中身がどんなものなのか良く分からないけれど、昔ながらの雰囲気が何だかおいしそう!台湾のスーパーやコンビニの缶詰コーナーをじっくり眺めてみると、そんな不思議でレトロな魅力を兼ね備えたパッケージたちがずらりと並びます。
一体、中にはどんな食材が詰まっているのでしょうか?気になるパッケージデザインの缶詰たちを集めてみました。
牛肉麵を家庭でもお手軽に。朱色ベタ+牛のイラストが目を惹く「德昌紅燒牛肉」
直感的に食欲をそそられる、ベースに敷かれた鮮やかな朱色。中心には牛のイラストがレイアウトされた、至極シンプルなデザイン。
それでも充分にレトロさを感じさせてくれるのは、ところどころを燃え上がる炎のような流線にした「紅燒牛肉」というタイポグラフィゆえ、かもしれません。
「特製」と書かれた左上の紺色がまた、全体のイメージを引き締めるためにひと役買っています。
紅燒とは、醤油や氷砂糖などを加えて食材を煮込む料理法のこと。
唐辛子や白胡椒なども入れてスパイシーに仕上げられることも多く、台湾の有名グルメのひとつであるスパイシーなビーフヌードル「紅燒牛肉麵」などによく見られます。
この「德昌紅燒牛肉」の缶詰では、スパイシーさはひかえめ。
それよりも一番に香ってくるのは、牛肉本来の旨みで、ゼリー状になったコラーゲン層の中には、3cm角はあろうかというほろほろ牛肉がゴロゴロと詰め込まれています。
缶詰の中身を鍋に開け、水を少し加えて煮立たせば、スープがあっという間に出来上がり。
茹で上げたお好みの麺にスープをたっぷりかければ、家庭でも手軽に紅燒牛肉麵を楽しめる優れものです。
手作り感&不揃い感のあるタイポグラフィがかわいい。鯖の缶詰「蕃茄汁鯖魚」
タイポグラフィという点では、こちらの「蕃茄汁鯖魚」も、なかなかにユニーク。
カクカクとして一画一画はしっかり太い。それでいて、手作りのような不揃い感があるゴシック体で構成された商品名は、どこか柔らかさやかわいさを感じさせる印象に仕上がっています。
ふんわりとした雰囲気のある切り身のイラストとも、しっくり。黄色い地色とトマトの鮮やかな赤色のコントラストも相まって、おいしそうな予感をもたらしてくれます。
トマトが傍らに添えられているのは、見かけ上の美しさを考えてのことだけではなく、缶詰の中身が鯖のトマト煮込みであるから。
蓋を開けてみると、ぶつ切りにした鯖の切り身が3個、トマトペーストの鮮やかな赤色の中でキレイに円を描くように納められています。
引き締まった鯖の身に、酸味際立つトマトペーストがしっかり。ごはんや麺の準備がなくとも、この缶詰1品だけでバクバク食べ進めてしまえそうなおいしさと食べ応えが魅力です。
ちなみに、缶詰の地色は黄色の他に、赤色のバージョンも。
しかし、製造元メーカーである同榮事業の公式サイトでも答えられているように「中身は完全に同じです」というところにまた、台湾らしいゆるさとミステリーを感じます。
大きなシズルの写真がダイレクトに食欲を掻き立てる。おかゆのおともに「大土豆麵筋」
オレンジの地色と合わせて、シズルの写真を大きく打ち出している「大土豆麵筋」は、ダイレクトに食欲へと訴えかけるデザインに。
黒々と筆文字で描かれた商品名はくっきりと浮き上がっていて、視認性をしっかり確保。
パッケージにて伝えるべき情報が、無駄なく確実に表現されているという点で、非常に安定感のあるデザインに仕上げられています。
「土豆」はピーナッツ、「麵筋」はグルテンを揚げた食品のこと。
台湾ではとても身近な食べもので、ホテルの朝食会場に並ぶおかゆの傍らに、あるいは台湾式バイキングのお店・自助餐のおかずの1品としても定番です。
こちらの缶詰では、蓋を開けてまず見えるのは、ぎっしりと敷き詰められた煮込みピーナッツ。その下を掘り起こしてみると、ひとくちサイズで食べやすい麵筋が、たっぷりと詰め込められています。
例えるならば、お麩やきつねうどんの揚げに似た食べ心地。湯葉のような弾力と歯切れの良さに促されるように噛んでいくと、甘辛くやさしい風味がいっぱいにじんわりと広がります。
シャクシャクとした茹でピーナッツの食感が、アクセント。おかゆとの相性が特に抜群で、おだやかな1食をいただきたい時にピッタリです。
色のコントラストが極大。とびっきりのレトロさがたまらない「大茂黑瓜」
缶詰コーナーの中でも、格別のコントラストの強さでひときわに目立つ「大茂黑瓜」の缶詰デザイン。茶色い竹の支柱に絡みつきながら、一帯を覆いつくさんばかりに豊かに実ったきゅうり畑のイラスト。
この背景だけでも充分にインパクトがありますが、さらに商品名の下には赤い地色をプラス。力強い印象の「黑瓜」の筆文字とも相まって、この上ない存在感を発揮しています。
「精選花瓜」「陳年釀造」などと書かれた、ほのかに波打つ青色の文字列がまた、どこか遊び心をも感じさせるレトロな印象を強調しています。
缶詰の中に詰め込まれているのは、漬け汁が芯までしっかり染み込んだ、きゅうりの漬物。ひとかけ口へと運んでみると、どこか海苔佃煮にも似た、塩気よりもまろやかな甘さが勝るような風味。
みずみずしくハリハリとした食感が非常に小気味よく、これ1品があるだけで、白ごはんがガンガン進んでしまいそうです。
ゆるっとした豚のイラストがかわいくてショッキング?そぼろソースの缶詰「嚕肉飯料」
豚のそぼろを醤油や八角などのスパイスと共に煮込んだそぼろソースは、台湾グルメには欠かせない1品。
白ごはんにかけると、台湾の有名グルメ・魯肉飯になる他、麺やゆで野菜、煮込み豆腐にもかけられるなど、数多くのグルメ店にて、その万能さを発揮しています。
そぼろソースは多数のメーカーから缶詰としても販売されていますが、ひときわ気になる存在だったこちらの「嚕肉飯料」を、思わず手に取ってしまいました。
肉類の商品パッケージとしては珍しく、ベースカラーには濃紺を採用。
何よりも目を惹かれるのが、ゆるっとしたフォルムの真っ白な豚のイラストと、「香得不得了(香しくてたまらない)」と書かれたコピーのコンビネーション。
大きくレイアウトされた、そぼろのシズルの上に配置されているのが残酷にも思えますが、この上なくゆるっとした雰囲気が何とも台湾らしく、愛らしいです。
ふたを開けた瞬間から濃厚に立ち上る、そぼろソースの香り。スパイスよりも醤油の風味が圧倒的に強く、後になるほど豚の脂分から来るまろやかさも感じられます。
あつあつの白ごはんに。茹でたての麺に。さっと湯通しした葉物野菜に。缶詰になっても、何にでも合わせられる万能さはしっかり健在です。
まとめ
今日は、台湾缶詰のパッケージデザインに注目してみました。
現地の家庭で便利に活躍してくれる、缶詰になった台湾グルメたち。持ち込み規制もあるため、おみやげとして日本へ持ち帰るのは難しい品もありますが、現地のスーパーやコンビニを訪れる機会があれば、食品パッケージの中でもひときわレトロさが光る缶詰のデザインを、ぜひチェックしてみては?
<プロフィール> Mae
2012年より台湾・台北在住。グラフィックデザイナーとしてお仕事をする傍ら、現地生活や旅行情報を綴るブログ『にじいろ台湾』の運営や、ライターとしても活動しています。日本と近くて、似ているようで、本当は色々違っている。そんな台湾での発見を、みなさんとシェアしていきたいです。
ブログ『にじいろ台湾』 → https://kazukimae.com/
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