デザイナーは学んだ環境や先輩・書籍などの様々な影響を受け、一つのデザインを作る場合でも人によってそのプロセスは大きく異なります。PC上で行う実作業より大切なのは、そのデザインを思いつくまでのアイデアプロセスです。スケッチブックやメモ帳はデザインのアイデアを広げる場所としてはとても有効です。
今回はロゴデザインについての有用なリソースを提供しているWEBサイト「Logo Geek」の運営者であり、ビジュアルアイデンティティのデザインに携わる Ian Paget 氏の記事「ロゴデザイナーたちのスケッチブックを覗いてみた」をご紹介したいと思います。
デザイナーのスケッチブックが「完成品以上に多くを語る」理由
この事例がデザイナーたちのスケッチブックを紹介しているのは、完成したロゴよりも「完成に至る思考の過程」にこそ学ぶべきものが多いからです。スケッチブックには、没になった案、途中で方向転換した痕跡、試行錯誤の記録が残されています。
完成品だけを見ると「最初からこの形を思いついたのだろう」と感じがちですが、スケッチブックを見ると「この形に辿り着くまでに何十もの案を経ている」ことがわかります。プロのデザイナーは「最初から正解を出す」のではなく「大量の選択肢を出して、その中から正解を選ぶ」。この事実は、制作に行き詰まったとき「もっとたくさん出す」ことが突破口になることを示唆しています。
原文 : “Inside a Logo Designers Sketchbook”
以下翻訳内容です。※翻訳・掲載は記事製作者の許諾を得ています。(Thank you, Ian ! )

デザイナーはそれぞれ自身のデザインプロセスを持っているものですが、ほとんどの場合、紙とペンが最初のスタート地点となっています。すぐにスケッチが出来て、且ついろいろなアイデアや考えを真似することなく、探ることが出来るからです。
一部のデザイナーは直接コンピューター上で仕事することを選ぶかもしれません。しかし個人的には、紙上の実験無しに洗練された完璧なデザインは出来ないと思っています。紙にスケッチすることで、デザインのわずかな変化などを探る事が出来ます。また、常に小さな失敗や落書きなどがよいアイデアのベースを構成してくれるのです。私もほとんどの時間をコンピューター上の作業に費やしますが、スケッチブックに描くことはとても良いブレイクになります。
紙にアイデアを描くことの長所は、何も心配することなく好きなように落書きができる事です。誰もあなたの作品を見たりはしません。時間を気にしないで落書きし放題になります。時としてアイデアがゴミになることもありますが、誰が気にするのでしょうか。自由に自身の心にあるクレイジーなアイデアを出して、完璧な素晴らしいアイデアが出るまで落書きしましょう。なにも完璧に描く必要はありませんし、完成された最後の作品を作成するようなアーティストになる必要もありません。紙の上に描いたすべては、今の段階では基本的なアイデアであり、あなた自身の参考となるものにすぎませんから。
デザイナーのスケッチブックを覗くことはほとんどないと思います。しかし、他のデザイナー達がロゴデザインを学ぶという目的であれば、私は自分のスケッチブックを数ページくらいお見せしたいと思います。また今回は、他にも世界中のデザイナーから寄付されたスケッチブックの写真の数々をお見せしたいと思います。
私のスケッチブックの中
私はスケッチブックの大ファンです。アイデンティティに関わる全てのデザイナーは少なくても1冊は持つべきだと思います。個人的には、違う目的でいくつかのスケッチブックをもっています。では、見てみましょう。
ポケットスケッチブック
私は可能な限りスケッチブックを持ち歩いているのですが、特にポケットサイズのスケッチブックは移動中などにすぐスケッチができるため大変重宝しています。鞄に入れておけますし、いつでも何かアイデアが浮かんだらそこにスケッチしています。長期にわたるプロジェクトに携わっている時、私はそれをベッドの横に置いて、何か素晴らしいアイデアが浮かんで目覚めたときなど、すぐに書き留めて、再び眠りに戻ることをしています。
下記の写真がそのスケッチブックです。iPhoneゲーム「GooHoo」のプロジェクトのために描いたものですね。

A4スケッチブック
私はA4スケッチブックを持っています。こっちは自分の時間を過ごしたいと思うあらゆる場所で使用することが出来ます。デスクでロゴデザインを考えている時にちょうど良いサイズで、移動中などにも実用的に使えます。下にいくつか最近のプロジェクトからの例を載せています。

Geek Eyewear のロゴデザイン

Anglo Forma のロゴデザイン

Proofread My English のロゴデザイン
その他のスケッチブック
私はスケッチブック狂になっているところが少しありまして、かなりの数を保有しています。下の写真でわかるように、私はA3サイズと素晴らしいA5サイズも持っています。都合に応じて使用していますね。

Proofread My English ロゴデザインプロジェクトのワードマップ
他のデザイナーのスケッチブックを覗いてみよう
私はこの記事のために、世界中のデザイナーにお願いしてスケッチ写真を寄付して頂きました。これらを見ることで、それぞれのデザイナーが全く違う仕事の仕方をしていることに気付くでしょう。
アイデンティティデザイナー:David Airey(デイビット・エイリー)
私のアイドルであるデイビット・エイリーは下記のスケッチを寄付してくれました。もし彼のロゴをもっと見たいのであれば www.davidairey.com か www.logodesignlove.com をチェックしてみてください。また彼の本も併せてチェックしてみてください。私は自信をもっておすすめします。

Clemente のロゴデザインスケッチ

David Aireyのスケッチブック
グラフィックデザイナー:Jacob Cass(ジェイコブ・キャス)
ジェイコブは、数々の素晴らしいアドバイスを彼のWEBサイト「justcreative.com」を通して発信しています。もしあなたが彼のWEBサイトを知らないようでしたら、一度サイトにアクセスして彼の素晴らしいアドバイスから学んでみてください。彼は親切にも下記のスケッチを寄付してくれました。

Jacob Cassのスケッチブック
イラストレーター:Von Glitschka(ヴォン・グリッチカ)
ヴォンはイラストレーターです。スケッチブックは使用せず、代わりに紙くずを使用します。以下彼からのコメントです。
「私はスケッチブックに限定することが好きではありません。束縛されていると強く感じてしまいます。本棚にきれいにスケッチブックを並べて整理できる人を本当にすごいと尊敬します。それができれば良いのですが、私はそういう事が苦手なんです。その為インスピレーションが浮かんだ時は、身の回りのあらゆるものにスケッチします。そして、スケッチしたものはいつもプロジェクトフォルダーにおさめ、特定の方向(そのデザインの方向性によって)へ切り離します。それらを再び持ち出し、更にスケッチをしてイメージを洗練させます。私はスケッチのフォルダーのさらに上にフォルダーを持っています。自宅にあるフラットファイルの引出は私がデジタルフォームで作成した1000を超えるプロジェクトでいっぱいになっています。私はロゴデザインを愛しています。そして私は描くことも大好きです。なぜなら描くことはデザインのベストフレンドだからです。」
ヴォンは親切にも下の写真を寄付してくれました。オーストラリアのFilthy Look Filmsのためのスケッチです。もっとヴォンのイラストレーションとロゴデザインを見たい人は、ぜひ www.vonglitschka.com のグリッチカスタジオを訪れてみてください。




グラフィックデザインを学ぶ学生:Kyle Funk(カイル・ファンク)
カイルは、セントラルミシガン大学でグラフィックデザインを学ぶ学生です。彼は親切にも自身のスケッチブックの写真を寄付してくれました。あなたもTwitter @KyleFunkDesign を通して彼をフォローしてみてください。

Foxhound のロゴデザインスケッチ
グラフィックデザイナー:Amy Pinney (エイミー・ピニーズ)
エイミーはイギリスのバーミンガムに拠点を置くグラフィックデザイナーです。彼女は沢山のスケッチブックの写真を送ってくれました。私個人的なお気に入りは Magic City Brewfest のために書いたスケッチでした。彼女のスケッチブックからのいくつかの例を下記に掲載しています。もっとエイミーに関する情報が欲しい方は、彼女のウェブサイト www.apinneysaved.com を訪れてみてください。

Magic City Brewfest のロゴデザインアイデア
ロゴデザイナー:Andy Bratton(アンディー・ブラットン)
アンディーはフリーランスのロゴデザイナーで、エスカレーター73という名前で活動しています。彼も沢山のスケッチを寄付してくれました。アンディーに関する詳しい情報を知りたい方は彼のウェブサイトを訪れ作品を見てみてください。www.escalator73.com




ロゴデザイナー:Jim Gott(ジム・ガット)
ジムは、グラフィックデザイナーで、Flipp.caのアートディレクターでもあります。彼はKnuckles Industries のためにスケッチした物を寄付してくれました。

Knuckles Industriesのロゴデザインスケッチ
WEBデザイナー : Laura Kalbag(ローラ・カルバグ)
ローラはイングランドのブライトンを拠点に働いているフリーランスのデザイナーです。彼女はTurbine (turbinehq.com) と Indie Phone (indiephone.eu)のロゴスケッチを送ってくれました。ローラと彼女のデザインについてもっと知りたい人はWEBサイトをチェックしてみてください。 www.laurakalbag.com




グラフィックアーティスト : Sherwin Schwartzrock(シャーウィン・シュワルツロック)
シャーウィン・シュワルツロックはアメリカのミネアポリスで活動するグラフィックアーティストです。そして大手のクリエイティブエージェンシーに商業的なアートやデザインを提供する才気溢れるクルーの一員です。彼からは、Mitt Romneyのためのロゴデザインを行なっている素晴らしいスケッチ画像を提供いただきました。シャーウィンと彼のクリエティブチームについてもっと知りたい人はこちら。www.schwartzrock.com

願わくは、ここで紹介した数々のスケッチがあなたを奮い立たせ、ロゴデザインを習い始めるきっかけになればと思います。
created by Ian Paget (Logo Geek)
スケッチブックの「手描きの速度」がアイデア発想の質に影響する
この事例のスケッチブックに見られる手描きのスケッチは、ほとんどが「きれいに描かれた」ものではなく「素早く走り書きされた」ものです。この「速さ」が重要です。
手描きの最大の利点は、思いつきを形にする速度がデジタルツールよりも圧倒的に速いことです。1つのアイデアを10秒で形にできる手描きと、1分かかるデジタルツールでは、同じ30分で出せるアイデアの数が6倍違います。アイデア出しの初期段階では「きれいに描く」より「速く多く描く」方が、結果的に良いアイデアに到達する確率が高まります。
▶︎ デザイン制作依頼・料金を知りたい方はこちら / ▶︎ デザイン制作実績を見る / ▶︎ 海外デザインの紹介記事一覧 / ▶︎ デザイン制作のガイド・媒体の特徴