洋食や和食、中華など、料理の世界では、その料理の種類に特化した料理人がいますが、グラフィックデザイナーは得手不得手があったとしても、基本的に様々なリクエストにも応えなくてはならない器用さが求められます。
今回紹介するロシアのグラフィックデザイナー Kirill Peskov 氏は、クライアントの多種多様なリクエストに器用に、そして丁寧に応えることができるロゴクリエイターの一人です。 さまざまなタッチを書き分け、ブランドのイメージを表現したロゴデザインの数々を見ていきましょう。 ※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。( Thank you, Kirill! )
写実的に羊を擬人化して描いた、羊牧場のロゴデザイン
愛らしい瞳でこちらを見つめる羊。耳をだらりと下げ、草を噛んだまま前脚で柵につかまっているようなポーズをとる羊は、動物的というよりは人間に近い佇まいです。
このロゴマークは、ロシアにある羊のミルクを生産する牧場のもの。まるで人間のように悠然と構える羊から伝わるイメージは、「おいしいミルクでも飲んでリラックスしようよ」というメッセージ。
牧場のおだやかな空気と、ユニークで柔軟な姿勢を伝える面白いロゴデザインです。羊は丁寧に手書きで描かれ、下に入ったロゴタイプは、優雅なセリフ体。文字にもスタンプで押したようなざらついた加工を施すことで、手書き感を醸し出しています。
ネオンサインのように食べ物をくっきり描いた、家庭料理を販売する店のロゴデザイン
黒い背景にくっきり浮かぶ、料理や素材、カトラリーなどのイラスト。どれも均一な太さのラインでシンプルに描かれ、このままネオンサインになってもおかしくないようなデザインです。
イラストをわかりやすく見せることで、このショップがどのような種類のメニューを置いているのか、ある程度想像することができます。また、料理をシンプルにPOPに描くことで、親しみを感じ、気軽に来店できる雰囲気づくりにも一役買っているようです。
カジュアルさと軽快さを演出する、軽食の宅配サービスのロゴデザイン
食欲をそそるオレンジを背景に、POPでリズミカルな文字で書かれた「Sweet BRO」。 軽食をデリバリーするサービスのロゴデザインです。
軽やかでキュートなイメージを与える書体が、軽食の手軽さをイメージ付け、さらに、「BRO」の「R」の足の部分と「O」を使い、軽食を届けるバイクや車のタイヤを描いています。全体に躍動感を感じさせ、迅速なデリバリーを期待させるデザインです。
ビジネスを可視化した動くロゴデザイン
「Pallium」は、ブロックチェーンという金融サービスに用いられるデータ管理技術をベースにした「AI」に関わる事業を展開しています。こうした最先端の事業は、説明が難しく、イメージとして形にするのはカンタンではありません。少しでも伝わりやすく、ブランドのイメージを可視化するために、Kirill Peskov氏は、モーションロゴを使って「Pallium」のロゴをデザインしました。
何もない真っ白な画面から、点が生まれ、面になり、奥行きを持った立体へ。そして、立体から一側面の面が伸び、ブランドの頭文字「P」になります。一般の人にはなじみが薄い「ブロックチェーン」。仮想通貨などの管理に使われている技術ですが、これをわかりやすくイメージできるように、立体的なボックスを使い「P」が描かれているのではないのでしょうか。また、無から有を生むモーショングラフィックは、まさにネットビジネスの象徴に相応しいストーリーだといえます。
グリーンから紫へと移り変わる、知的な印象を与える美しいグラデーションと、対照的にブラックで描かれるロゴタイプ。スタンダードな太めのサンセリフ体を使い、ビジネスの堅調さを伝えています。
シンプルなモーショングラフィックをシンボルにした美容室のロゴデザイン
美容室LOOK BOOKのシンボルマークは、左下に切れ目がある大きな輪。ぐるりと輪を描く様子がモーショングラフィックで表現され、シンプルな分だけ非常に印象深いロゴマークです。
ロゴタイプは、癖の少ないやや丸みがかったサンセリフ体で書かれ、正円に近い形で「O」が書かれています。LOOK BOOKのシンボルマークである動く輪は、店名ロゴに四か所出てくる、「O」の形と、手で「OK」のサインを意味する、指で作った「円」の形なのかもしれませんね。
「Q」の字で時計を表した、味のある不動産会社のロゴデザイン
「Quick House」は、ロシアにある不動産会社。迅速に物件を提供するという意味を込めてか、屋号に「Quick」という言葉が使われています。「Quick」といえば、動画再生でよく知られるマルチメディア技術「QuickTime」。こちらのシンボルマークにも時計をイメージした「Q」の字が使われていますが、「Quick House」の場合は、より格式高く、上品に仕上げられています。
黒を背景に、銅色のロゴ。クラシカルなセリフ体をロゴタイプに使い、シンボルマークのベースにした「Q」の形もこの書体に由来します。同じように「Q」の文字を時計に見立てても、まったく異なるイメージが出来上がっています。不動産という価値の高い商品を扱うビジネスは、ある程度、品格を感じる重めのイメージや、実直さが伝わる固さを持つイメージが好まれます。
まとめ
どのロゴもタッチや印象がまったく違い、同じクリエイターが手掛けたデザインとは思えないロゴ作例集だったように思います。
これだけの違いがあるロゴをデザインするには、小手先の器用さだけではなく、クライアントの意図をくみ取り、ブランドのイメージに則したビジュアルを提案する、理解力と表現力が必要とされます。ロゴマークはブランドのイメージを左右する、重要なメッセージ。ロゴをデザインする時は、彼のように、ブランドの意志をビジュアルで十分に表現できる、奥の深いデザインを心掛けたいですね。
design : Kirill Peskov ( Russia )
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