ブランドのイメージを左右するロゴ
魅力的なロゴにはついつい目を惹かれてしまうものです。ロゴにはタイポグラフィ、形、カラーなど、デザインの基本となる要素が凝縮されています。見栄えだけでなく企業の戦略を表す会社の顔とも言えるでしょう。魅力的なロゴデザインには、デザインテクニックだけでなく、トレンドもさりげなく用いられています。今回は、ロゴ製作例をもとに見た目に楽しく効果も高いロゴのポイントをご紹介します。
ピックアップさせていただいたのは、ブルガリアのブランディングとロゴに特化したデザインスタジオ「Ampersand Studio」による制作例です。※記事掲載はデザイナーに許諾を得ています。(Thank you Ampersand Studio & Alexander !!)
ロゴデザインの秘訣
ブランドに形はありません。キャッチコピーやらウェブデザインを工夫したとしても、ロゴのように瞬時に企業の良さを伝えることはできないでしょう。魅力あふれるロゴをデザインする為には、まず相手に伝えたい企業そのものやブランドの価値を、しっかり掴んでおくことが大切です。どのようなコンセプトがあるのか、ターゲット層はどこか、ロゴに込めたいメッセージとはなにかなどを明確にしましょう。その企業やブランドの本質を掴んだデザインにすることで、多くの人に愛される企業の顔が出来上がります。
ロゴ制作例から学ぶテクニック紹介
親しみやすいシンボルを活用
具体的な形は、人のイメージをうまく引き出してくれるので、コンセプトをわかりやすく印象付ける効果があります。配置や色との組み合わせを工夫することで他にはないオリジナル性を醸し出すことも可能です。画像はシンプルな鍵マークが組み合わさったホテルのロゴデザインです。
鍵には「堅牢」「保護」「安心」というイメージがあります。1本ではなく2本重なり合っていることで安定感が増しており、リズムが生まれ親しみやすさを感じさせます。また、背景にはアースカラーである茶色が用いられているので、アンティークでクラシカルな上品な老舗の味わいを醸し出しています。
動物はシンボルとして相性抜群!
ファッションレーベルのロゴであるこちらには、印象的な燕のマークが配置されています。昔から人間の近くに住み、田畑の害虫を食べてくれる燕は人に愛されてきました。季節の到来や生命力を感じさせてくれることから幸福の象徴とも言われています。配色もバランスよく整っていると言えるでしょう。
ベースカラー・メインカラー・アクセントカラーの3色をだいたい70%・25%・5%の割合で用いると全体的に調和の取れたデザインになります。こちらは白、灰色、黒を巧みに配し、落ち着いた雰囲気を生み出しています。白は「純粋」「美しさ」、灰色は「調和」「思い出」、黒は「高級感」「都会的」と言った意味が含まれています。
各国の童話にも登場する親しみやすい燕のデザインと落ち着いた無彩色の組み合わせは、穏やかでありながらも上品でオシャレな印象を与えてくれています。
細かい小ワザが味わい深いロゴ
これは土地仲介企業のロゴです。印象的なのは中央に堂々と配置された犬と言えるでしょう。猫や犬には不動の人気があります。猫がどちらかというと女性的で優しげなイメージを有しているのに対して、犬には男性的で強いイメージがあります。バックを黒に統一し、堂々と闊歩する俊敏でたくましい犬を配置することで、「誠実」かつ「忠実」なイメージが表現されていますね。
直線を効果的に使っている点も面白いです。中心部分は、犬の背を使い一直線で安定感を持たせながらも、斜線を組み合わせており、動きがあります。犬が右前足を上げており、今にも動き出しそうな勢いがあるデザインに仕上がっていることも面白いです。
動きのある絵はストーリー性を感じさせ、人の興味を惹きつけます。使われている白い色にかすれが施されているところも注目に値するでしょう。これがあることでリアリスティックでアンティークな独自の味を醸し出しています。一見単純なデザインに見えても、さりげない小ワザが効いた、重厚なロゴデザインであることがわかります。
象徴的なシンボルだからこそ普遍的
シンボルが効果的に使われているロゴながら、こちらは象徴的な存在感を放っています。これは動画アプリのロゴマークです。リボンを巻いているように動きがありながら、全てが繋がっているデザインは、無限にループする永遠性を表しているようです。真っ黒な背景のなかに暖色系の配色も、宇宙の中に浮かぶ生命のようなどこか哲学的な味わいを生み出しています。
エッシャーのだまし絵のように、どこが始まりでどこが終わりなのかわからないデザインは、普遍的な何かを表現しているようです。パターンは繰り返しがメインの単純な反復ですが、色合いが工夫されていることや、さりげに影が使われている細やかな演出と相まって、リズミカルなストーリー性を生み出しています。いつまでも見ていられる不思議なロゴです。
暗闇のなかでアイディアがパッと閃いた時のような、アイデアの誕生を象徴しているようにも思われます。全てを吸収するような黒のなかで、一際鮮やかに浮かび上がるシンボルマークは、時代を超えて存在する企業精神を表すかのような趣を感じさせます。
和柄は優秀なデザインの宝庫
こちらもアプリのロゴです。製作者は海外の方ですが、枯山水・和柄のような情緒ある意匠が印象的です。波紋が呼応し合う瞬間を捉えたようなデザインが、円の中に配置されており、まるで穴を覗いているような不思議な感覚を呼び起こします。波紋は広がりを感じさせつつかけており、穴の向こうにはさらに広大な世界が待っているのではないかという期待感を煽ります。
控えめでおしとやかな黄色みがかった白っぽい背景に緑色の配色も、バランスよく落ち着いた印象をもたらします。自然界を象徴する緑色は、気持ちを穏やかする効果があると言われています。全体的にナチュラルな雰囲気を感じさせるので、気分がリフレッシュする清々しいロゴです。波紋が重なり合っている部分の配色に微妙な変化を持たせた色が用いられていることも、深い趣を与えています。
一見規則的なデザインの繰り返しに見えながら、重なり合った部分のスタイルが変形的であり、自然界の息吹を感じさせる気持ちの良いデザインと言えます。全体的に目に優しいこともあり、見ていて癒されるロゴと言えるのではないでしょうか。
トレンドを取り入れてみよう!
実は、ロゴにもトレンドが存在します。その時々のトレンドを生かすことで、面白みが増し、他にはない個性を生み出すことが可能です。ファッション製造業のロゴマークであるこちらは、2014年に流行した編み物をしているような「ニット※」デザインと見事に融合しています。
※参照 : 2014年のロゴマークのトレンド15選 (ロゴトレンド12)
素材の意味を含みつつ、旬な勢いと流動的な動きがあることで、印象的なデザインになっています。落ち着いた色合いのなかに効果的に赤い色を取り入れているところも、魅力的ですね。赤には「生命」「暖かさ」「活動的」などの意味がありますが、こちらのデザインではところどころ欠けているようなかすかな隙間があり、まるで毛糸のような温かみのある印象を与えています。釘のように硬質でありながら、Uの時につながっていて曲線的なシンボルを、優しく包んでいるようです。
見るものに安心感を与えてくれる不思議な調和を感じさせます。余談ですが、なんとなく心臓に似ているような気がしませんか?控えめでありながら、確かな鼓動を感じさせる重要な企業という意味が込められているのかもしれません。
印象的な文字ロゴが映える
文字は瞬時にメッセージを伝えてくれる上に、象徴的な意味を即座に表現することが可能です。ただし、シンボルマークに比べると印象は若干薄くなりがちと言えます。その分、デザインや色合いを工夫して、ユニークに仕上げることがポイントと言えるでしょう。ブランド名を覚えてもらう手法としては効果的と言えます。
こちらのロゴマークは、ドイツの重要な白ワイン用ぶどうであるリースリングのブランドロゴです。ドット柄のような丸い点は、ポップなイメージともに、ぶどうも意味していたことがわかりますね。明るく開放的で親しみやすい橙色が使われていることにより、キュートでユニークな印象を与えます。Wの文字は「wine」の頭文字であり、軽やかな雰囲気も醸し出しています。
実は、飲食店関連のパッケージには、橙色が用いられることが多いです。積極的なイメージはありますが、赤色よりも柔らかく親しみやすいことから、思いやりの象徴としても使われることがあるのです。見ているだけでもなんとなく元気になれる気がします。
欠けているからこそ素敵なロゴ
シンプルでありながら印象的なロゴデザインです。大文字ではなく小文字を使うことで、直線と曲線がうまく組み合わさっています。またeの字がテンポよく配置されていることによって、どことなく人が笑っているようなコミカルな雰囲気を醸し出しています。グリーンには、「調和」「自然」「平和」といった意味が込められれており、自然界でよく見かける色であることから、バランスの取れた協調性のある印象を生み出していると言えるでしょう。背景が白い色であることで、無駄がなくスタイリッシュでありながら、どこか素朴な清潔感のある仕上がりになっていることも見事です。
こちらは情報通信事業のロゴデザインであり、ネットワークを介して人と人とを繋ぐ、シンプルでありながらスッキリしたデザインが生み出されています。よく見ると、2個目のtの字の横棒が少しだけかけています。完璧に整えるのではなく、ちょっとだけ欠けているところが、人間的なあたたかさを感じさせていますね。有名なアップル社のリンゴマークもかじられたデザインになっており、一説には「欠けた部分があることで完璧ではない=未完成であるものを完成させていく」という成長への決意が込められていると言われています。このロゴにもそんな意味が込められているのでしょうか。※アップル社については、単にサクランボと間違われないためという意図もあるそうです。
シンボルマーク+ロゴタイプ=ロゴマーク
これまでロゴと一括りにしてきましたが、実は細く言うと名称が異なります。図形はシンボルマークと言い、文字はロゴタイプと分けられるのです。ロゴマークとは本来、図形と文字が組み合わさって一体化されたものを指します。図形と文字とを組み合わせることで、統合的なイメージ戦略が可能になる理想的な形です。ただし、あまり複雑な意味を込めすぎてしまうとかえって分かりにくくなってしまい、逆に印象に残らないこともあります。バランスよく配置することが鍵と言えます。
「Go Go Fish」という言葉から連想できるように、こちらは釣りがコンセプトの旅行サイトのロゴです。真っ青な海のような背景に、動きのある魚のような図形が配置されており、すぐにでも釣り旅行に行きたくなる楽しい仕上がりになっています。青や白がベースの中、魚の頭のような箇所はひときわ目を引く黄色で配色されており、マップピンのデザインになっているのはナイスアイデア!フレッシュな魚が今まさに釣り上げられようとしているようで、釣りの一番盛り上がる瞬間を切り取ったような面白いデザインです。
英語が不得意な人でも意味がわかりやすい「Go Go Fish」という言葉も良いですね。よく見ると文字部分も、〇、△、□が効果的に組み合わさっており、単純そうに見えて丁寧に仕上げられていることがわかります。釣りに行きたくなるユニークなデザインです。
全ての要素が調和すると魅力が凝縮!
最後にご紹介するのは広告代理店のロゴマークです。流石、広告を生業としている企業のロゴらしく、シンボルマーク・トレンド・文字が見事に融合したデザインとなっています。三角形のモザイクを効果的にあしらった形状は、2015年のトレンドにも見られたデザインです。
※参照 : 2015年のロゴデザインのトレンドを振り返る(ロゴトレンド8)
注意してみてみると、三角形の形が全て同じでなく、微妙に変化しています。様々な形状を組み合わせることで、遊び心のあるスタイリッシュでありながら茶目っ気を感じるデザインに仕上がっていると言えるでしょう。こちらが制作されたのは2015年ですが、段階的なグラデーションタイプの配色は、2016年の最新のトレンドにも似ています。
※参照 : 2016年の世界のロゴデザイントレンドまとめ(ロゴトレンド1)
流行を先取りして取り入れている点も興味深いと言えます。シンボルマークが鋭角的であるのに対して、文字部分は丸みがある小文字が使われており、見た目にきつ過ぎず、全体的にバランスのよい品のあるロゴマークに仕上がっていると言えるでしょう。全体的に無彩色や寒色系が目立つなかに、「幸福」や「温かみ」を感じさせる黄色とオレンジのマークが配置されていることも、印象的です。
一見ポップでカラフルなようですが、さりげなく原色を外しているところも粋な演出。生命力に溢れていますが強烈な印象を与えてしまう原色をあえて外すことで、控えめで協調性のある印象を与えています。この会社なら、広告をうまく使って、製品を引き立ててくれそうと感じさせるところが秀逸です。
良いロゴマークは、ブランドや企業を上手に引き立ててくれます。本質を把握しテクニックを添えて、魅力的で素敵なロゴマークを生み出し、活用してみましょう。
Design : Ampersand Studio ( Bulgaria )
・この記事は制作者に許諾を得て掲載しています。
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