競争が激しいグラフィックデザイン業界で、豊富な顧客を抱え、コンスタントに素晴らしいデザインを制作・発表し続けていくことは難しいものです。また、グローバル化が進むにつれ、デザインの世界でも国境間の線引きが曖昧になりつつあります。この現状に対応するため、グラフィックデザインの会社/スタジオの形態も、ひと昔前とは随分と変わってきました。
国内の市場はもとより国際的な市場にも大きく手を広げ、事業所を各国・各地に持ち、それぞれ優秀なデザイナー陣を抱え、即座にインターナショナルな対応ができる会社/スタジオが年々増えてきています。
今回紹介するのは、本社をイギリスのロンドンに置くDekoRatio Branding & Design Studioのハンガリー : ブタペスト事業所で制作されたロゴデザインです。
DekoRatio Branding & Design Studio は、独創的なデザインでビジネス戦略を攻めの姿勢へ導くエキスパートです。クライアントである対象の企業や商品・サービスについての徹底的なリサーチを実行し、ロゴやイラストレーション、タイポグラフィーの制作を行なっています。また、美しく強固で、一貫したビジュアルアイデンティティを創造することを信条としています。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, DekoRatio Branding & Design Studio ! )
ハンドメイドスーツブランドのロゴ作成例
Galamb Tailoring社はブタペストで最高の品質のハンドメードのスーツを提供するメーカーです。名称の『Galamb(ハンガリー語で「鳩」の意味)』は創業時の場所Galamb Streetより由来しています。
Galamb Tailoringブランドを語る一番大きな特徴は、何と言っても「100年以上に渡り、常に伝統的な仕立てで高級スーツを作り続けている歴史的なメーカーである」ということ。また、どのGalamb Tailoringのスーツにも約5000本のステッチが施され、1着のスーツ完成に数ヶ月を要しながら、素材選択、ディテール、製法全ての面において一切妥協することのないその製造理念もこのブランドの持ち味です。
ブタペストの市内の特別店のオープンに際し、Galamb Tailoringの全体的なブランドの変更と、今まで持続していたスタイルや伝統、特徴をより一層強化させ、視覚的に反映させたアイデンティティの強化プロジェクトをDekoRatio Branding & Design Studioに依頼しました
まずはロゴマークですが、Galamb Tailoring社を物語るスーツのジャケットの襟と、名称の『鳩』が飛び立つ姿を組み合わせて作成されています。
幾何学的に緻密に計算されて作り出されたこのマークと繊細で滑らかな書体を組み合わせて作られたロゴデザインは、時が経っても変わらない品位や伝統を感じさせ、同時に現代の風潮に見合ったシンプルで美しいデザイン担っています。
サブのロゴマークには飛び立つ鳩の羽がモチーフ。こちらも丁寧に描写して作られており、きちんとした仕事を提供する一流店の風格を感じさせる様相ですね。
カラーリングは黒、グレー、白色のモノトーンで展開。漆黒と重厚感溢れるグレーの組み合わせは、高級品を扱うブランドに相応しい、シックでスタイリッシュなカラー展開です。
Project by: Dekoratio Branding & Design Studio
Visual identity & Photography: Kevin Harald Campean
アイスバーショップのエキゾチックで爽やかさ溢れるブランディング
次は、ANJUNA ICE POPSのブランドデザインです。ANJUNA ICE POPS(ANJUNAアイスバー)は、旅することを愛する二人の青年 Milán Szabó氏とJózsef Szalay氏によって作られたブランドです。
二人がインドを旅している最中、ゴアビーチの美しさに魅了され、アイスバーのショップを作るアイデアが生まれたことがこのブランドの起源です。彼らにとりわけ強い印象を与えたのがゴアビーチの中のANJUNAゾーン。ここから、このブランドの名称が決定されました。
ブランディングデザインの依頼を受けたDekoRatio Branding & Design Studioは、インドの聖なるイメージをベースにプロジェクトを始めます。ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、象はインドの神聖な動物で、同時に「強さ」「明晰さ」「幸運」を意味します。このANJUNAプロジェクトでは、宗教的なシンボルではなく、インドの象の持つ三つの意味をブランド・ロゴのコンセプトとし、多くの人に親しみやすいキャラクターを創造することが焦点となりました。
丸みを帯びた単一のラインで作られた、アイスバーを手に持っている象のロゴマークは、どの曲線も正円の一部を使って作られています。
組み合わされたANJUNAとICE POPSの文字も曲線状に配置され、全体的に優しく柔らかい雰囲気を醸し出しながら、視覚的に大変安定したものとなっています。また商品のカラフルなアイスバーが引き立つように、ロゴは最小のカラーリングで制作されていることも特徴の一つです。
一緒に作られたピクトグラム(情報や注意を示すために表示される視覚サイン・絵文字)もメインのロゴマークと同じモノライン(単一線)で作られており、一貫したデザイン性が感じられるように作成されています。
また、このプロジェクトではアイスバーショップのインテリアも担当しています。インテリアのコンセプトは、『サーファー』と『ビーチ』がキーワード。ロゴをはじめとする統一されたすべてのデザイン媒体と、爽やかな雰囲気にデザインされたインテリアの上手な融合は、消費者へ認知されやすく、親近感を覚えてもらうことに大きく貢献しています。
DESIGN BY Dekoratio Branding & Design Studio
Graphic Design: Szani Mészáros
Interior Design: Zsófia Nagy & Szani Mészáros
Photography: Kevin Harald Campean
Animation: Richard Woth
www.dekoratio.hu / www.dekoratio.co.uk
健康志向のジャム・ケチャップ・マスタードのロゴ&ブランディング制作
最後はINULINUブランドのプロジェクトです。INULINUはイヌリン(植物繊維の一つ)の豊富さで有名なエルサレム・アーティチョークから作られるマスタード、ケチャップ、ジャムのブランドです。「栄養価の非常に高いエルサレム・アーティチョークのエッセンスを、日常の食生活に手軽に取り入れることのできる食品」というのがこのブランドのベースコンセプトです。DekoRatio Branding & Design Studioは、食生活を豊かにし、健康的にも優れているこの食品の価値を消費者に認識・浸透してもらいやすくすることをテーマとして、グラフィックデザイン及びパッケージデザインを試みました。
ロゴタイプの『INULINU』は、「ライン」と「ドット」の組み合わせで作られた遊び心満載のデザインですね。
パッケージのラベルデザインは、製品のシリーズによって異なっています。
ノーマルタイプのジャム・マスタード・ケチャップには原料の素材をシルエットとしたシンプルなイラストレーションを。
Bio(有機農産物)タイプには水彩画風に丹念に描き込まれたものを使用しています。
いずれも身体に優しいナチュラルフードであることを前面に出しつつ現代的なグラフィックセンスに富んだデザインとなっています。
Design by DekoRatio Branding & Design Studio / Flora Seres / Ágnes Beke
Photos by Kevin Harald Campean
Animation by Richárd Woth
www.dekoratio.hu / www.dekoratio.co.uk
まとめ
ロンドン本社では、全てのプロジェクトにおいて、最初の打ち合わせからプロジェクトの納入までプロセスを監理し、制作状況の確認やクライアントへの経過報告を行なっています。
『本社・事業所』の形態を取るデザイン会社/スタジオの利点は、本社が事務管理をし、事業所は純粋にデザイン活動のみに打ち込めることにもあります。今回見て頂いたブタペストの事業所が次々と優秀な作品を生みだしているのは、この事業スタイルも関係しているのではないでしょか。
design : DekoRatio Branding & Design Studio ( Hungary / United Kingdom )
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