
1996年生まれのポーランド人デザイナーTomasz Król 氏。20代前半という若さで、さまざまなブランドのロゴデザインやブランディングを手掛ける、ポーランドのデザイン業界を牽引する気鋭のグラフィックデザイナーです。
その年齢と未だデザイナーとして成長中という彼のプロフィールを見ると、得意分野に偏った作品作りや、未完成な技術を想像しますが、ここ数年の彼が携わったプロジェクトを見る限り、「若手だから」という遠慮も未熟さもまったく感じさせないプロの仕事ぶりが伺えます。
彼の作品はクライアントの要望を自由な感性で具現化し、ジャンルにとらわれず豊富な表現方法で形にしています。若く柔軟な感性が作り出すデザインの数々を一緒に見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。( Thank you,Tomasz! )
若手デザイナーのロゴに見る「既存のルールに縛られない」発想の価値
この事例集の若手デザイナーによるロゴに共通するのは、「ロゴはこうあるべき」という既成概念に縛られない自由な発想です。ロゴが動く、形が変わる、色が場面で変化する。こうした「固定されないロゴ」のアプローチは、デジタルメディアが主流になった現代だからこそ成立する表現です。
「ロゴは1つの固定された形であるべき」というルールは、印刷メディアが中心だった時代の前提です。画面上で動き、変化するメディアが主流の現代では、「動的なロゴ」も有効な選択肢として検討に値します。若手デザイナーの「前提を疑う」姿勢は、新しい時代のロゴの可能性を広げています。
歴史ある都市クラクフの公共交通機関のブランディングとロゴデザイン

中世から栄えてきたポーランドの都市「クラクフ」。
クラクフには交通網の発達に伴い、バス・電車・路面電車・地下鉄などさまざまなバリエーションの公共交通機関が存在しています。大元はすべて「クラクフ公共交通」ですが、それぞれの機関の種類によりできた年代が異なるため、交通機関を象徴するロゴマークがバラバラでした。

都市生活者にとってそれぞれのロゴが示す意味はわかっていても、同じ公共交通機関であるにも関わらず印象はバラバラで、統一性に欠くことが大きな問題点でした。
リブランディングしたロゴ

そこで、それぞれの交通機関がすべて「クラクフ公共交通」の傘下であることがわかるよう、大掛かりなリブランディングが行われました。

メインとなるロゴタイプは、シンプルなサンセリフ体の中心にラインが通ったアルファベット。アイデアの元になったのは、バスや電車の路線図です。道路を彷彿とさせるセンターラインが入ったアルファベットを、街の中を複雑に交差する路線図を切り取ったように微妙なカーブがついたラインで描いています。




交通機関それぞれの頭文字のアルファベットをシンボルマークとして扱い、共通のフォントとカラーで統一感を出しています。濃紺のブランドカラーは知性や信頼を感じさせ、公共の設備として相応しい落ち着いた雰囲気を演出しています。



新たなロゴデザインはブランドのアイコンとして、乗車カード・看板・時刻表・車体デザインなど、交通機関のあらゆる場所に起用されています。交通機関であることを意味しながらも、無駄を廃したシンプルなデザインは、今の時代のモダンさも内包しつつ、伝統と歴史ある都市にも違和感なく馴染んでいます。
カラフルでユニークなビストロのロゴデザイン

ポーランドのビストロ「SPOT」は、伝統的な料理をカジュアルなスタイルで提供する新感覚のお店。その独自性が表現できるよう、伝統と斬新さを両立させたロゴマークが考えられました。
上から見た花や葉菜のように見えるマークには、よく見ると中心に「SPOT」の文字が隠れています。モノクロのデザインで見ると、まわりのパーツと店名が一つの絵柄のように混在し、シックでエレガントな雰囲気すら感じます。
しかし同じロゴマークにも関わらず、「SPOT」の文字以外の部分を原色や蛍光色で色付けすると、単色のロゴとはまったくイメージを変えたPOPな現代アートのようなロゴマークにガラリと変身します。



ロゴマークの世界を存分に広げたペーパーカップや看板・バッグなど、カラフルでユニークなロゴデザインは、その存在感だけで多くの人の関心を集めることでしょう。
芸術性を感じるタイポグラフィフェスティバルのロゴデザイン

「TYPO Fest」と銘打たれたこのイベントは、デザイナーや各種クリエイター向けに企画された、タイポグラフィやフォントに焦点をあてて開催されたもの。対象がデザイナーや広告関係者などの感性の鋭い人々であることから、ロゴデザインも今のデザイントレンドを生かしたアーティスティックなものになりました。


近年注目されている色彩豊かなグラデーションをベースに神秘的な雰囲気を背景にし、「TYPO」の4文字をそれぞれ異なった表現でデザインしています。
シャープでロジカルな雰囲気を持つ上段2文字と、歪みや滲みなどの有機的表現を施した下段2文字。その4文字と対照的な手書き風の「Fest」。異なるテイストを集約しながらも、一つのまとまりを感じるロゴデザインは絶妙なバランス感覚で成り立っています。
「文字」と「デザイン」を愛する人ならじっくりと見てしまうこだわりのロゴデザインです。
「柔軟な感性」は「異なる分野からのインプット」で磨かれる
この事例集の若手デザイナーの作品に見られる「柔軟さ」は、デザインの教科書だけでなく、音楽、映画、ファッション、建築、料理など異分野からのインプットがデザインに反映されていることから生まれています。
デザインのインプットをデザインだけに限定すると、「デザイナーの間で流行している表現」の範囲に収まりがちです。異分野のインプットは、「デザインの世界では思いつかなかった視点」をもたらします。若手デザイナーに限らず、意識的に「デザイン以外の分野」から刺激を受ける習慣が、表現の柔軟性を維持する有効な方法です。
まとめ
クライアントの要望に対し、どのようなスタイルで応えるかはデザイナー次第。要件を満たした上で、どのようなエッセンスでデザインするか…そのデザイナーのセンスにかかっています。
Tomasz Król氏はクライアントの要望を汲み、ブランドに適した形を明示した上で、潮流を生かしたデザインに仕立てています。
デザイナーは年齢の差なく、新しいもの、今受け入れられているものについてアンテナを張り巡らせておく必要があります。とくに、ロゴデザインはブランドの看板となるもの。多くの人に好意を持ってもらえるよう、TPOをわきまえ、適度にトレンドを生かしたデザインを意識していきたいですね。
design : Tomasz Król ( Poland )
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