ブラジルというとグリーンやイエローをベースにした極彩色という印象があります。具体的なところをあげるとサッカーやリオのカーニバルのイメージが強いのではないでしょうか。確かにそういった側面はブラジルを代表するイメージに違いはありませんが、また別の角度から見たブラジルが存在することも確かです。
サンパウロの州立大でグラフィックデザインを学んでいる Giovani Flores 氏は、在学中にミュージックフェスティバルのポスターデザインと、飲料のパッケージデザインを課題の一つとして仕上げました。彼の描くブラジルの色には、南国らしい鮮やかさがあります。しかしそれは、前述のブラジルのイメージのように派手派手しさが先に立っているのではなく、ぬくもりを感じるようなやさしい鮮やかさとモダニズムを感じさせます。サッカーやカーニバルが対外的なイメージとするならば、彼の描くデザインはブラジルが内包している「今」の空気感なのかもしれません。彼の2つの作品を見ながらブラジルの「今」を感じてみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Giovani ! )
サンパウロで開催されるミュージックフェスティバルのブランディング
サンパウロ市内で2日間に渡り開催されるミュージックフェスティバルを想定して制作されたポスターデザインです。強く鮮やかな色合いは、ブラジルの温暖な熱帯気候から着想を得、随所に登場するレンガのパターンは、サンパウロ市内でよく見られるレンガ造りの建物から影響を受けています。パイナップルやヤシの木、ブラジルの国鳥など、ブラジルをあらわすモチーフが散りばめられています。これほどまでにブラジルらしさ満載であるのにも関わらず、けばけばしい印象を感じないのは、濃く鮮やかな色使いでありながらも、落ち着いたグレイッシュなトーンを織り交ぜているからでしょう。
また、ユーモアの匂いを感じる独特のタッチで描かれるイラストが不思議な雰囲気を醸し出し、ただ単に陽気な南国ムードだけではないお洒落で文化的な香りを感じさせます。
ポスターデザインに留まらず、ブランディングの視点から、DMやカード類、ペーパーバックなども制作しています。どれも南国色をアーバンなトーンで表現した鮮やかながらもシックなデザインです。
出演アーティストを紹介するリーフレットも制作されました。色数を抑え、極力直線を使用しないレイアウトはやさしく大人びた印象を与えます。
POP&カラフルなミルクボトルのロゴ/パッケージデザイン
続いてご紹介するのは、ミルクボトルのパッケージデザインです。牛乳瓶といえば透明なものという固定概念を多くの方がお持ちだと思います。Giovani氏がデザインしたのは、その固定概念を覆すとびきりカラフルでPOPなボトル。一見、中身が何なのか想定がつかないようなデザインに見えますが、商品ロゴとそれを丸く囲むラベル部分が「牛乳」であることを示唆しています。
ロゴデザインは、手書き風フォントをオリジナル制作し作られました。ミルクの持つ、やわらかではつらつとしたイメージが表現されています。Mは牛の乳を逆さにした構図、Oは牛乳を飲む口を表しているのではないでしょうか。
この可愛らしい牛乳は冷蔵庫に置いておくのがもったいないほど。こんなパッケージデザインなら、ふだん牛乳を購買しない層も思わず手に取ってしまうかもしれませんね。
ブラジルの若きデザイナーが描く、新たな熱帯の国のイメージはいかがでしたでしょうか。外から見るブラジルよりもずっと洗練されていて都会的なイメージを随所に感じることができました。このような若手が育ちつつある今、これからのブラジルのイメージは、対外的にもよりスタイリッシュなものへと変わっていくのかもしれません。昨年のオリンピックを継起に発展著しいブラジル、これからがますます楽しみですね。
design : Giovani Flores ( Brazil )
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