がんばった自分へのごほうびは、お気に入りのスイーツ、という人は多いと思います。チョコレートやアイスで、ほっこりとくつろいでいるうちに、また頑張ろうという気にもなってきます。
スイスのジュネーブを拠点に活動している、アートディレクターでイラストレーターのAlexandra Motovilina氏は、そういった日常にかかせないアイテムを、オーガニックなタッチでいろどります。
Motovilina氏はフランスでアートディレクションを学びました。彼女がデザインするパッケージには、自身の手による水彩画が添えられることもあり、ほかにない柔らかい上品さやかわいらしさを生み出しています。 ※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Alexandra ! )
セレブ御用達レストランのアイスクリームを飾るかわいいイラスト
マリブファーム(Malibu Farm)は、米国ロサンゼルスで生まれた、セレブ御用達の人気レストランです。マリブ以外にニューポート、ハワイのラナイ島、ニューヨークなどの景勝地に店を構えています。2020年には神奈川県の厨子マリーナにマリブホテルとともに、初の国外店舗を開業しました。
「フレッシュ、オーガニック、ローカル」をコンセプトにしたマリブファームは、オーナーシェフのヘレン・ヘンダーソン(Helene Henderson)氏が創業。地元の食材とスタイルを大切にした体にやさしいメニューを提供しています。
ヘンダーソン氏から依頼されて、Motovilina氏はアイスクリームのカップのためにイラストを提供しました。新鮮なミルクと卵を使ったアイスであることをアピールする、かわいい動物を描いて欲しいというヘンダーソン氏の要望に対して、Motovilina氏は愛らしいニワトリとウシのイラストでこたえました。
木版画のようなタッチのイラストは、かすれ処理をほどこしたマリブファームのロゴにマッチしています。カップはモノクロで印刷されたシンプルなデザインなので、入れられたアイスクリームの自然な色合いを邪魔せず、おいしそうなビジュアルを際立たせます。
カップのために生まれたウシやニワトリ、ヒヨコは、マリブファームのオリジナルグッズにも登場しています。ブタの形をしたシートまな板や、ショットグラス、タオルなどでかわいい姿を見せています。
スパイシーなチョコのエスニックなパッケージデザイン
オーストラリアのメルボルンで手作りチョコレートを製造販売しているダーク&ハンサム・ショコラティエ(Dark & Handsome Chocolatier)のパッケージをMotovilina氏は手がけました。
ダーク&ハンサム・ショコラティエは、インドのスパイスにインスパイアされた板チョコを作っています。原料のカカオ豆から自分たちで厳選し、最終的な製品まで一貫して作る、いわゆる「ビーン・トゥ・バー」のチョコです。大量生産には向きませんが、自分たちのアイデアや思いを込めた製法で、ほかにないオリジナルなチョコレートを作れます。
クローブとオレンジピールを使ったチョコは、情事(love affair)をもじって「クローブ・アフェア(Clove Affair)」という名前です。ほかにも、「ボヘミアン・ラズベリー(Bohemian Raspberry)」「クレイジー・リッチ・レーズン(Crazy Rich Raisins)」のように、どこかできいた曲名や映画タイトルのようなネーミングには、遊び心を感じます。
Motovilina氏のパッケージデザインは、サンセリフ書体で整然とレイアウトされたテキスト情報と、幾何学的なパターンを組み合わせたミニマルなものです。とはいえ、直線とドットで構成されたパターンは、要素は最小限であるにもかかわらず、オーガニックでエスニックな雰囲気をとても効果的に演出しています。アーシーなカラーパレットとの相乗効果で、手作り感がたくみに表現されている、シックで上品なパッケージです。
2020年ベストUKカフェのパッケージデザイン
パキスタンにルーツを持つザーラ・ハーン(Zahra Khan)氏が最初のカフォをロンドンにオープンしたのは、母親となったときと同時でした。そして、2番目の子どもが生まれる数週間前にオープンしたふたつめのカフェが、「ダイス(Dyce)」です。
ベストUKカフェ2020に輝いたダイスは、どこかのテーマパークからワープしてきたかのようなインテリアが印象的です。ハーン氏の子供のころの夢は、パステル調の部屋で花に囲まれながら、色とりどりの飲み物ときれいに盛り付けられたブランチを楽しむことでした。これを実現させたのがデザートカフェ「ダイス」です。
ダイスでは、タピオカティーやジェラート、ドーナツ、ブラウニー、クッキーなどが、「映える」盛りつけで提供されます。ジェラートには、ヴィーガンやグルテンフリーのオプションもあります。
子どものころの夢を具現化したというダイスのインテリアのコンセプトは、「溶けたアイスクリームに包まれているような感じ」です。ゆるやかに曲線を描くソファーや床が、溶けたアイスを再現し、天井や壁を飾る大小さまざまな凸面鏡は、タピオカをイメージしています。
Motovilina氏が手がけた、スイーツを入れるカップやボックスのグラフィックデザインは、店内のインテリアを凝縮したような楽しさです。そのうえで、タピオカティーやパフェ、サンデーを主役として立てる、さりげない仕上がりになっています。
ケーキから化粧品までを飾る水彩画
パッケージデザインやアートディレクションとは別に、Motovilina氏の水彩イラストもひとびとの目を楽しませています。
化粧品ブランド、ロレアルのスイス法人に招待されたランコムのイベントで、Motovilina氏はプロダクトの化粧ボックスにダイレクトに水彩画を手描きしました。お客さんにとってはスペシャルなギフトとなったことは間違いありません。
ジュネーブのカフェ「クリスティーズ・ベーカリー(Christie’s Bakery)」では、Motovilina氏のイラストが、折々のイベントに合わせたグリーティングカードとして提供されます。また、食べられるイラストとして、ケーキがキャンバス代わりになることも。
ほかにも、パリのペイストリーを紹介するガイドブックや、ジュネーブのシティガイド、リッツ・カールトン・ホテルのクリスマスカードなど、さまざまなシーンで、Motovilina氏のおしゃれでハート・ウォーミングな水彩画は、多くの人々をなごませています。
design : Alexandra Motovilina ( Switzerland )
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