日本のアニメーションや漫画の文化は、世界各地で高く評価され、今や国策として世界に打ち出していくほど、日本を背負う一大市場になりました。その余波は、純粋なアニメや漫画のファンを増やすことはもちろん、デザインの分野でも、世界中のクリエイターに大きな影響を及ぼしています。
フランスのデザインスタジオ「Yeaaah! Studio」は、独自のアパレルブランドを展開し毎年Tシャツのデザインコレクションを行っています。日本の文化に色濃く影響を受けているクリエイター集団の一つで、特筆すべきは、影響を受けている日本の文化の時代背景が「昭和」に傾倒していることです。昭和の中でも高度成長期と呼ばれる1960~1970年代頃の漫画やアニメ、特撮ものの雰囲気を好んでおり、その頃の日本のテイストとフランスのデザイン様式やモチーフ、モデルとが合わさり、渾然一体となった独自の世界観を築いています。
あの頃の日本の雰囲気を知っている人も知らない人も、日本人なら思わずニヤリとしてしまう、懐か面白い和のテイストを散りばめた彼らの作品を見ていきましょう。 ※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Yeaaah! Studio! )
日本文化の色を濃くしていくTシャツのカタログデザイン
Yeaaah! Studioは毎年、Tシャツのデザインを紹介するカタログ「LOOK BOOK」を制作しています。2016年は春と秋に刊行され、Tシャツのデザインに合わせた懐かしい昭和の日本文化薫るデザインが特徴的です。回を追うごとにその影響が濃くなっていく彼らの「LOOK BOOK」を見ていきましょう。
2016年春、2色刷りの簡易印刷で刷られたレトロなカタログ
2016年春は、全編ザラッとしたクラフトライクな再生紙に2色の簡易印刷で印刷された、日本の古い印刷物を思わすレトロなスタイルのカタログデザインです。
まるで、昭和の時代のマッチ箱を思わすようなカラーリング。カタログやTシャツのデザインの中に時折現れる日本語がアクセントになっています。
昭和のポスターのような大げさでインパクトの強いイメージとカタカナを使った背景、「キラーロボット」のTシャツを着た白人男性とのコントラストが何ともいえずよくマッチしています。日本人モデルでは出すことのできない違和感が、このデザインのポイントといえるのではないでしょうか。
サイケデリックなイメージと日本語が合わさることで、無国籍でユニークな印象を感じさせます。
2016年秋、日本の商店街を背景に撮影されたカタログ写真
同年秋のカタログデザインは、春とはまた印象を変え、日本の商店街をロケーションにしてフルカラー印刷で制作されました。Tシャツのイラストに端を発したストーリーをライトに絡めつつ、デザインを紹介していくというスタイルでカタログは進行していきます。
ボクサーを志す青年の吉報を待つ姿がTシャツのデザインと共に描かれています。中には、昭和の日本文化を垣間見せるダイヤル式電話や壁掛け時計など、日本人でも懐かしんでしまう小物が映し出されます。
少し褪せた色調で調整された写真に、当時の日本のポスターのようなデザインが合わさり、世界観はまったくの昭和。そこに立つ、外国人男性と奇抜なデザインのTシャツが存在感を強く主張しています。
フルカラーの写真と、モノクロ写真にあえて1色だけカラーを差し入れた写真を織り交ぜ、日本の雰囲気とTシャツのデザインの両方を引き立たせています。
春のカタログデザインよりも、さらに日本文化の影響を色濃くした秋のカタログは、フランスの人々にとって興味深く印象強いものになったのではないでしょうか。
2017年春、ジャパニメーションの洗礼を受けたTシャツデザインのプロモーション動画
まず驚かされたのが、日本の歌謡曲をBGMに選んでいるということ(日本語の歌詞字幕入り)。しかも、決して現在メジャーとは言えない70年代にリリースされた曲。日本人でもなかなか出てこないチョイスです。そのBGMをバックにフランス人の男女の恋愛模様と思しきシーンがいくつか流れていくのですが、そこに着用されているのが、Yeaaah! StudioのTシャツです。
頭のシーンで登場する二人の部屋と思われる室内。今では見かけることがほとんどない、VHSビデオ内蔵のテレビ…懐かしいですね。後ろの壁には、さりげなく今回のTシャツに使われているデザインがポスターとして貼られています。
本棚の書籍やテレビ画面に映る、映画会社のロゴをモチーフにしたYeaaah! Studioのロゴ。本当に芸が細かいです。
屋上で佇む女性。風になびく髪が印象的です。彼女が着用しているのが、「YEAAAH!」と書かれたフラッグをデザインしたTシャツ。劇中のものがそのまま購入できるというのは、非常にワクワクしますね。
パートを後に電車に乗る男性。車窓に流れるフランスの町並みとTシャツデザインのコントラストがシュールです。 ガイコツが「イエーッ」の旗を持ち元気に歩く、和洋折衷のPOPなTシャツです。
障子をバックに物思いな様子の女性。着ているのは「グレートキツネ」と書かれた昭和レトロなTシャツ。当時流行した「タイガーマスク」をモチーフにしたデザインだと思われますが、アニメのストーリータイトルやキャッチコピーまでしっかり入っており、日本人の方が欲しくなる忠実なパロディっぷりです。
男性の挙動に疑心暗鬼になる女性の背景に「僕を信じて!」と書かれた、どう見ても悪役にしか見えないイラストをプリントしたTシャツ。シュールすぎます。
横断歩道で止まる男性が着用しているTシャツのバックプリントをポスターとして隣に配置。ガラスのボールを頭に被ったアジアチックな女性が案内しているのは、今夜のステージ「スペースダンサー」。
合間のシーンでは、ポストカードやステッカーなどのグッズデザインも見ることができます。どこか憎めない顔のガイコツと、猫とコウモリを掛け合わせた「バットねこ」。どちらも一度見ると記憶に残る強いキャラクター性を持っています。
日本のアーケード街を背景にすれ違う二人。こちらも、女性と男性に同じTシャツを着せ、フロントとバックの両方を見せています。バイカーやヘビーメタルの雰囲気を感じるハードなデザインながら、ちょっと可愛いガイコツとキャップのツバにある「イエーッ!」のおかげでPOPでユニークな仕上がりになっています。
ブルーとレッドのネオンカラーで表現された2つのシーン。Tシャツのカラーをそのままアニメのシーンに重ね、印象深いラストシーンを飾っています。
日本文化とフランスのデザインが融合したYeaaah! Studio のデザインは、日本人から見てもフランス人から見ても、非常に興味深いものなのではないでしょうか。互いの絶対的な違いが生み出す「違和感」という強いコントラストは、何よりも強力なデザインのアクセントになっています。その違いは今の日本よりも一昔前の昭和の日本の方が断然大きく、彼らが好んでモチーフにしているのも頷けます。
2017年以前まで、Yeaaah! Studio の商品カタログは写真のみで構成してきましたが、2017年春のコレクションは、彼らの意向によりこれまでにない方法をとり、動画として制作されました。作業量としては、圧倒的に高度で大変なものですが、この完成度と他にない目新しいカタログはそれ以上の価値に値します。動画にしたことで、彼らのデザインは、静止画としてTシャツの中だけにある存在ではなく、より大きなイマジネーションの世界を手にしたのです。
着実に進化を重ねるYeaaah! Studioのデザイン。これからどんなLOOK BOOKを見せてくれるのか楽しみですね。
デザイナーのStéphane 氏からのメッセージ
「素敵なLOOK BOOKのレビューをありがとう!見ての通り、日本文化にとても大きな影響を受けているんだけど、日本のアニメと漫画を見て育って、日本のヴィンテージカルチャーに魅了されたんだ。日本に行くと、いつも千社札やマッチ箱、広告や特設映画のポスター等についての本をたくさん買うよ。日本人に広めてもらえるなんてとてもハッピーだね。本当にありがとう!」
まとめ
日本文化とフランスのデザインが融合したYeaaah! Studio のデザインは、日本人から見てもフランス人から見ても、非常に興味深いものなのではないでしょうか。互いの絶対的な違いが生み出す「違和感」という強いコントラストは、何よりも強力なデザインのアクセントになっています。その違いは今の日本よりも一昔前の昭和の日本の方が断然大きく、彼らが好んでモチーフにしているのも頷けます。
2017年以前まで、Yeaaah! Studio の商品カタログは写真のみで構成してきましたが、2017年春のコレクションは、彼らの意向によりこれまでにない方法をとり、動画として制作されました。作業量としては、圧倒的に高度で大変なものですが、この完成度と他にない目新しいカタログはそれ以上の価値に値します。動画にしたことで、彼らのデザインは、静止画としてTシャツの中だけにある存在ではなく、より大きなイマジネーションの世界を手にしたのです。
着実に進化を重ねるYeaaah! Studioのデザイン。これからどんなLOOK BOOKを見せてくれるのか楽しみですね。
design : Yeaaah! Studio ( France )
最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)
サイトへのお問い合わせ・依頼 / 各種デザイン作成について