
日常的に使われる文字。書いたり読んだりと、おそらく文字と触れ合わない日は一日としてないでしょう。文字に限ったことではありませんが、私たちは毎日目にする字や絵柄に対し少なからず固定概念を持っています。「A」という文字はこのカタチである。「象」という動物はこんなカタチであるというように、それぞれの事柄が頭の中で自分の思い描くカタチと結びついています。
生活する中で、その事柄がイメージ通りのビジュアルである場合、当たり前のようにそれらは認識されますが、自分のもつイメージと事柄に差異がある場合、そのビジュアルは驚きや関心を持って人の心に記憶されます。
そんな手法に当てはまるロゴデザインを得意としているのが、ドイツのフリーランスデザイナー Anna Iva 氏です。彼女のデザインは文字に強いインパクトがあり、そのブランドのイメージに合わせたフォント選びや、カスタマイズしたオリジナルフォントでブランドのイメージを作ることに大変長けています。彼女の、文字を中心としたロゴマークのデザイン法を2つの例から考察していきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you,Anna! )
「文字のフォルムが独自」なロゴが成立するための条件は「可読性の維持」
この事例集のロゴが「文字のフォルムが独自」と評されつつ機能しているのは、文字の変形がどれだけ独自であっても、「読める」範囲に収まっているからです。
文字を独自に変形する処理は、「変形の度合い」と「可読性」のトレードオフです。変形が大きすぎると「何と書いてあるか読めない」、変形が小さすぎると「既存のフォントと変わらない」。この事例集のロゴは、「初見で読めるギリギリの独自性」を攻めています。ロゴタイプの独自性を追求するとき、「これ、初めて見る人が読めますか?」というテストを制作中に繰り返すことが、可読性を担保する最も確実な方法です。
コロコロとした文字が目を引くガーデニングブランドのロゴデザイン ――「Green Seed」

「Green Seed」は、ガーデニングに関する道具や種・消耗品などを扱う家族経営の企業。プロアマ問わずブランド名を認知してもらうため、ロゴデザインを中心とした新たなアイデンティティの構築を依頼されました。
デザインするにあたり、意識したのはオリジナリティがありエレガントでモダンであること。現代デザインのトレンドを適度に取り入れ、鮮やかで親しみのあるビジュアルを目指しました。
ロゴタイプをメインにしたGreenSeedのロゴデザインは、ミニマルで規則性を持った文字のデザインが基本となっています。曲線を持つ文字は同じ大きさの円をグリッドに敷き、カットする角度を合わせてオリジナルの文字が作られています。文字の特徴的な部分を残しながら、一部分をカットすることで文字を印象深いデザインに仕上げ、見る人がイメージを補完することで文字としても機能するように作られています。
もう一つポイントになっているのが、「S」の下部分に文字の代わりに配されたハート形の双葉のモチーフ。ロゴタイプの先頭に置かれたグリーンのバーと同じく鮮やかな緑色で、ロゴタイプに彩りとインパクトを添えています。地面からニョキッと頭を持ち上げているような双葉のイメージは、ブランドの成長もあらわしています。

ロゴのパターンは、フルバージョンとアイコンタイプの2種類が作られました。
アイコンタイプはイニシャル「GS」をグリーンのバーで挟み、ワンポイントに双葉のマークも入っています。このロゴデザインの特徴を凝縮したアイコンは、ブランドタグやデジタルデバイスでのアイコンやファビコンなど、簡潔にブランドを視認させたい場面で大いに活躍します。
メインカラーは緑生をイメージさせる鮮やかで明るいグリーンが基本ですが、ガーデニングは季節ごとに色を変えるもの。ガーデニングの特性を生かし、四季に対応したカラーリングも設定されています。
春はグリーンになる前の若芽をイメージしたイエローをベースに、夏はメインカラーと同じグリーン。秋は紅葉や収穫をイメージした赤、冬は寒さや雪をイメージしたブルー。加えて、セール用に「ブラックフライデー」用の黒バージョンも用意されています。

ブランドのメインカラーであるグリーン、ロゴタイプに使われた深いチャコールグレーを基本に、ロゴのデザインをビジュアルアイデンティティの指針とし、さまざまなツールやグッズが作られました。
ロゴのデザインに加え、ブロッコリーやエンドウ豆などの作物の写真が添えられることにより、より瑞々しく具体性を持ったデザインに仕上げられています。
ロゴに「オリジナルのレタリング」を使うと唯一無二の識別性が生まれる
既存のフォントを使ったロゴは、同じフォントを使う他社のロゴと類似するリスクがあります。特に人気のあるフォント(Gotham、Montserrat、Didotなど)は多くのロゴで使用されているため、「どこかで見た感じ」になりやすいです。
この問題を回避する方法が、「ロゴ専用にレタリング(文字の形そのもの)をオリジナルでデザインする」アプローチです。既存フォントをベースにしつつ、特定の文字の一部を変形する、文字と文字の接合部に独自の処理を加える、特定の文字だけ太さや角度を変える。こうした「カスタムレタリング」によって、そのロゴだけにしか存在しない文字のフォルムが生まれ、他との差別化が確実になります。
カスタムレタリングは「世界に1つだけの文字形状」として独自性が確保されるため、商標登録の観点でも有利です。
絵柄のように配置された文字がユニークなカフェのロゴデザイン ――「Uptown」

「Uptown」は、エスプレッソメニューをはじめとするカフェメニューを幅広く提供する都市型のカフェ。カフェを展開するにあたり、ビジュアル面で直感的にコーヒーショップをイメージさせるモダンでスタイリッシュなブランドイメージが必要とされていました。
ロゴはいくつかの段階を経て、アイデアが具体化されていきました。
はじめのステップとなったのは一目でコーヒーショップとわかるカラーパレットの設定と、カップの中に入ったあたたかな飲み物をイメージしたロゴのデザインイメージ。
次に、モダンなイメージを加えるため、ブランド名を個性的でスタイリッシュなフォントで表記し、さらにブランド名をカップの中に入れることで、ブランド名を飲み物に見立てたユニークで親しみが湧くビジュアルが完成しました。
最後に木目のモチーフを取り入れ、リラックスできる空間をイメージさせています。

また、ロゴをデザインするにあたり、SNSに対応するため円や四角形の中にロゴを納めた時にバランスが保たれるように調整しています。これからのロゴデザインにおいて、こうしたSNSやwebサイトの表示に対応した調整はますます必要不可欠となっていくでしょう。

カラーパレットはカフェメニューをイメージした3色を中心にしています。
ブラックコーヒーやエスプレッソをイメージした「COLD BLACK」、ラテやカフェオレに代表される「SOFT BLOWN」、海外ではメジャーなホワイトフラットやカプチーノなどクリームの泡をのせたメニューをイメージした「COLD CREAM」。
これらのカラーと木目調のパターンを併用し、パッケージやグッズがデザインされています。

また、ロゴに使われた個性的なフォントをパッケージやツールに中に取り入れていくことで、トータル的なイメージの統一にも繋げています。都会的なモダニズムと自然のリズムを融合させたUptownのブランディングは、都会の中のオアシスを見事に演出しています。
まとめ
文字をデザインの中心にするロゴのデザインは一見簡単なように見えますが、バランスの調整や絵柄に引けを取らないインパクトの強さなど、緻密な計画性と意外性のあるアイデアが必要とされます。難しい分だけそれが成功した時のクオリティは高く、さまざまな分野で応用しやすいデザインとなることでしょう。Anna Iva氏の作例は、インパクトのあるロゴタイプづくりの良い参考事例となるのではないでしょうか。
design : Anna Iva ( Germany )
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