ここ数年に作られた新しいロゴデザインを見て気付かされるのは、形態のシンプル化です。ロゴマーク(グラフィック要素のみでできているシンボルマーク)は単純な幾何学形を利用したもの、ロゴタイプ(書体をグラフィカルに表示したもの)は文字の美を追求して作られたセリフ系よりも、修飾のない線の太さが一様なサンセリフ系のフォントを使用して作成される傾向が高まっています。
企業やサービスの細分化や多角化に伴い、業務・商品内容を一つ一つ具体的に把握してもらうデザインではなく、 企業や商品のコンセプトやアイデンティティを抽象的な形で消費者に伝える役割を果たしています。
当然、無駄な部分を削ぎ落として出来上がったシンプルな形に込められるメッセージの量には限りがあります。いかに企業や商品の本質を忠実にロゴの中に込められるか、ロゴデザイナーの力量が問われるところです。
ロシアのモスクワを拠点として活動するグラフィックデザイナーSergey Sukhov 氏は、シンプルなロゴデザインに無限の可能性を与えるアプローチを試みています。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Sergey! )
ショッピングモール経営の専門機関のロゴデザイン
Rent Invest社はショッピングモールの経営を専門としている機関です。主な業務は、ショッピングモールの経営に大きな影響を与える、コンサルティング、商業・マーケティング管理、技術的なメンテナンス。消費者・ビジターの数に伴う施設の利用率の向上、販売の促進、またショッピングモール候補地の不動産価値の上昇を目的とし、あらゆる面からショッピングモール事業の成功を推進しています。
Sergey Sukhov氏はRent Invest社のブランディングデザインを遂行するにあたり、駒をスライドしながら移動させ目的の配置を完成させる15パズル(スライディングブロックパズル)からインスピレーションを得て、ロゴデザインのベースとしました。
パズルの駒に見立てたRent Invest社の4つの主要な業務は、それぞれ独立した幾何学形のモチーフとカラーにリンクさせることから始めました。
・戦略的なコンサルティング→四角丸形→赤色
・商業的マネージメント→正方形→黄色
・技術的なメンテナンス→三角形→紫色
・マーケティングのマネージメント→円形→青色
一見すると単独でばらばらなこの4つのモチーフと社名Rent Investを配置よく組み合わせることで生まれたのがこのロゴデザインです。可視性・可読性に焦点を置き、モチーフ間や文字フォント間の余白の配慮も十分になされた非常にバランスの取れたロゴです。活気があり華やかなショッピングモールという場所のイメージに準じて、この4色のカラーも明度の極めて高いものが使われています。
15パズルのソリューションが限りなくあるように、このシンプルな4つのモチーフの作り出すパターンのバリエーションは無限です。デザイン媒体によって様々なパターンを使用することができ、どのような配置をとられても確固としたブランド・アイデンティティを保つことに成功した制作例です。
センスが光る、モノトーンのロゴデザインたち
シンプルなデザインの制作は簡単そうに見えますが、実際はその逆。好まれるデザインとそうでないデザインは紙一重で、デザイナーの器量やセンスが顕著に表れてしまうものです。
Sukhov氏は多数のシンプルなロゴマークを制作しています。余白の取り方やモノトーン・ロゴの黒色と白色の量はデザイナーのさじ加減で決まります。上記のRent Investのロゴもそうでしたが、Sukhov氏の作り出す作品は視覚的に大変バランスのとれたエレガントな様相に仕上がっており、高いデザイン性を伺うことができます。
テクノロジー業界がもたらすモバイル化が急激に進むにつれ、ロゴのシンプル化が加速する昨今です。シンプルな優れたロゴというのは、1)特定の文化的背景に縛られず誰にとってもわかりやすく、2)企業・商品のコンセプトが明快で、3)ビジュアル的な美しさを兼ね備えたものです。今回見て頂いたSergey Sukhov氏の作品は、この三つを全て網羅しているのではないでしょうか。
design : Sergey Sukhov ( Russia )
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