商品をより多くの人々へ知ってもらうために、通常の媒体による宣伝広告に加え、より「話題性」を追求したイベントプロモーションを図る場合があります。特に、新商品や季節商品の場合、瞬間的にでも話題に火をつけることで爆発的に商品の認知度が上がるケースがあります。Facebookやtwitter、instagramなどSNSがコミュニケーションツールの当たり前になった昨今、そういった参加型プロモーションの成功率は飛躍的に上昇しています。
そこで今回ご紹介したいのは、ブラジルでアートディレクションとグラフィックデザインを手掛けるMariana Perez 氏のアートワークです。ブラジルで開催されたイベントのアートディレクションやチラシ・ポスター等を制作しています。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you. Mariana! )
巨大ウォータースライダーで集客するアルコール飲料のイベントポスター
ビールに柑橘系のフレーバーを足したドイツ生まれのビアカクテル「ラドラー」。その爽やかな飲み口から、特に暑い夏場好まれる傾向にあります。そこで、ブラジルの暑い夏、市内に200mにも及ぶ巨大ウォータースライダーを設置し商品名を冠したイベントを開催しました。アクティビティを中心に、フードトラックやDJブース、バーベキューなどを配し、これらのシーンにおいてどのように商品が消費されるのかを調査し、さらなる販路拡大を狙い大々的にプロモーションが行われました。
この2日間限定のスペシャルイベントのためにポスターがデザインされました。緑豊かな公園の中に設置されたスライダー。そして、そこに勢いよく滑り出そうとする若者の姿。センターに配置されたイベント名の上に果実を絞る手の写真。画像全体の色味を抑え、やや粗く画像加工することで一枚の絵のように見せています。全体に商品カラーのグリーンを強調し、文字を斜めに配置することでデザインに躍動感も感じさせていますね。下に配置している商品写真だけを切り抜き画像でのせることにより、その存在を強調し浮き立たせています。
そして何よりも、スライダー頂上から見える景色をメインにすることで、スライダーのスケール感やイベントの雰囲気を見る人に伝える一枚になっています。動員数を伸ばすため「この夏の思い出づくりに行ってみたい」と思わせるような、ビジュアルづくりに徹したポスターデザインです。
このようなプロモーションの結果、会場には多数の人が訪れ、ラドラー片手に楽しむ姿が大勢見られたようです。
インスタグラムではこのようなスライドが制作され話題になったようです。ブランドカラーや書体などをうまく使い、商品とイベントの内容をイメージでリンクさせ、消費者に記憶させる。そういった役割はイベントプロモーションを告知するグラフィックデザインが担う大切な仕事の一つです。
消費するシチュエーションにこだわった、ビールのプロモーションイベントチラシ
世界的に有名なビールの銘柄「ハイネケン」。ハイネケンが夏季限定で行ったブラジルでの販売促進イベント「UP ON THE ROOF」の招待状をMariana氏は担当しています。
UP ON THE ROOFとは、サンパウロのダウンタウンにある歴史的価値の高い伝統あるビルの25階に期間限定のバーを開店し、期間中に多数のイベントを開催するという、ハイネケンを冠スポンサーとしたプロモーションイベントです。有名ビルディングの最上階というプレミアムな立地で、眼下の町並みを眺めながらビールを飲むというリッチな体験イベントは多くの反響を呼び、各SNSでも話題になったそうです。
イベントの招待状といえばハガキによるダイレクトメールが主流ですが、このイベントの招待状は封書で制作されました。クラフト紙にハイネケンのブランドカラーのグリーンの帯で封がされ、今回のイベントを象徴するワード「UP」が大きくプリントされています。このちょっとした特別感が、instagramにアップしたくなるツボを心得ていますよね。
封を開けると、四つ折りのチラシが入っています。
チラシ開くと、バーから見下ろした景色の上に「サンパウロの新たなホットスポットで打ち上げパーティーを」といった意味合いのコピーが書かれています。
そして全面を開くと、ビルディングを下から見上げた写真に「UP ON THE ROOF」のコピー。解放感を感じさせる絵と堂々としたタイポグラフィがイベントの雰囲気を見事に表現しているチラシデザインです。
ロゴと被写体が一体化した躍動感あふれるポスターデザイン
有名アスリートの指導による、バスケットボールトレーニングプログラムのポスターデザインです。
プログラム名「JOGA」のロゴと選手の一体感が非常に印象的です。Futura系の幾何学ベースのフォントで作られたロゴマークは、そのすっきりとしたフォルムと鋭さからアグレッシブでスタイリッシュなイメージをもたせます。
また、正円で描かれる「O」のかたちをバスケットボールのシルエットと重ね、ドリブルを思わす動きを見せるGIFも制作されています。イメージが広がるユニークな仕掛けですね。
同じポーズのカラーバリエーションや、他のポーズでもポスターが制作されています。動きがカギとなるスポーツ系プログラムのプロモーション。静止画にも関わらず、ボールを持つ緊張感や、永遠とも思える一瞬の感覚を捉えたこのポスターシリーズは、スポーツが持つ魅力をストレートに伝える好事例ではないでしょうか。
映画館で行われる風変りなマーケティングイベントのブランディング例
1年に一度、映画館で開かれる通信関連事業向けのコンテンツマーケティングイベントのブランディング事例です。さまざまなスペシャリストが映像で登場し、市場の今について紹介していくという内容のイベントのようです。映画の試写会のような雰囲気で行われるこのイベントについて、いくつかのパンフレットやカード、ノベルティグッズなどが制作されました。
映画館を会場としているカジュアルさと、取り扱う内容のシリアスさが混じり合い、これらのデザインにもその両者が潜む独特な雰囲気が出来上がっています。黄色と黒というメリハリの効いた組み合わせは、この不思議な取り合わせに実に良くマッチしています。
同様のコンセプトでwebサイトも立ち上げられました。ポップコーンの種から弾け、別のものに変容する様子はおそらく業界の抱える問題や課題、または展望に通じる何かをあらわしているのではないでしょうか。
さまざまなイベントプロモーションの例を見てきましたが、どのイベントにもそれらを色付ける「デザイン」の力は大きいものであると感じました。コンセプトに沿ったビジュアル・アイデンティティが設計され、それに則るかたちでイベントの現場が装飾され、それを告知するポスターやチラシデザイン、webやSNS等が制作されていきます。
イベントは期間が限られているからこそ大きなインパクトが必要であり、動員に結びつける結果を出すデザインが求められます。シビアな世界ではありますが、良い結果を残せたときの達成感は計り知れないほど大きいはず。紹介したブラジルの事例で、大きな話題をさらい結果を残したMariana氏の仕事は、こうしたイベントプロモーションにおけるデザインワークの良いお手本となることでしょう。
design : Mariana Pérez ( Brazil )
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