
クリエイティブスタジオAlexandra Necula Studioは、デザイナーAlexandra Necula氏がルーマニアのクルジュ・ナポカに創設しました。
ブランディング、パッケージデザイン、ウェブデザインを中心に活動しています。サステナビリティと環境への意識の強い企業をクライアントに多く持ち、パーソナルで感情に訴えるデザインを提供。Necula氏のやさしく上品なブランディングの実例を見てみましょう。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。(Thank you, Alexandra Necula!)
Necula氏のブランディングに見る「ミニマル」と「オーガニック」は相性が良い理由
Necula氏のデザインが「ミニマルでオーガニック」という一見矛盾する要素を自然に両立させているのは、「オーガニック=自然のままの状態=余計なものが加わっていない」という概念と、「ミニマル=余計なものを取り除いた状態」という概念が、実は同じ方向を向いているからです。
「オーガニック食品は添加物を使わない」ことと「ミニマルデザインは装飾を使わない」ことは、「引き算の思想」として一致しています。この一致があるため、オーガニック製品のパッケージにミニマルデザインを適用すると、デザインの方向性と製品の哲学が自然に調和します。デザインのスタイル選択が製品の価値観と矛盾しないかどうかは、パッケージ制作の初期段階で確認すべき重要なポイントです。
ラベンダー由来のスキンケア製品のリブランド&パッケージデザイン

ラベンダーとイモーラルを使ったオーガニックなスキンケア製品のリブランディングとパッケージデザインをNecula氏は手がけています。ブランド名は、ラベンダーという意味のフランス語「La Lavande」です。ボディローション、スキンクリーム、エッセンシャルオイル、固形石鹸、バスソルト、ホームフレグランスなどラインナップは充実しています。農場で栽培された100%オーガニックなラベンダーを使用しているのがセールスポイントです。

「もっと職人技を感じる、フランス風で魅力的なブランドにリニューアルしたい」というのがクライアントからの要望でした。Necula氏は、クライアントの美しい農場にインスピレーションを得てデザインしたといいます。パッケージデザインのベースとなっているパープルのグラデーションは、花が咲きほこるラベンダー畑の景色がモチーフとなっていることは間違いないでしょう。

シンプルなラベンダーのイラストと、最少限のライン、セリフ書体を組み合わせたロゴは、モダンな印象です。パッケージではパープル地に箔押しされていて高級感もあります。テキストは1種類の書体だけで組まれているなど、いずれの要素もシンプルなのですが、全体としては適度に抑制された上品な装飾性を感じます。
持続可能性をミッションに掲げるサプリメントのブランディング

オメガ3脂肪酸という栄養素は健康維持のためにプラスであるといわれています。体によい成分としてEPAまたはDHAの名前を見聞きしたことがあるかもしれませんね。これらの成分もオメガ3脂肪酸で、魚や貝類からとれます。
摂取不足をおぎなうためにオメガ3脂肪酸の各種サプリメントが発売されています。しかし、ベジタリアンは魚由来のサプリメントを口にすることができません。そういった人たちのためには海藻や植物由来のサプリメントもあります。「ビーガンオメガ3」などの名称で売られています。

創業したばかりのサプリメント・ブランドCalgeeも、創業者自身がベジタリアンです。健康上の理由で、オメガ3脂肪酸をとることを医者からすすめられ、魚由来でなく環境にもインパクトをあたえないサプリメントを自分たちで作ることを決めたのです。Calgeeは「世界でもっともサステナブルで高品質な健康補助食品をつくる」ことをミッションに掲げています。
パッケージデザインからウェブサイトまでトータルなブランディングを依頼されたNecula氏が設定したカラーパレットは、ブルーとグリーンで構成されています。グリーン、スカイブルー、ダークブルーは、大地、空、海をイメージしたものでしょうか。

箱には、パターンとイラストとの中間のようなイラストがあしらわれていて、植物、海藻、海を思わせます。自然の風景のようでもあり、地球のようでもあります。

シンボルマークは海藻でしょうか。サンゴや木のようにも見えます。セリフ系のNew Script書体で組んだワードロゴの「g」の耳も、シンボルマークと同じデザインに差し替えられています。このワードロゴは、控えめなデザイン処理と小文字だけなので、自然環境やユーザーの健康に対して、Calgeeブランドのやさしい姿勢を伝えています。
サプリメントのパッケージで「信頼性」と「親しみやすさ」を両立する配色の設計
Necula氏のサプリメントパッケージでは、白と淡いグリーンを基調とした配色が採用されています。白は「清潔」「科学的」「信頼性」を連想させ、淡いグリーンは「自然」「穏やか」「体に良い」を連想させます。この2色の組み合わせが「科学的な信頼性+自然由来の親しみやすさ」という二重のメッセージを同時に伝えています。
サプリメントのパッケージが「科学的すぎる」と消費者は近寄りがたく感じ、「ナチュラルすぎる」と効果に不安を感じる。この2つの印象のバランスを配色で取る設計が、健康食品パッケージの実務的な課題です。
スローファッション水着ブランドのパッケージデザイン作成例

スイムウェアのブランドIrvettaのロゴとパッケージのデザインをNecula氏は手がけました。Irvettaは、環境への負荷の少ない素材選びと製造プロセスにこだわるスローファッションの道を歩んでいます。同ブランドが提供しているのは、環境や安全性に関するさまざまな基準をクリアしたイタリア由来のシルク素材を使って、高品質で上品な女性用水着です。

ワードロゴには、ヒューマニスト系サンセリフ書体を使っています。字間をあまり詰め過ぎずに、すべて大文字で組まれているので、エレガントで正統的な印象です。
シンボルマークは、ブランド名の頭文字「I」がモチーフです。Necula氏は、Irvettaの水着のシンメトリーなデザインからこの格子パターンを着想したということです。絹の糸を織っている様子をシンボライズしているようにも見えます。繊細で気品のあるマークは、ワードロゴにもマッチしています。

このシンボルマークのモチーフは、ワンピース水着のサイドスリットのデザインとして採用されました。
ミニマルでオーガニックな自家焙煎コーヒー豆のパッケージデザイン作成例

ルーマニアの自家焙煎コーヒーショップNarcoffeeのパッケージリニューアルをNecula氏は手がけました。Narcoffeeは、アフリカ、中南米などの小規模農園と直接取引をおこなって、高品質なコーヒー豆を自家焙煎しているチェーンです。コーヒー豆から焙煎するまでの工程をトータルにコントロールするとともに、素性などについての情報をオープンにしています。
リニューアルにあたって、Necula氏はパッケージデザインとイラストを担当しています。Narcoffeeが扱っているコーヒー豆の産地は、グアテマラ、エチオピア、ニカラグア、ルワンダなどさまざまです。ひとつのイラストの色を変えることで、各産地に対応しています

パッケージにはイラストと同じだけの面積を占めるデータ欄があります。動植物や鉱物などの標本ラベル、あるいは薬品のラベルのように、どこかサイエンティフィックな雰囲気です。産地のほかに、豆の品種、農場の高度、焙煎日などの情報が整然と記されています。

イラストのオリジナルは1パターンで、フォントもサンセリフ系のまじめな印象。レイアウトもかっちりしています。一方、イラストはシンプルですが、あたたかみのあるオーガニックなテイストです。ミニマルなフォーマットで、製品ラインナップにうまく対応したパッケージデザインとなっています。
単なるミニマリズムを超えた自身のロゴマーク

最後に、Alexandra Necula氏自身のブランドデザインを紹介しましょう。名前の頭文字を組み合わせたモノグラムです。シンプルで几帳面な印象を受けます。力強さだけでなく、ラインの太さの微妙な調整に繊細さも感じます。ブランドの書体として選ばれているFuturaとのマッチングもぴったりです。
カラーパレットは、黒、グレイッシュなライトブルー、金箔。ミニマルなシンボルマークに対する絶妙なチョイスです。
このロゴには、これまで見てきたNecula氏のスタイルが凝縮されているように思います。ミニマルデザインを基本にしながら、深みと広がりを感じさせるクリエイティビティです。そして、ほのかなやさしさとあたたかみを感じます。
design : Alexandra Necula (Cluj-Napoca, Romania)
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