fagerströmは、ビジュアルアイデンティティ、ブランディング、そしてパッケージングを専門とするスペインのデザインスタジオです。デザインはもちろん、パッケージ、写真撮影、WEBサイト、ユーザーインターフェースデザイン、エディトリアルデザインなど様々な分野で活躍しています。
彼らは綿密なデザイン力と明確なクリエイティブのコンセプトを組み合わせたプロジェクトの開発を目指しています。目標はそれぞれのブランド、企業、プロジェクトに認識可能でユニークなアイデンティティを与えること。北米、ヨーロッパ、中東などブランドのプロジェクトを幅広く担当している彼らの素晴らしい作例を見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。(Thank you, fagerström!)
ミニマルで美しいランドリーショップのパッケージブランディング
ハング・トゥ・ドライは、サウジアラビアのリヤド初の新しい高級ドライクリーニング&ランドリーショップです。最高級のランドリー製品を使用し、衣類がまるで自分のものであるかのように、クリーニング工程の細部にまで気を配り、迅速で行き届いたサービスを提供しています。今回はこちらのブランディングとパッケージを担当しています。
クライアントの望みはリヤドで最初のランドリーショップとなり、お客様が高級衣料品を安心して預けることができるように最新の注意を払ってクリーニングをすること、そして高級ランドリーブランドとしての地位を確立し、顧客にこれまでとはまた一味違う価値をお届けしたいということでした。
今回のブランド名は、衣類などのラベルに記載されている洗濯表示からインスピレーションを受けています。デザインはこの種のビジネスでは誰もが認識できるであろうハンガーをモチーフに使用することでブランドと会社の活動を直接的にリンクできると考えました。
デザインは至ってシンプルでミニマル。余計なものはのぞき、直感でランドリーショップだと分かるように考えられています。全体は清潔感のある落ち着いた上品なくすみピンクとグレーですっきりとまとめられており、高級ランドリーショップを目指すというクライアントの意図に寄り添っています。「&」の文字の部分はハンガーモチーフを用いています。箱などのパッケージにはHANG & DRYという文字を使用せず、敢えてハンガーのモチーフだけでブランドイメージを印象付けたりもしています。
シンプルなマークだからこそ、タグやカード、パッケージになど汎用性があっていいですね。そして癖がないフォントですが各文字の中に「&」と同じく少しだけ隙間を作ることでブランドロゴマークとしてのこだわり部分をプラスしています。
洗練されたLINEで描かれた変幻自在のロゴビジュアル
The Lineはプレミアム&ラグジュアリーブランドのビジュアルプロジェクトの開発を、オーダーメイドのクリエイティブコンサルティングを通じて支援するサービスです。個人や企業向けにアートに関する仲介サービスなどを提供しています。
東京やパリ、ロンドンなど様々な場所で展開しているこのサービスのロゴということで、どこの方が見ても直感で分かりやすく、尚且つ様々な媒体に活用できるビジュアルアイデンティティがなくてはなりません。
細く繊細な線で描かれたロゴのTHE LINEのブランドロゴは、LINEの「L」にポイントを持たせたロゴデザインになっています。ぱっと見るとすごくシンプルなデザインなのですが、まさにこの「線」が自由自在に様々な媒体で広がっていくポイントとなるのです。ステーショナリー、カード、タグ、WEBサイトなど様々な媒体の中でスッと伸びた「LINE」はブランドのアイコンでもあり、デザイン要素でもあります。
印刷物は髪の質感にもこだわり、ブラックと箔押しのゴールドで高級感を。さりげなくすっきりとしたロゴですが、どの媒体に使用されても雰囲気や写真の要素を邪魔しないちょうど良い存在感、そして主張しすぎず作品に馴染む色選びが素晴らしいと感じました。
シンプルの中にこだわりを持たせたジュースのパッケージデザイン
ウェイクは、ドイツで開発されたフルーツジュースとカフェインを配合した機能性飲料です。ドイツの若者のコーヒー代わりになることを目指した新鮮で健康的、そして革新的なドリンクです。敢えて手描きっぽくない線で描かれたフルーツのイラストを使用し、ドリンクのカラーに合わせた自然な配色でフレーバーの差別化を図っています。特に公表されていませんでしたが至ってシンプルなWAKEのロゴは、eの下にあるドットが意味を持たせているのでしょう。敢えて少し不思議なバランスになった文字がロゴマークとして特別感を出しています。
透明な瓶からは自然なジュースの色合いがのぞき、清涼感溢れるイメージとなっています。白のパッケージはしっかりと余白を持たせた余裕のあるデザインなので、線で描かれたシンプルなイラストが目に飛び込んで来ることで直感的にフレーバーが伝わります。
WAKEというブランドロゴはサイドの面に配置しています。敢えて強調しないスタイルなのでしょうか。製品のサイドからバックにある情報面も、すっきりと線で区切られて見やすく仕上がっています。文字色は黒ではなく、ライトグレーを使用していることもあって全体が軽やかなイメージに仕上がっているのもポイントですね。若者がターゲットというだけあって、ポップで手に取りやすいデザインに仕上がっています。
まとめ
全体を通して無駄な要素がないすっきりと洗練されたデザインはfagerströmの魅力だと感じました。それに加え、シンプルの中にも配色の美しさや、コンセプトに一工夫オリジナリティがねじ込まれていたりと、彼らの目指す「分かりやすくユニークなアイデンティティを表現する」という概念はしっかりと作品に反映されていますね。他にも彼らが手がける作品はとにかくシンプルでミニマル。クライアントの意図を汲み取り、多くの情報をシンプルに仕上げることは何よりも難しいことです。より分かりやすく、明確に、だけど遊び心を忘れないというテーマがあること、それは彼らの強みであり今後も活躍していく理由の一つとなるでしょう。
design : fagerström (Spain)
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