デジタル化が日進月歩の発展を遂げている今日に至っても、フェスティバルやコンサート、パーティーなどのイベントの告知に欠かせないのは、紙媒体のポスターやチラシです。 最近では、告知や広告もインターネットが用いられ、Webサイトを通して情報を簡単に手に入れることが当たり前になりつつありますが、基本的にインターネット広告・情報は自分の意思でそのサイトを訪問しなければ見ることができないもの。また、インターネットを頻繁に利用しない方もまだ多く存在しています。
一方、街頭に貼られた人の目を引く紙媒体のポスターは、自らの意思で訪問しなくても自然に広告として目に飛び込んでくるもので、対象者を固定することなく情報の伝達を可能とするアイテムです。 開催されるイベントの数に匹敵した数え切れない量のポスターやチラシが世界中至る所で毎日デザインされ、ポスターが街角に貼られたりチラシが手渡しされたり、といった光景はこれからも継続し、ポスター・チラシの存在はまだまだイベント告知方法の主流を成し続けるでしょう。
いかに人の目を引くことができるか、いかに人の記憶に残せることができるか、ポスターやチラシのデザインには考慮しなければならない要素が多々あります。 その中でも構成モチーフやカラーリング、フォントの選定は、ポスター・チラシのデザイン性に大きく関わり、同時にデザイナーの力量が顕著に現れるものです。 今回は、表現力豊かなタイポグラフィーとユニークなカラーパレットで人を魅了するポスター・チラシを制作しているデザイナー Shanti Sparrow 氏のデザインをご紹介します。 ※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Shanti Sparrow! )
Shanti Sparrow氏は、オーストラリア出身のグラフィックデザイナーです。ニューヨークのShillington Collegeのグラフィックデザインコースの講師として教鞭をとる傍ら、同ニューヨークにShanti Sparrowスタジオを設立。2009年からはオーストラリアのシドニーのBug Communication スタジオとタイアップして活動を展開し、グラフィックアプリケーションCanvaでは世界の優秀な女性デザイナー33人のうちのひとりに選ばれています。
女性サーファー映画祭のポスターを中心としたブランディング事例
まず、第五回ニューヨーク女性サーファー映画祭のブランディングデザインを見てみましょう。 毎年ニューヨークで開催されているこのイベントは、世界中の女性サーファーの精神とインスピレーションを、映像やアートを通じて共有させることを目的としています。サーフィンにかける冒険心や海との繋がり、またサーフィンを通しての作り上げられる素晴らしい人間関係をプレゼンテーションする数々の映像が放映され、多数の地域企業・団体によってサポートされている大変人気のあるイベントです。
イベントブランディングを手がけたSparrow氏のデザインキーワードは、「象徴的でレトロなサーファー文化」と「現代映画から生み出される美学」。このキーワードに沿ってデザインのモチーフとして採用されたのは、ハワイ・コナ出身のフォトグラファー Sara Lee 氏の躍動感溢れる女性サーファーの画像です。Sara Lee氏は自身も優れたサーファーかつ水泳選手であると同時に、15歳の時より水中やサーフィンをテーマとした魅力的な写真を撮り続けています。彼女の写真はナショナルジオグラフィック誌やコスモポリタン誌、CNN のホームページ等に掲載され、今や世界的に有名な のフォトグラファー の一人です。
イベントのメインワートワークとなるポスターデザイン
Sparrow氏は、この魅力的な画像と一日の終わりを告げノスタルジックな気分を匂わす夕日のイメージした円形を組み合わせ、ポスターデザインを構成しています。
カラーリングには、フェミニンで安らぎに満ち足りた心理効果を促すエレガントなピンク色とサーフィン・海にはぴったりな広大な自然のイメージを醸し出す青色が使われていますね。画像の色彩もこの二色で表現することで、サーファーが、水の中もしくは空の上を飛行しているように見える幻想的なシーンを作り出すことに成功しています。
イベントのロゴデザイン
ロゴのデザインは、イベントタイトルの「Women’s’Surf」部分に筆記体を使用することで柔らかさと流動感を表現した様相です。このロゴを上部に、メインモチーフであるLee氏の画像を中心に配置した、一見しただけで記憶に残るインパクトの強いポスターに仕上がっています。
チラシなど各種媒体の一貫したデザイン
チラシやリーフレット、エントランスパス、帽子やシャツなど、ポスター以外の多々のデザイン媒体にも、「ロゴ」「メインモチーフ」「ピンクと青のカラーリング」をベースにした一貫したデザインがなされ、統一感の取れたブランディングを展開しています。
Event Photography: Dennis Cahlo
ホラーミュージカル映画のポスターデザイン&アートディレクション
次は、『Rocky Horror Picture Show Production』のブランディングです。 Rocky Horror Picture Showは、ホラー・ミュージカル舞台劇「ロッキー・ホラー・ショー」を映画化した作品です。ホラー映画ではありますが、全編を通してミュージカル構成が取られ、コメディタッチで描かれる作品です。1975年にイギリスで初公開され、その翌年からアメリカ合衆国で始まった深夜興行が開始。コスプレをした観客が週末ごとに集まり、スクリーンの前で俳優が同時進行で演技をするパーティー形式の上映が定着しました。刺激的なロック音楽や衣装・舞台のデザイン、エロティックなパフォーマンスを特徴とするこの興行は、時を経ながら少しずつ確実に支持者を増やしてきています。現在でも熱心なリピーターに支えられ、世界中の多くのシアターで上映されているショーイベントです。
タイポグラフィーが印象的なポスター
Shanti Sparrow氏が手がけたのは、アメリカ合衆国オレゴン州の都市ポートランドの「クリントン通り劇場 -The Clinton Street Theater-」での興行アートディレクションです。 この劇場では、1978年より土曜日の真夜中に定期的に公演されており、Rocky Horror Picture Showの歴史には欠かせないシアター。ホラーを題材としてデザインされたポスターは、何と言っても「震撼」 を表現したオリジナルタイポグラフィーがまず目に焼き付く作品です。
印象的なタイポグラフィーデザイン
興行タイトルだけではなく、「Don’t dream it, be it」など各キャッチコピーも同一の書体で構成。カラーリングには黒とショッキングピンクをベースとし、このエキセントリックなカラーコンビネーションも人の目を引く効果を向上させています。
Sparrow氏はデザイン活動に対するモットーとして「個性的で大胆なアプローチを施すタイポグラフィーと配色パターンを生み出し、象徴的で人の記憶に残るブランディングを試みる」と述べています。この『Rocky Horror Picture Show Production』は、まさに自身のモットーを忠実に実行し、成功させたデザインと言えるでしょう。
まとめ
ポスターやチラシは人の目に付き、興味を持ってもらえることが必要不可欠です。 特にポスターは、じっくり読ませることよりも見せる力が求められ、立ち止まって見たくなるものや、一見した後も記憶に留めることができるものが秀逸なポスターデザインと言えます。 今回ご紹介したShanti Sparrow 氏の作品は、内容にマッチしたモチーフや書体、配色などがデザイン性高くレイアウトされて出来上がっています。彼女のデザインを参考に、人の心に強い印象を残すチラシやポスターをデザインしていきたいものですね。
design : Shanti Sparrow ( USA )
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