紹介する不動産サービス業。
そのこだわりをあらわすべく、シンボルマークには、マップ上で場所をあらわすアイコン『ピン』をモチーフにしています。
ピンの真ん中には、さりげなくブランド名の頭文字「P」を置き、独自性を表現しています。はじめはなかなか気がつかない「P」の存在ですが、よくよく見ると、周囲との高い親和性に驚かされます。
3.弁護士「Anna Drabik Lawyer」のロゴ

イニシャル「A」と「D」を組み合わせたモノグラム。文字の線に強弱をしっかりとつけ、メリハリを効かせたデザインです。細く繊細な縦線は、女性らしいきめ細やかさや品の良さをあらわし、太線の部分は、芯のある知性を感じさせます。
「弁護士」は、信頼と堅実さが求められる職業ですが、女性弁護士となると、イメージはそれだけではなく、女性だからこそ持ち得る繊細や品の良さも表現したいところ。女性弁護士Anna Drabikのロゴマークは、宝飾店やDCブランドのロゴのようなラグジュアリー感を持ちつつ、鋭い知性と賢さをも感じさせる、洗練されたロゴマークです。
グリッドシステムを使ったロゴの構築が「美しさ」と「再現性」を同時に担保する
この事例集のロゴの多くがグリッドシステム(方眼やガイドライン)の上に構築されているのは、「美的なバランスの担保」と「再現性(誰が描いても同じ形になる)」の2つの目的を同時に達成するためです。
グリッド上に構築されたロゴは、「この角はグリッドの交点に合わせている」「この曲線は半径◯mmの円弧に沿っている」と数値で定義できます。数値で定義されていれば、別のデザイナーが別の環境で描いても同じ形が再現される。この再現性が、ブランドの長期運用において「ロゴが徐々に変形していく」事故を防ぎます。
絵柄をメインにしたシンメトリーなロゴデザイン
1.Web制作会社「Jan Kobialka」のロゴ

百獣の王、ライオンを堂々とシンボルマークに使ったロゴマーク。
ライオンの顔の中心を基準に、左右対称な形で制作されています。
たてがみと顔とを同じテンションで描くことにより、全体的な外形が整い、一つのマークとして機能しています。
2.ファッションデザイナー「Rachel Roy」のロゴ

ファッションデザイナーRachel Royは、ユーザーの声を生かしたファッションやジュエリーのデザイン制作はもちろん、女性や子どもたちを支援する活動を活発に行うオピニオンリーダーでもあります。
そんな彼女の自由で豊かな発想や生き方をデザインしたのが、この翼と植物をモチーフにしたシンボルマーク。シンメトリーな構図の中に、イニシャル「R」を据え、伸びやかで力強いイメージを形作っています。
まとめ
彼の制作したロゴマークは、どれも安定感があり、安心できる美しさがあります。奇異をてらったインパクト重視のデザインにも良さはありますが、まずは、基本を押さえた美しい構図をレパートリーに入れておきたいですね。
design : Piotr Łapa ( Poland )
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