皆さんはデザインにおいてどの様な事を重視しますか?見た目のインパクトや美しさでしょうか?自分だけの感覚や、キレイに飾り付けるだけのデザインであれば視覚的な部分を重視しても良いかもしれません。しかしロゴのデザインともなれば、クライアントである企業イメージや戦略的な意図などをうまく表現することが、重要なポイントになるのではないでしょうか。
特にロゴのデザインは、余分な要素を削りよりシンプルに、そして戦略的な要素も分かりやすく伝わるようなものでなければ、良いデザインとは言えません。Ozan Karakoc 氏はこの条件をうまく表現するデザイナーの一人と言えるでしょう。今回は、そんなOzan Karakoc 氏の手がけた数々のデザインと、ブランディングをご紹介していきます。
Ozan Karakoc氏はロサンゼルスを拠点としているデザインスタジオ、Ozan Karakoc Design Studio, Inc.の代表を務めています。今までにも、錚々たる有名企業へ視覚的かつ戦略的なデザインを提供し続けています。代表的なものでは、カールスバーグ、ペプシコ、ゴディバ、トルコ航空と、世界的にも有名な企業ばかりです。そんなOzan Karakoc Design Studio, Inc.の数々の素晴らしいデザインの一部をご紹介します。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Ozan Karakoc! )
戦略的モチーフと、秘密のロゴを掛け合わせたデザイン
まず始めにtalaton groupのロゴデザインを見ていきましょう。talaton groupは、小規模企業の資本調達を支援するコンサルティング会社です。深いネイビーをベースカラーに使用し、差し色である、ゴールドに寄せたイエローとの色の濃淡差が目を引くデザインになっています。
このロゴ中にあるモチーフに「カギ」が含まれています。その理由としては、起業家の潜在力と夢の扉を広げる鍵となる。という意味合いが込められているそうです。そしてロゴに隠されているアルファベットにHとMがあります。これは、創設者であるハーバートとミシェルのイニシャルを表しています。この、隠しイニシャルの使い方も、とてもユニークでセンスを感じられます。
カードや書類などの使用例もシンプルながらも上質なブランドイメージが伝わってきます。
封筒のデザインでは、内側に差し色のイエローを使用されており、視覚的にも、とても目を引くデザインに仕上がっています
企業の想いを表現する、ブランドのデザイン
次に、FLOという会社のロゴデザインを見ていきましょう。FLOは水の圧力や流量などをチェックする、最先端のホームシステムのサービスを取り扱う企業です。緊急時の水道などのトラブルに役立っています。「水」と大きく関わる企業ですので、水滴のような、または水の流れを表すように、「水」をイメージさせるシンボルが存在しています。色味は、水を表す深いブルーを基調に、差し色の明るめのグリーンがとても目を引きます。
このブルーとグリーンの組み合わせは、水と自然に溢れた地球をイメージさせてくれます。また、この優しい色合いからはエコの要素も感じられます。これは企業の、限りある資源を大切にしたい!という思いが組み込まれているようにも思います。この様に一つのシンプルなデザインにも、しっかりとブランドの要素が含まれています。
アイテム展開としては、文具や包装、ポスターやスマートフォンやタブレットなどで利用するアプリケーションなど、さまざまなものへと展開していきます。その他、ユニフォームワンポイントとしても、とてもマッチしています。余分なものを極力省いたシンプルなデザインの中に、しっかりと企業のイメージも組み込まれた良いロゴマークですね。
視覚で五感を刺激するロゴデザインとブランディング
ブランディングへ大きな影響を与える役割がデザインにはあります。もしそれが食品などの口にするものだったら?初めて口にするものであれば、「おいしそう!」「食べてみたい!」と思わせる様なデザインがポイントになります。初めは、「デザインが素敵だから」と、いう理由で手にした商品でも、美味しければ消費者はリピーターとなるでしょう。デザインは商品と消費者を繋げる、大切な役割を持っています。
Caffeinatedのロゴデザインについて見ていきましょう。今まで紹介してきましたロゴデザインとは違い、流れるような文字が特徴的なロゴになっています。カラーは、差し色などもなく1色のみと、とてもシンプルですが、スタイリッシュなデザインになっています。
この企業に使われている広告デザインはとてもユニークな表現をされています。
Caffeinatedはコーヒーを取り扱う企業であるため、印刷したロゴデザインの形をカッターナイフでくり抜き、実際のコーヒー豆を散りばめています。この表現で、一目でコーヒーを取り扱う企業だと言う事がイメージできます。そして上質なコーヒーの深い香りや、美味しそうな味さえも想像させてくれます。この様にデザインには商品の良いイメージを膨らませ、売り上げに繋げるという大事な役割があるのです。ビジュアル的にも、とてもこだわっていることも分かります。ただコーヒー豆の画像を切り抜くだけのデザインであれば、パソコン上でも出来るのですが、手作業でロゴをカットしたシートを作り、実際のコーヒー豆を使用したことで、手作業ならではの凝ったデザインになっています。わざと飛び散っているような箇所などもあり、とても味のある表現方法になっています。
他にも、コーヒーカップや、Tシャツ、トレーナーなどのアパレルへの展開も想定しています。シンプルですがスタイリッシュな面も兼ね備えているデザインなので、さまざまな商品にのせても良くマッチしています。カラーもコーヒーをイメージさせるような深いブラウンに、少しミルクを加えたような優しいベージュという同色の濃淡が、深みを感じさせます。広告表現のユニークさも是非参考にしたい作例のひとつです。
建物の原点を感じさせる、ミニマルなロゴデザイン
Atelier Aidaは、建築家・都市デザイナー・不動産業界などに対してハイクオリティな建築イメージを作成する、ロンドンを拠点としたデザインスタジオです。規則正しい図形がシンメトリーに並んだ、シンプルで安定感のあるロゴデザインになっています。
この図形のようなサインは、点と点を繋ぐ、物語を語るビジネスアプローチを表現しているそうです。建築や不動産業が関わっているからでしょうか?どことなくこのロゴデザインからは、建物や部屋の間取りの様な印象も感じ取れます。
ロゴを規則的に並べ、背景として使用しても印象的な仕上がりです。色も黒一色と、とてもシンプルですが印象に残るデザインですね。文具やカード、封筒等、紙媒体への展開も行なっています。
図形のようなロゴは単体で使用してもインパクトがありますね。
古き良きデザイン、伝統へのオマージュ
次に、Ensoという会社のロゴデザインを見ていきましょう。Enso社は、企業の幹部に向けたコーチングサービスを提供している会社です。ダブリン、ブカレスト、イスタンブールと3つの拠点をもっています。
ロゴデザインには、白と黒のベースに差し色で赤が使われています。この配色は、どことなく古き良き日本を感じ取ることが出来るのではないでしょうか? このデザインの制作行程のアイディア出しは、会社名の「Enso」という、文字にも入っている、アルファベットの「O」。
これは筆で書いた力強い丸をイメージしています。そして「O」の上に赤色の小さな四角。これは日本の判子をイメージしたものだそうです。この様に伝統的なデザインやイメージをオマージュして、現代のデザインとして形にすることは、とてもユニークで、面白い表現方法ですね。
文具や名刺などの紙媒体への展開もしています。こちらも、シンプルなデザインになっていますが、白と黒の中に、まるで判子を押したように入った差し色が、とても存在感のあるデザインです。
見た目のインパクトや、美しさなどの視覚的な要素と、企業のイメージや、その後の売り上げに繋がるような営業ツールとしての戦略的要素がロゴデザインの重要なポイントになります。ブランディングにとって、デザインは大きな役割を果たします。デザイナーは様々なアイデアを出し、より良いブランディングに繋がるようなデザインを作成していく事が、大切になってきます。それはデザイナーにとって、腕の見せ所でもあり、知恵の見せ所でもあります。デザイナーとしては、クライアントに心から喜んでもらえるような、良いデザイン提供していきたいものですね。
design : Ozan Karakoc – Ozan Karakoc Design Studio ( USA )
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