ブラジルのクリチバ市で活動している João Marcos 氏は、ブランディングやアイデンティティデザインを中心にサービスを提供しているデザイナーです。
Marcos氏のポートフォリオには、柔軟な色使いで上品な仕上がりのプロジェクトを多く見ることができます。
クリチバ市は、ブラジル南部パラナ州の州都で、20世紀の中頃から先進的な「まちづくり」がおこなわれてきました。すぐれた都市計画と環境保全の取り組みが世界で注目されています。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。( Thank you, João Marcos! )
美白効果のある歯みがきペーストのビジュアルアイデンティティ
Marcos氏のデザインした歯みがきペーストのビジュアルアイデンティティは、清潔感と信頼性を感じさせます。
ロゴタイプは、モダンなジオメトリック系サンセリフ書体で組まれています。「M」の字形が美しいです。Marcos氏は、ロゴタイプを組むにあたり、いくつかの加工をほどこしています。「S」の大胆な処理はうまくいっているようです。「E」の先端も微妙な角度でカットされています。
直線でデザインされた半円形のシンボルマークは、笑顔の口元のように見えます。線の太さに変化を持たせることで、立体感あるいは奥行きのようなものが感じられます。
ミントグリーンとオリーブブラウンを採用したカラーパレットは、ハイグレードの製品であることを伝えるのに成功しているようです。
ミントグリーンのパッケージには、ロゴタイプとシンボルマークがシルバーで箔押しされて、特別なデザインがより活かされる効果となっています。
歯みがきペーストをはじめとするオーラルケア製品は、ヘルス・アンド・ビューティケア(HBC)市場の中でも、着実に成長しています。
コスメティック分野とヘルスケア分野が重なり合ったようなこのカテゴリーでは、このプロジェクトのような絶妙な調整がブランティングデザインに求められると思います。
このカテゴリーのプロジェクトにかかわる機会があるなら、Marcos氏のバランスのよいアプローチは参考になるのではないでしょうか。
2024年の色「ピーチ・ファズ」を採用したコスメ製品のブランディング
米国パントン(Pantone)社は、「カラー・オブ・ザ・イヤー2024」として「Pantone 13-1023 Peach Fuzz(ピーチ・ファズ)」を選びました。
パントンはピーチ・ファズについて次のようにコメントしています。
「あたたかい、くつろぎの色です。しかも、さわり心地もとてもよい」
この色を保湿クリームのアイデンティティカラーとして選んだMarcos氏は、その理由をこう述べています。
「この色合いは、桃の柔らかさと新鮮さを反映するだけでなく、心地よさと安らぎをもたらします。身体だけでなく心もいやしてくれる色です」
ピーチ・ファズのあたたかい色に、Marcos氏はライトブルーを組み合わせました。潤いを感じさせる色としては自然な選択です。この2色をなめらかなグラデーションで溶け合わせたところに、色に対するMarcos氏の特別なセンスを感じます。
ブランド名の「Vittae」は、人生を意味するラテン語「vitae」をもとにMarcos氏が考え出しました。
細めのセリフ書体を組んで作られたロゴタイプは、古典的な風格とエレガンスを兼ね備えた上品なデザインです。「a」「e」の流れるような曲線は、おそらく独自の加工でしょう。
製品名「Soft Peach」もセリフ書体で組まれていますが、これはロゴタイプと同じ書体のウェイトを変えたものではありません。ブランド名と共通のニュアンスを持ちながらも、モダンで力強いデザインの別の書体が選ばれました。ここからも、ブランディングにおけるMarcos氏のこまやかな配慮がわかります。
情報収集プロセスをシンボル化したテック企業のブランディング
Marcos氏のデザインの特徴のひとつは、線や矩形の個性的なあつかい方です。
情報収集のDX化に貢献するサービスを提供しているテックブランドのシンボルマークにもそれは表れています。
AIとOCR技術の組み合わせで情報を収集整理し、業務の簡素化と効率化をサポートするというサービスを、Marcos氏は直線を回転させて描いたようなデザインでシンボライズしています。
一見、シンプルなプロセスで作成したようにとれるシンボルマークですが、実際はまったく反対です。
直線を回転させながらコピーして、中央の円に重ねたパーツを作り、径と線の太さを変えたもうひとつパーツと組み合わせたように見えます。しかし、それほど単純ではありません。
ポートフォリオには、シンボルマークの構造がわかる画像が掲載されています。控えめながらも大きな効果を生む、微妙な「ずらし」や変形がほどこされていることがわかります。
円形は、顧客中心の完全なサービスとソリューションを表現するために採用されました。
長い四角形の線や円は石の質感を加える効果もあります。これによって、堅牢性・安全性とともに柔軟性・ダイナミズムを表現しています。
ふたつのニュアンスの異なるデザインは、45度のアングルでつけられています。これは顧客の成長とブランドの進化を表しています。
シンボルマークを整然と並べたTシャツもデザインされました。少しずつ回転角を変えたシンボルが集まって、1個のときと異なる新たな表情を見せているのがおもしろいです。
リボンをモチーフにした社会福祉団体のロゴデザイン
社会的な問題をかかえているひとびとの相談にのってアドバイスする福祉団体のブランディングでは、リボンをモチーフにデザインされました。
さまざまな社会問題についてリボンは、関心を高めたり、支援を求めたり、連帯を示したりするために広く使われています。
Marcos氏は、ブランド名の「l(エル)」をリボン状に加工して、このブランドが社会的問題に関係していることを示しました。
このエルの文字は、切り取って大きくあつかうことで、シンボルマークとしても機能します。
カラーバレットは「思いやりブルー」と名づけられた深めの青、「居心地の良いイエロー」と名づけられた黄色、淡いキャラメル、灰褐色で構成されています。
ブラジルのナショナルカラーといえば、緑と黄の組み合わせを思い浮かべることが多いと思いますが、ブルーもブラジルの国旗に使われています。オリンピックのブラジル代表団のユニフォームも緑・黄・青の組み合わせです。
青と黄の組み合わせも、ブラジルのひとびとにとっては、愛国心や団結感を思い起こさせるものだといわれています。Marcos氏のカラーパレットは、ブラジルの社会やひとびととのつながりを感じさせることを意図したものかもしれません。
ウェルビーイングをサポートするプラットフォームのブランディング
人工知能(AI)を利用して、ひとびとの潜在能力を最大限に発揮できるようサポートするプラットフォームのブランディングで、Marcos氏は「木」のイメージを象徴的にデザインしました。
「WeCaire」は、高度なAIを活用したアプローチで、個人個人に最適化されたアドバイスや、リソース、トレーニングを提供します。また、これにより、個人とさまざまな業界とをつなぐリンクとなっています。
木には成長のイメージがあります。そこにWeCaireのサービスによる個人の成長を重ねています。
また、アドバイス、リソース、トレーニングという情報の伝達を、「ニューロン」の形状で表現。ニューロンは、脳内で情報伝達をおこなう神経細胞です。
design : João Marcos (Curitiba, Brazil)
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