人類は昔から、左右対称なものを「美しい」と感じる感性を持っています。それは今も大きく変わらず、いわゆる美女美男といわれる顔立ちもシンメトリーであることが多いと言われています。デザインにおいてもこの法則は不滅であり、シンメトリーなデザインは安定感をもたらし、多くの人から好感を得やすいデザインだと言えるかもしれません。
メキシコのデザイナー Miguel Bardales 氏は、シンプルで幾何学的な要素を用いたデザインをこよなく愛しています。幾何学柄はアルゴリズムのように規則的な法則を持っており、一定のパターンを守って展開されていきます。リズムが良く、バランスをとりやすいため、安定性がよく全体が美しく見えます。
シンメトリーは幾何学的な配置の中でも代表的なもの。Miguel Bardales氏のデザインにも数多く登場します。同氏が描く、シンプルで美しい幾何学的なデザインの一部を眺めていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。( Thank you, Miguel ! )
幾何学パターンを生かした不動産ブランドのロゴデザイン
始めに紹介するのは、ラグジュアリーレジデンスと銘打たれた「RAHABA」というブランドのロゴデザイン。高級住宅に相応しい、重みのあるシンボルマークが特徴的です。5本の線でコの字に囲まれ、中には太陽と海を象ったような絵柄が描かれています。
左側にあるコの字ラインの角の延長線上に斜線が入っており、右側の角と合わせると、浮かび上がるようにピラミッドのような三角形が見えてきませんか?斜線がなければ、シンメトリーの構図だけで終わっていましたが、線を一本加えイメージを見る側に補完させることで、新たな絵柄を見せるという凝った構図のロゴデザインです。
こちらのロゴデザインも先ほどのロゴと同じく高級住宅地である「THREE KEYS」のロゴデザイン。ブランド名にちなみ、3つの鍵がデザインされています。鍵の絵柄を見てみると、小さな円と大きな二つの円が合わさり、鍵の装飾部分を形作り、下の鍵の部分はY字の線で構成されています。
一見すると上品で緻密な鍵の絵柄に見えますが、一つ一つを見ていくとシンプルな図形を使い組み合わされていることがわかります。単純な図形から繊細な美しさを作り上げた、左右対称の上品なロゴデザインです。「円」をイメージとして使うことで、そこに住む人たちの「輪」や「和」を感じることができますね。
こちらは「THREE KEYS」の別パターンのロゴデザイン。
シンプルなサンセリフ体のロゴタイプを主体に、「THREE」の「E」の字の縦ラインを延長し3つの円を組み合わせることで「鍵」の絵柄に見せています。「E」の形をそのまま鍵の一部にあてはめ絵柄にしている部分が非常にユニークで、印象に残ります。
こちらはまた別の高級住宅地「Mamsha al saadiyat」のロゴデザイン。ブランドの頭文字「M」をシンボルマークの核にデザインされています。
3本のラインを使い四角の画面いっぱいに大きく描かれた「M」。下のスペースにはやや細いラインを使い、同じ角度同じ間隔で放射状に線が描かれています。限られたスペースの中で、最大限大きく大胆に描かれた絵柄は、力強い存在感を放っています。不動産らしい確固たる安定感は、シンメトリーの構図が大きく寄与しています。
住宅地「QASAD」のロゴマークです。白い背景に、ブルーとグレーを基調にしたロゴは、現代的で清潔感のある印象を与えます。濃淡のあるブルーで描かれたシンボルマークは、一見すると複雑な柄に見えますが、よく見ると、4つの同心円が重なりあっています。
右下にくる濃いブルーの円だけをそのまま残すことで、全体のアクセントとし、あえてシンメトリーを崩すことでモダンな雰囲気を作っています。
文字をベースにしたフードビジネスのロゴデザイン
ワインの醸造と販売を行う「CASA VERDE」。頭文字「C」と「V」をモノグラムにし、ロゴマークをデザインしています。「V」はワイングラスの形にも見え、「C」は周囲を囲う円と同調し、シンメトリーのバランス良いロゴに仕上げています。
料理のパンフレット「TASTE THE TREND」のロゴデザインです。
シンプルに表現された頭文字「T」の中に料理を象徴するスプーンのシルエット。周りをぐるりと囲む太い円と一緒に、インスタグラムのロゴを彷彿とさせる色相をまたぐ美しいグラデーションで色付けされています。「TASTE OF TREND」は「流行の味」という意味。デザインにも今の流行を取り入れたミニマムでモダンなロゴマークです。
蛇をモチーフにしたフットボールクラブのロゴデザイン
メキシコのサッカーチーム「PIONEROS DE CANCUN」のロゴマークは、ホームであるカンクンの起源に由来する「蛇」と勝利の象徴である「王冠」をモチーフにデザインされました。
勇猛な蛇を力の象徴である盾の形にデザインし、中に王冠の飾りと「P」「O」「C」をロイヤルな雰囲気を持つモノグラムで表現しています。
力強さと崇高さの両方を持つこのデザインは、サポーターたちの新たな誇りとなるチームの象徴。フラッグやグッズとなって地元を熱狂させています。
まとめ
幾何学とデザイン。それは、理系と文系のように相容れないもののようにも感じますが、根底では切り離せない密接な関わりを持っています。
図形は、ムードや感情など、言葉では説明しきれない膨大な情報を「形」として表現することを可能にします。例えば、四角形は「安定感」や「堅実性」、円は「完成」や「永続性」など象徴的な意味や概念を人々に印象付けます。そして、それらを組み合わせたり並べたりしてできる、幾何学的なデザインは、空間的な調和、対称・非対称をもって、さらなるイメージを展開し、総合的な美しさを見出します。
ロゴデザインを考える時、ブランドの意図することを単純化し、図形と配置にこだわってデザインすると、また違った角度から新たなアイデアが生まれるのではないでしょうか。
design : Miguel Bardales ( Mexico )
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