
新しいショップやウェブサイトなど、新規にビジネスを遂行する際に欠かせないのがその象徴となるロゴのデザインです。優れたロゴのデザインは見た目が美しいだけでなく、ブランドをデザインとして具現化したもの。一見しただけで内容やサービスがイメージでき、記憶に留めさせることのできるインパクトのあるデザインが求められます。
一般的に効果的なイラストレーションを取り入れたロゴは、ブランド名や商品名・社名などをデザインしたタイポグラフィーのみのロゴに比べて、人の興味を引き易く、企業やサービスの特徴や主張をスムーズに人の頭の中に植え付けます。また図柄を使用することにから、記憶性をより向上させる成果を持っています。
今回は、シンプルで親しみやすいイラストレーション使って企業やサービスの内容・メッセージを適切に表現したロゴをデザインしている Anastasia Kurilenko 氏の作品をご紹介しましょう。 ※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Anastasia! )
Anastasia Kurilenko 氏は東ヨーロッパに位置するベラルーシ共和国の首都ミンスクを拠点に活動している、フリーランスのグラフィックデザイナーです。シンプルでモダンな各種ロゴの制作や、雑誌・パンフレットのレイアウトデザインに加え、洗練したフォトレタッチを介したグラフィックデザインを多数発表しています。
「親しみやすいイラスト」のロゴが効果的な業種と効果的でない業種の見極め
この事例集のイラストを用いたロゴが「親しみやすい」と評されるのは、イラストが持つ「手描き感」「有機的な曲線」「キャラクター性」が、消費者との心理的な距離を縮めるからです。
ただし、イラストロゴが効果的かどうかは業種によって異なります。カフェ、ベーカリー、ペットショップ、子ども向けサービスなど「親しみやすさ」が購買要因になる業種ではイラストロゴが有効ですが、法律事務所、証券会社、医療機関など「権威性」「専門性」が信頼の基盤になる業種では、イラストが品格を損なうリスクがあります。
シーフード専門のオンラインショップのロゴデザイン作成例

最初に、彼女の代表作とも言える『Chetverg – fish day(Fish store brand)』を見てみましょう。
『Chetverg – fish day』は、魚・シーフードを専門とするオンラインショップです。ベラルーシはソビエト連邦から独立した共和国ですが、ベラルーシにはソビエト連邦時代から受け継がれている古き伝統や言い伝えが多々残っています。その一つが「Chetverg – fish day(木曜日は魚の日)」。ソビエト連邦では昔から毎週木曜日は魚を食べる日とされ、ベラルーシのレストランやケータリングショップでも木曜日は決まってメニューには魚料理だけが挙げられたそうです。時代は変わり現在では木曜日でも魚以外の料理も口にするようになりましたが、「木曜日=魚の日」との認識は今も定着しているそうです。
魚専門のオンラインショップを立ち上げるにあたってショップ名に掲げられたのは「Chetverg(木曜日)」。魚をイメージさせるChetvergという語を用い、「(木曜日だけではなく)毎日が魚の日」というメッセージがこのネーミングに込められています。Anastasia Kurilenko氏はこのオンラインショップのブランディングデザインを依頼され、シンプルかつスタイリッシュで印象的なロゴ・ブランドの開発を目指しました。
ブランドロゴデザインの制作
プロジェクトの開始にKurilenko氏が行ったのは、食材である魚やシーフード、調理機器、食器など、このオンラインショップに関わる全ての映像を収集し、リスト化すること。自分にとってこのプロセスはブランドのアイデンティティーやコンセプトを考える上で大変有効な方法である、と彼女はインタビューで語っています。

出来上がったリストからロゴのモチーフとして選ばれたのは「魚」と「魚のスープをすくうためのレードル」です。この二つのモチーフを組み合わせ、新しい形を創り出す作業が行われました。

ビジュアル的に安定感を出すために、スープから発する蒸気を意味する四つの円を加え、ロゴのシンボルマークが完成しました。下面には、シンボルマークのテイストに合致するフォントでショップ名「Chetverg – fish day」をロシア語で配置。とてもバランスのとれたロゴデザインに仕上がっています。
オンラインショップならではの配慮

オンラインショップということで、Kurilenko氏が最大の配慮をしたのはWEBサイト上での視認性についてです。
サイト上の表記で使われたのは、はっきりと見やすく無駄の無いミニマルスタイルの書体Gilroyフォントで、文面や表現内容に合わせてLight、Extraboldを使い分けています。
アイコンデザインの制作
WEBサイトで重要なエレメントは各種アイコンですが、このアイコンのデザインもシンプルさとショップのオリジナリティーを掛け合わせた洗練されたテイストで出来上がっているのが特徴です。

メインカタログで使われるアイコンは、主に魚介類をラインで表現した要素1と各調理法を表現した要素2の二つの記号を上手に組み合わせて形成されています。

例えば、冷蔵の魚には「魚」と「冷蔵庫の電線を表した波線」、冷凍の魚は「魚」と「雪マーク」、燻製の魚のアイコンには「燻製器」をシンプルに表現した形 と「魚」 が組み合わされていますね。どのアイコンも認識性が高くスタイリッシュかつ親しみやすいデザインです。

WEBサイトや魚料理のレシピを記載したリーフレットに使われる画像にも入念なチェックを施し、フォトレタッチを施したスマートな写真を多数制作。

新鮮でジューシー感溢れるカラフルな食材の写真は、モノクロームのバックカラーを基本としたサイトやリーフレットで一層引き立ち、購買欲をそそらせる効果を担っています。
洗車サービスを展開する可愛い企業ロゴデザイン
次に見て頂くのは、一般的な清掃や車の洗車・タイヤサービスを営むミンスクにある『BOBR-DOBR.BY』社のロゴマークとブランディングデザインです。

BOBR-DOBR.BY社のロゴのモチーフとなったのはビーバーです。大きく丈夫な歯を持ち愛らしいイメージを持つビーバーですが、本能的な行動でダム作りをする動物です。作ったダムは環境を大きく変え、森の活性化を促進することでも有名です。BOBR-DOBR.BY社がロゴのモチーフにビーバーを採用したのは、環境改善を約束する清掃会社というメッセージからでしょうか。

このビーバーを、直線と円形を使って幾何学的に、そしてどの年齢層にも受け入れられやすい親近感溢れるテイストにまとめ、デザインされています。社名とシンボルマークの配置にも視覚的に安定するように手掛けられ、カラーリングに黄色を施した結果、とても目に留まりやすい企業ロゴになりました。
ロゴデザインを中心としたビジュアルアイデンティティの統一


このロゴマークを基本とし、名詞やレターパッド、メモ帳などの全ての紙媒体やウェブサイトのデザインを構成しており、一貫したブランディングを行なっています。
その他のロゴ制作例
Kurilenko氏がデザインするロゴの特色は、その内容を図柄を使ってデザイン性高く簡潔に表現し、誰が見てもわかりやすいものであることです。

モルダヴィアのタイフードレストランのロゴには胡座をかいた人物と麺で構成されています。

チーズとワインのフェスティバルのロゴはブドウとチーズのかけらを組み合わせたキャッチーなデザイン。

アメリカ合衆国ニュージャージー州のハワイ料理レストラン「Splash Poke」には、ハワイ文化と新鮮な魚をモチーフしたロゴが形成されています。

またミンスクのスポーツクラブ「Star」は、クラブ名である星(Star)にボクシンググローブを組み合わせ、躍動感を与えたもの。

水素水製造装置の「AQUALEGIA」には神秘的な人魚が新しいものを手にする図柄のロゴなど、多数の素敵なロゴデザインを制作されています。
イラストロゴの「シンプル化」が運用の柔軟性を決める
この事例集のイラストロゴを観察すると、イラストの描写レベルが「精密なリアル描写」ではなく「シンプル化されたアイコン的な描写」に統一されています。この「シンプル化」が、運用の柔軟性を大きく高めています。
精密なイラストロゴは大きいサイズでは美しいですが、名刺やファビコンの小さいサイズでは細部が潰れます。アイコン的にシンプル化されたイラストロゴは、大きくても小さくても認識できる「サイズ耐性」があります。イラストをロゴに使うとき、「このイラストを1cm角に縮小しても成立するか」を確認する工程が、運用段階のトラブルを防ぎます。
まとめ
ロゴのデザインは、情報を詰め込みすぎることなくできるだけシンプルにしたものが昨今の主流です。伝えたいメッセージを的確なイラストレーションでバランスよく表現したAnastasia Kurilenko氏のロゴデザインを参考にし、認識しやすい優れたロゴを作っていきたいものです。
design : Anastasia Kurilenko ( Belarus )
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