
英国スコットランドの首都エジンバラを拠点に活動する Jieni Kao 氏は台湾出身のイラストレーターでありグラフィックデザイナーです。
台湾の国立雲林科技大学(NYUST)でデザインの学士号、英国のエジンバラ・カレッジ・オブ・アートでイラストレーションの修士号を取得しました。
イラストレーターとしては、書籍や雑誌、ポストカードのためのイラストを描いています。作品の特徴は、デザートや旅行、日常生活、ラブストーリーなどをモチーフにした暖かく明るい色調です。
パッケージデザインや広告作品も手がけていて、自身の描いたイラストをフィーチャーした、あたたかくやさしいタッチがブランドのルック&フィールを効果的に作り出しています。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。( Thank you, Jieni Kao! )
海外デザイナーの作例を見るとき「配色の文化差」に注目すると学びが深まる
海外デザイナーの作例を鑑賞するとき、形やレイアウトに目が行きがちですが、最も文化差が表れるのは実は「配色」です。
たとえば、台湾のパッケージデザインでは、日本ではあまり見ない彩度の高いピンクとターコイズの組み合わせや、オレンジとライトグリーンの配色がポップに使われていることがあります。日本のパッケージデザインに慣れた目には「派手すぎる」と感じるかもしれませんが、台湾の売り場や食文化の中では自然に受け入れられています。
こうした配色の文化差に気づくことで、「自分が『普通』だと思っている配色は、実はその文化圏のローカルルールにすぎない」という視野の広がりが得られます。普段使わない色の組み合わせを試すきっかけとして、海外事例の配色は格好の教材です。
栄養食品ブランドのギフトパッケージデザイン

中華圏では、ツバメの巣はフカヒレやあわびに並ぶ高級食材ひとつで、スープやデザートに使われており、健康や美容によいとされています。母子の健康を願うギフトとして、妊娠祝いや出産祝いの定番です。
「Let’s Yan 樂絲燕」は、この食用ツバメの巣を専門に扱う食品ブランドです。うさぎ年のギフトセットのパッケージデザインを依頼されたKao氏は、うさぎ6匹とユリ、グラジオラス、菊、ネコヤナギなどを描きました。
台湾では、ユリは結婚式の贈り物の定番です。また、誕生日祝いとしても人気があります。グラジオラスは開業・誕生日・卒業など新しい門出をお祝いするシーンで贈られることが多いようです。
明るい黄色やオレンジの菊も誕生日や昇進など、スタートを祝福する気持ちが込められます。一方、白菊は日本と同じくTPOが限られるようです。

ネコヤナギは、中国語で「銀柳」といい、福建語の「富を保つ」という言葉と同じ発音になります。縁起が良いので、春節(旧正月)には欠かせない飾り物です。
中華圏では赤と金が縁起のよい色です。お正月には屋内屋外問わず、赤と金があふれます。
Kao氏もギフト用パッケージに赤と金を採用。ただし、少し落ち着いたピンク系を選んだのは、母と胎児または新生児向けの商品ということを考慮しての選択なのでしょうか。
ツバメの小さなシルエットを金の箔押しでちりばめて、おめでたい雰囲気を演出しています。
ご祝儀袋やギフトカードでは、ツバメが箔押しされていなかったり、イラストの数が異なっていたりしますが、全体としてパッケージデザインと同じコンセプトでまとめられています。
Designer | Jieni Kao
Photographer | mouth.i
実店舗の雰囲気とオーナーの思いを反映した図鑑のようなパッケージデザイン

台湾南部の屏東県でチーズケーキなどを中心に製造販売している「Mods Cake」は、自然の素材を生かしたスイーツ作りを心がけています。健康的な食生活を求めて、低糖質のレシピを採用。
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店の中庭では、看板猫やウサギ、ニワトリが自由に日向ぼっこを楽しんでいます。同店のインスタグラムには緑豊かな庭を背景にした、カラフルなスイーツの写真が並んでいます。

同店のパッケージデザインをKao氏が手がけました。Mods Cakeのオーナーは、パッケージの質感を重視していて、レトロな台湾風デザインを望んでいました。また、オーナーは植物が大好きです。
そこでKao氏が考えたのは、オーナーのお気に入りの植物がぐるりとケーキを包みこむ構図です。ビカクシダ、ナンヨウスギ、モンステラ、フィロデンドロンといったオーナーの好きな葉が小さなケーキをとり囲んで、緑豊かな実店舗の雰囲気を再現しています。
ケーキをシックな彩色で、葉をモノトーンで描いたところに、Kao氏のセンスと繊細な気配りを感じます。葉脈にはニスが塗られ、手ざわりでも特別な印象が生まれます。
Designer | Jieni Kao
Photographer | mouth.i
人気の手作りベーカリーショップのスイーツ用パッケージデザイン

パンは台湾でもよく食べられています。フランスパンやクロワッサンなどから、クリームパンやカレーパンまで、日本と同じくさまざまな種類のパンが売られています。2010年、パンのワールドカップでは台湾のパン職人がチャンピオンになったこともあります。
夫婦が営む「Willie & Charlie Bakery」では、伝統的なフランスパンやデンマークパン、ヨーロッパ風のペストリー、創作スイーツを手作りしています。「Willie(ウィリー)」と「Charlie(チャーリー)」は、息子ふたりの名前です。

同店のスイーツのパッケージをデザインするにあたり、Kao氏は、3種類のパンのイラストを描きました。伝統的なフランスパンやサワードウのパン、ヨーロッパのソフトパンです。
これは、Willie & Charlie Bakeryが手作りパンのベーカリーとしてスタートしたこと、パン作りに対するこだわりがスイーツ作りにも受け継がれていることを示す意図があります。
パッケージはPantoneの特色で印刷されており、パンのイラストにはエンボス加工がほどこされています。
Designer | Jieni Kao
Photographer | mouth.i
食品パッケージのイラストは「食べ物の質感」を伝える描き方が品質感を左右する
食品パッケージに使うイラストレーションで最も重要なのは、「食べ物がおいしそうに見えるかどうか」です。写真ならシズル感(湯気や光沢)をカメラで捉えますが、イラストではペンや筆のタッチで「質感」を表現する必要があります。
ツヤのある果物の表面を描くときの光の入れ方、焼き色のグラデーション、液体の透明感。こうした「食材固有の質感」をイラストで的確に再現できるイラストレーターは、食品パッケージの分野で非常に重宝されます。「かわいいイラストが描ける」だけでなく「おいしそうに描ける」かどうかが、食品パッケージ用のイラストレーター選びの最重要基準です。
パッケージ製作印刷会社の自社ブランド製品のデザイン


パッケージの構造設計や印刷をおこなっている企業が、自社製品としてホットドリンク用ペーパーカップを製造販売することになり、Kao氏に表面デザインを依頼しました。
レストラン向けに提供される製品なので、汎用性を考慮したデザインになっています。「Have a nice day」バージョンと「台湾」バージョンの2種類があります。
「Have a nice day」バージョンは、テキストにカップとケーキのイラストを組み合わせたもので、色はグレー。
「台湾」バージョンは、漢字とアルファベットの台湾をあしらったピンクベージュのカップです。
パッケージデザインというよりは、多様な店舗で使ってもらえるような「ジェネリックな」プロダクトデザイン的要素を含んだプロジェクトには、特定のブランドのためにデザインするときとは異なるポイントがありそうです。
Designer | Jieni Kao
Photographer | mouth.i
お菓子のイラストを使ったミニマルなパッケージ


ネコの形をしたラングドシャとブタの顔のバターサンドクッキー。いずれも商品ではなく、Kao氏が焼いたお菓子です。
手作りお菓子そのものが、イラストレーターならではかわいらしいキャラクターとなっています。それをストレートに描写したイラストを白い箱に描いたミニマルなパッケージデザインです。手作りお菓子の魅力が引き立ちます。
旅行準備の仕方をわかりやすく解説するサイトのイラスト


台北市に本社を置くKKdayは、世界各地のオプショナルツアーやアクティビティの予約サービスを提供しているベンチャー企業です。ウェブサイトとアプリでサービスを利用できます。日本語サービスも2015年にスタートしました。
KKdayは、旅行初心者のために「旅行研究所」というコンテンツを提供しています。航空券や宿泊の手配、日程、荷づくりなど、計画を立てるのに役立つ情報をまとめたページです。
Kao氏のやわらかいイラストは、初心者の不安を減らし、情報をわかりやすく伝えるのにぴったりです。

KKdayのブランドカラーであるミントブルーをベースとして、イエローやピンクを組み合わせたファンシーなカラーパレットは、旅行に興味を持ち始めた若い女性層をターゲットしたことがうかがわれます。
グラフやハート、カメラをモチーフにしたキャラクターもふわふわとしたタッチでかわいらしいですね。
design : Jieni Kao (Edinburgh, United Kingdom)
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