
さまざまなプロダクトやブランドのアイキャッチとなるロゴマーク。ロゴマークは形あるものだけではなく、個人や団体、企業やイベントなどの特定の形を持たないものにも設定されます。むしろ、その時々で変化があるものにこそ、ロゴマークはその真価を発揮できると言えるのかもしれません。
例えば、アーティストがリリースするCDアルバム。毎回趣向を凝らしたアートワークでファンを楽しませてくれますが、必ずしもその方向性に一貫性があるわけではなく、リリースの度にイメージを変えるアーティストも少なくありません。しかし、そのジャケットの中にアーティストを示すロゴマークがあるだけで、他のアルバムやグッズなどとの統一感が生まれ、アーティストのビジュアルアイデンティティを共有することができます。
今回ご紹介するのは、ニューヨークのブルックリンで活躍するフリーランスデザイナーJose Berrio 氏のロゴデザインです。音楽やアートなどカルチャーの発信の地であるニューヨーク。Jose Berrio氏も数多くのバンドや音楽イベントのロゴデザインを経験しています。
アーティストのロゴデザインをする際、必要なのは、そのアーティストの「らしさ」をデザインに反映し、ロゴを目にすることで、そのアーティストのイメージや音楽が頭の中に浮かぶようなデザインを作ることです。Jose Berrio氏がどのようなロゴデザインでアーティストらしさを表現しているのか、実例を見ながら考察していきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Jose! )
音楽関連のロゴデザインが「自由」であることを許される業界特性
この事例集の音楽関連ロゴが「自由」と評されるのは、音楽業界が「型破りであること自体がブランド価値になる」数少ない業界だからです。金融業界で奇抜なロゴは「不安」を与えますが、音楽業界では奇抜さが「このアーティストは独自の表現を持っている」というポジティブなメッセージになります。
この「業界ごとに許容されるデザインの自由度」を認識しておくことは、異業種のロゴを手がけるときに重要です。自由度の高い業界(音楽、ファッション、アート)と、自由度の低い業界(金融、法律、医療)では、同じデザイナーでも「攻める度合い」の調整が必要です。
シンプルな図形配置でデザインするモダンなバンドロゴ

ニューヨークで活躍するバンド「Nuf Said」。JAZZやファンク、R&Bなどを織り交ぜた彼らの音楽は、クールでありながら華がある、アーバンな大人の楽曲。バンド名である「Nuf Said」は「Enough said」を略したスラングで、「言葉は十分」「いい加減にしろ」などの意味を持つワード。言葉よりも音楽。そんな意味を込めたバンド名なのかもしれません。
バンドのロゴデザインは、シンプルかつスタイリッシュ。楽曲同様、洗練された都会の雰囲気を持っています。大きくデフォルメされたアルファベットは一つ一つを見れば、何の文字がわからないものもありますが、文字が連なることで、バンド名を難なく読ませることができます。大胆なアレンジとコントラストの強い配色が、遊び心とエッジの効いたソウルフルな歌声を連想させ、バンドのイメージと見事に重なります。
ガツンとくる骨太ロックを表現するエモーショナルなロゴデザイン

コロンビアのロックバンド「DIAMANTE ELECTRICO」。ボーカルがウッドベースをかき鳴らしながらアグレッシブにマイクに向かうこのバンドは、まさに衝撃的。オールドロックの影響を受けながらもラテンの熱い情熱も持つ彼らの楽曲は、疾走感のあるギターサウンドと厚みのあるベースラインを兼ね備えた新たなラテンロック。そんな彼らのアイデンティティをあらわすロゴデザインは、粗削りなアウトラインを持つ手書き風のタイポグラフィ。「I」の文字をイナズマのように見立て、文字数の多いバンド名のアクセントにしています。

ラテングラミーでベストアルバム賞を受賞した彼らのアルバム「B」。このアルバムのアートワークもJose Berrio氏が制作しています。
ロゴマークのイナズマをアレンジし、「B の形状を象っています。ロゴマークとの連携が取れたデザインと、メラメラと燃える色とりどりの炎が、熱い彼らのサウンドを彷彿とさせ、「DIAMANTE ELECTRICO」らしさを強調しています。
繊細でスケール感のあるサウンドを感じさせるバンドロゴデザイン

美しく大きなスケールを感じるサウンドが特徴的なバンド「VAN SOEST」。ロゴデザインは、繊細で型にとらわれないスタイルをシンプルな構図で表現しています。メッセージ性の強い歌詞と心に染みわたるサウンドは、ロジックな側面と抽象的な側面の両方を感じさせます。線が細いジオメトリックなサンセリフの中にある、図形化された「E」。これは、そんなバンドの雰囲気をイメージしているのではないでしょうか。
自然と文化の融和を描くバンドロゴデザイン

「El Cuatro」というバンドのロゴデザインです。「Cuatro」とは、ラテンアメリカに古くから伝わってきた弦楽器で、小型のギターのような楽器。軽やかで明るい音色が特徴です。土地に根付いた音は、人々の心に自然と共鳴し、やさしく馴染むものです。バンド名を木に見立て、枝や葉を伸ばすこのロゴデザインは、そんな土着のメロディを大切にしているバンドの精神をあらわしているのかも知れません。
音楽がもつ「楽しさ」を表現するロゴデザイン

「La Papa Sound」 は、イベントなどの機材設置を行う音楽プロダクション。さまざまなアーティストやイベントと関わりがあるこのプロダクションのロゴは、円弧を持つ縦長の図形をベースにプロダクション名を表現しています。さらに、リズミカルに動くモーションロゴが採用され、見ているだけで心が弾むような楽しいロゴに仕上がっています。音楽が持つ、人の心を躍らす魅力を十分に表現した躍動感溢れるロゴデザインです。
バンドのロゴが「アーティストの音楽性を予告する」視覚的なサインとして機能する
この事例集のバンドロゴは、ロゴの形だけで「このバンドはどんなジャンルの音楽を演奏するか」が予想できる設計になっています。荒々しい手描きのロゴはパンクやハードロック、幾何学的で洗練されたロゴはエレクトロニカやインディー、クラシカルなセリフ体はジャズやフォーク。
音楽を聴く前にロゴだけで「自分の好みに合いそうか」を判断できる。これはロゴが「フィルタリング機能」を果たしている状態です。ターゲットに「自分向けだ」と瞬時に認識させるシグナルとしてのロゴの機能は、音楽に限らずあらゆるブランドに共通します。
まとめ
音が聞こえないデザインと、形が見えない音楽。この二つは切っても切れない補完関係にあります。単体で存在するよりも、互いを補い合うことで、ずっと人の心をワクワクさせるエンターテインメントに変わります。
ロゴデザインもその一翼。目に見えない音楽やアーティストのイメージを描き出すことで、イメージをアイコン化し、視覚的イメージを補っています。こうした音楽に関するロゴデザインは、「意味」や「モチーフ」に固執せず「イマジネーション」に訴えかけるデザインが多いのが特徴です。形のないもののロゴデザインをする時、そのイメージを的確に捉え、それをデザインとしてアウトプットするスキルが重要なのではないでしょうか。
design : Jose Berrio ( USA )
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