ロゴをデザインする時、まず考えなくてはならないのが、デザインするブランドをいかに端的に印象的に見せるかということ。そして、見る人に好意的なイメージを残せるかどうかという点。8年の間、デザインを独学で学んだというバングラディシュの グラフィックデザイナー Zahidul Islam 氏。イラストレーターとしても活躍する彼が作るロゴデザインは、どこかポジティブなイメージを抱かせる、カラフルでPOPなデザインが多いのが特徴です。
見やすく、わかりやすく、印象に残る。この3つの条件をクリアするには、どのような方法があるのか、Zahidul Islam氏のデザインを見ながら考えていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Zahidul! )
カラフルな色使いで楽しさを共有するロゴデザイン
「PALACE PAINTERS」―― 街のペンキ屋さんか、屋外看板を扱う企業に向けて作られたロゴデザインではないでしょうか。
ペンキを塗る刷毛に見立てた外形の中に、ブランド名と街並みとをブラシの部分を重ねたイラストが描かれています。ロゴタイプは、ブラシの色がついていない部分、街並みは塗料がついた部分に見えるように工夫されています。街並みは一筆書きのように連なって描かれ、建物それぞれに違った色が付けられており、ブランドが手掛ける事業のバラエティの豊かさをあらわしているようにも見えます。何よりも、明るくPOPな色合いでビル群が塗られているところに、都会の華やかさを感じ、「PALACE」という名にふさわしい賑やかさが表現されています。
「LITSTIX」―― 業態は定かではありませんが、爽やかなカラーリングと動きのある書体がフレッシュな雰囲気を感じさせるロゴデザインです。
ジューススタンドやアイスクリームスタンドなどによく似合いそうなデザインです。ブランド名の最後の文字「x」がぐるりと囲む円と、ドロップ型にデザインされた「i」のドット、さらに円から飛び出すように散りばめられた幾何学模様が、まるで炭酸のように弾けるイメージを形作っています。
「GOURMAND」―― 食品サービス系のブランドのために考えられたロゴデザインです。
頭文字「G」をモチーフにシンボルデザインが考えられています。「G」を料理を運ぶワゴンのように見立て、文字のトップの部分をクロッシュと呼ばれる、料理を保温するためのカバーをモチーフにデザインされています。金色に輝くクロッシュの周りに小さな模様が散りばめられ、フタの中に素晴らしいご馳走が隠れているかのような演出がされています。
ロゴタイプには、太さに強弱があるスタイリッシュなフォントが使われ、ブランド名の後ろに配置された8の字模様が、料理から立ち上る香りや湯気をあらわしています。全体に黒をベースに作られたロゴの中で、カラフルに描かれた飾り部分が際立ち、その印象を強く残します。
「BIRD NEST」―― 「WE ARE THE FUTURE」とタグラインに書かれた鳥の巣をモチーフに作られたロゴマーク。業態に関わらず、将来性が未知数の発展を感じさせるデザインです。巣の中にいる、色がそれぞれ違う3羽の小鳥。ロゴを使用するブランドのコンセプトや、スタッフを体現するモチーフとして使うことができそうです。
イラストを使い伝わりやすさを重視したロゴデザイン
「INTENSIVE CUTS」―― 理髪店用に考えられたロゴマークです。店名の「V」の部分にハサミを使い、パッと見ただけで理髪店であることが分かるロゴデザインです。
文字の中にイラストを加えるロゴのデザインは数々ありますが、このロゴはその中でも、とても美しくバランスが取られています。ハサミをロゴのセンターに据え、創業年と下側に弧を描くようにして配置された「Barbershop」でロゴに一体感を出しています。個性的なフォントを使いながらも、全体をクラシックにまとめており、お洒落な男性を彷彿とさせるデザインに仕上げています。
「MANHATTAN GRIND」―― ニューヨークの中心、マンハッタンにあるエスプレッソバーを想定したロゴマークです。エスプレッソバーとは、最近流行のコーヒーショップで、立ち飲みバーのようなカウンターや簡易的なイスしかおかない店内で、エスプレッソをショットで頼み、短いコーヒーブレイクを楽しむというお店。時間のない現代人には好評で、都市部を中心に世界中で増えている傾向にあります。
そんなエスプレッソバーが、もっとも似合う街、マンハッタン。世界の中心とも言えるニューヨークのど真ん中、高層ビルが立ち並ぶ摩天楼の中でも、象徴的な建物が「エンパイア・ステート・ビルディング」。その個性的な外観はシルエットだけでもニューヨークを象徴するのに十分なほど。このロゴデザインでは、そんなエンパイア・ステート・ビルディングのトップの部分をラインで表し、シンプルで都会的なサンセリフ書体で店名を表記しています。スクリプト系で入れた「espresso bar」が、直線的なデザインに柔らかさを添え、全体のバランスをとっています。
「EXTRA VIRGIN OLIVE OIL」―― オリーブオイルの商品ロゴです。2つの「O」をオリーブの実に見立て、一目で商品内容を理解させるロゴデザインです。ロゴ全体の色もオリーブグリーンで描き、「L」から伸びるしなやかなラインの先には、オリーブの葉がついています。左上に配置した「EXTRA VIRGIN」の文字は「A」と「V」が連結するように組み合わされており、「i」につけたドロップのモチーフも手伝って、その部分だけでも小さなロゴマークのようにデザインされています。ただ単に、オリーブの実を象っただけではなく、ロゴ全体をバランスよく、細部に渡ってこだわってデザインされたロゴマークです。
「PATTON HOUSE」―― 赤と白で描かれたロゴタイプを間に挟み、放射状に展開するのは、ギターや音符、ト音記号などの音楽にまつわるモチーフ。音楽教室のロゴマークとして考案されたデザインです。一つ一つがイラストとして成立しながらも、集合し左右対称に配置することで、まるで一つの大きな紋章のように見えます。学院という形態に相応しいロゴデザインです。
「UTENSIL」―― 先ほどの音楽学院のロゴデザインと似た手法のシンボルマークです。ポットやカップ、カトラリーなどを一つに集め、円状にまとめたシンボルマークは、雑貨店のために考えられたロゴデザインです。ポットやカップなどの下部に不規則に描かれた波状の模様が、美しく白と黒のバランスをとっています。淡々と描かれたイラストのタッチと正反対に、エモーショナルに書かれた手描きのロゴタイプが、対照的に互いを引き立てあっています。
文字とイラストを融合させたロゴデザイン
「EXPERIENCE SERVICE」―― コンサルティング系の企業に最適なロゴマーク。頭文字である「e」と「s」を脳のようにデフォルメし、戦略的な企業であることをアピールしています。
「PORTFOLIO」―― デザインサービス系のロゴマークとして考えられたロゴマークです。ロゴタイプの中にある「L」と「I」を組み合わせ、上に一本横棒を足すことで、ポートフォリオのファイルのように作品の額縁を表現しています。文字の他の部分は黒で、イラスト部分は鮮やかなグリーンで表わすことで、爽やかなコントラストが生まれています。
「NEW PORT RACE」―― ヨットレースのために考えられたロゴマークです。ヨットのセイルを模した図形の中に、「N」と「R」をネガティブスペースで表現した、爽やかながら、どこかノスタルジックな雰囲気を感じさせるロゴ。ブルーからグリーンに変わるグラデーションと字間を広く設けたロゴタイプで、ゆっくりとした時間の流れと悠然と邁進するヨットの動きを表現しています。
まとめ
さまざまなパターンのロゴデザインがありましたが、どのデザインもわかりやすく、記憶しやすい工夫がされていました。そして、共通して言えるのは、どのロゴデザインも細かな部分まで手を抜かず、全体のバランスを意識して作られているということ。
ロゴを作る際、シンボルマークやロゴタイプ、どこか中心となる部分に作業が集中しやすい傾向がありますが、一つのデザインとして見た時に一番大切なのは全体のバランス。ディテールにこだわりながらも、トータルバランスも手抜きしない彼のデザインには学ぶべきところが多くあるのではないでしょうか。
design : Zahidul Islam ( Bangladesh )
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