ロゴマークはブランドのイメージを凝縮したビジュアルメッセージです。ロゴの形状でそのブランドをすぐに思い起こすことができるように、ブランドにより、色々な工夫が施されています。
たとえば、ブランド名の頭文字を覚えやすくビジュアル化したものや、ブランドの理念をシンボルマークにしてあらわしたものなど、ブランドにより表現の仕方はさまざまです。
チリでグラフィックデザインやブランディングを手掛ける、Cristián Angulo 氏は、ブランドのイメージを、ロゴマークの質感や色合い、フォルムなどの視覚的なイメージで表現することに長けたデザイナーの一人です。言葉では言い表すことの難しいブランドのイメージをビジュアルを通じて語る、彼のロゴデザインを見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Cristián! )
キスとショットで盛り上がる!?クラブパーティーのロゴデザイン
「KISS and SHOOT」―― SNSを使ってプロモーションされたクラブイベントのロゴデザインです。SNSサービスをはじめ、ワインやウォッカなどのアルコール飲料ブランドや飲食店などがスポンサーとなり開催されたクラブイベントです。
「ONE KISS ONE SHOT」とあるように、キスとショットをフューチャーしたイベントです。ショットとは、アルコール度数の強いお酒を一気飲みする行為で、このイベントでは、スポンサーとなっているワインやウォッカをボトルからダイレクトに口に注ぐワイルドな飲み方で振る舞われています。
そんな大胆かつセクシーなイベントのロゴとなったのが、極太のサンセリフ書体を連結させたインパクトのあるロゴタイプ。KISSの「SS」とSHOOTの「O」を、艶感を出したピンクで彩り、ディープな夜を想像させます。
ブラックとピンクをイメージカラーにイベントツールが数々デザインされ、エントリーフィーの案内やコンテストの案内などがデザインされています。
ブラックの中に映えるショッキングピンクは、闇の中に浮かぶネオンサインや会場の熱気溢れるエネルギーを感じさせます。ロゴやデザインツールを見るだけで、チリの夜を熱くさせるクラブイベントの熱気が伝わってくるようです。
海岸線に建つ別荘を販売する不動産会社のリ・ブランディング
「PLAYA LOBOS」―― チリ有数のサーフポイント、PUNTA DE LOBOSにある不動産会社「PLAYA LOBOS」のリ・ブランディングを手掛けたデザイン例です。
元のロゴデザインは、上記の画像にある通り、PUNTA DE LOBOS名物の2つの岩のイラストに、クラシックなセリフ書体のロゴタイプという、昔からあるタイプのデザイン。 この岩のモチーフとブランド名を再解釈し、新たなロゴデザインは考えられました。
グリッドを使用し、新たなシンボルマークが綿密にデザインされています。
ブランド名の「PLAYA LOBOS」の頭文字、「P」と「L」、「P」を反転させた形と「L」を組み合わせシンボルとしています。また、この2つのピースからなるシンボルマークは、以前のロゴマークに使われていた、海岸の名物である2つの岩も表わしているのではないでしょうか。
シンボルマークの下には、モダンに洗練された新たなロゴタイプが配置されています。2つの「A」を斜めに変形させ、「B」の縦線を消すことで、可読性はそのままに、これまでのイメージを一新するスタイリッシュなビジュアルを作り出しています。
また、上記の画像を見てわかる通り、PLAYA LOBOSの建物は、四角く横に長い個性的なフォルム。外側のフレームを強調した建物もあり、シンボルマークの絵柄と近いイメージであることがわかります。ロゴマークと建物のイメージが重なることで、ロゴを見ただけで、海岸線に建ち並ぶ別荘を思い起こすことができます。
PLAYA LOBOSには3つのサブブランドがあり、地形に応じた別荘地のロゴデザインも新たにデザインされています。
それぞれ、「崖の上」「森林」「山岳」とロケーションが分かれており、それぞれの地形に適したインフォグラフィックを作り、シンボルマークがデザインされています。直線のみで描かれるシンプルでミニマルな図柄は、ブランドを代表するロゴマークに使われたシンボルマークと共通の印象を持っています。
ロゴで使われたミニマルなインフォグラフィックはwebサイトにも継承され、さまざまなアイコンを同じようなテイストで仕上げています。
メインとなるロゴデザインを刷新し、ブランド全体のイメージを統一しビジュアル展開を行っていくリ・ブランディングは、ブランドの価値自体を再定義し、顧客に新たなブランドの顔を定着させていく作業です。
PLAYA LOBOSは、商品と符合する新たなイメージを手に入れ、かつてのクラシックなイメージから完全に脱却を図ったのです。
オーガニック食品のブランドロゴ制作例
「Amaranto」―― Amarantoは有機栽培で育ったナッツ類やドライフルーツなど、体に優しい食品を提供するフードブランド。
グリーンやイエロー、ピンク、ブラウンなどの食品を彷彿とさせるカラーを使い、ハートをモチーフにしたシンボルマークをデザインしています。ハートは異なるトーンで構成される同系色で成り立っており、ハートを分割するとナッツのようなカタチにも見えます。
原材料や育て方にこだわった「やさしい」商品であることをアピールするハート型と、「a」や「o」の丸みを強調したジオメトリック系サンセリフ書体。この二つの要素を軸にデザインすることで、伝えたいブランドのイメージを見事に具現化しています。
自らが率いるデザイン事務所のロゴデザイン
「Match」―― Cristián Angulo氏が所属するデザイン事務所のロゴデザインです。
太めのジオメトリック系サンセリフ書体をベースに、遊び心をふんだんに取り入れたセンスのいいロゴタイプです。一部分が欠けた「M」と「A」、まるであみだくじのように斜めに線を繋ぐ「H」の文字。随所に柔軟な発想が取り入れられ、一つではない物の見方を体現するかのようなロゴデザインです。
まとめ
ロゴデザインは、そのブランドのイメージを象徴するアイコン。そのアイコンを、どれだけセンス良く、伝えたいイメージに仕上げるかというところにデザイナーの力量が試されます。
Cristián Angulo氏は、シンプルにまとめたロゴデザインの中に、言葉で語ることのできないビジュアルメッセージを上手く表現していました。自分の感じたものを、デザインとしてアウトプットする作業は、一朝一夕ではできないもの。普段から、こうした作業を繰り返しデザインに生かしていきたいですね。
design : Cristián Angulo ( Chile )
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