皆さんは、企業やサービス、また商品のブランドのロゴをデザインするとき、どんなプロセスで作業をしますか。イメージ、コンセプトの設定をはじめとして、ネーミング、形、カラーリング、タイポグラフィなど、考えなければいけないことは沢山あります。
企業のブランドイメージに合致した、人々の記憶の中に残るようなロゴデザインをすることは、『ブランディング』において最も大切な要素です。出来上がったロゴは、名刺や封筒、webサイトやパッケージ、広告、サイン等、あらゆる宣伝媒体に使われるため、企業・商品のイメージやそのマーケティングに大きな影響を与えます。
企業・商品・サービスそのものの質が消費者・顧客への購買意欲を満たす一番の条件であることは言うまでもありませんが、その質を証明する一つのエレメントがこのロゴデザイン。いわば、イメージやコンセプトを凝縮した企業・商品の顔なのです。
世界には沢山のグラフィックデザイナーが、日々精進してロゴデザインの作成に取り組んでいます。今回は、中国の上海に拠点を置くグラフィックデザインスタジオ「Ori Studio」の作成事例を見ながら、ロゴの役割について考えてみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Ori Studio! )
ハイクラス向けのサービスを展開する不動産会社のロゴマーク
Ori Studioは 、Xuechen FanとMaxim Cormierの二人のユニットで2015年に設立されたグラフィックデザインスタジオです。スタジオの名称の『Ori』は、『orientate(方向付ける・オリエンテーション)』から由来。これはまさに、ブランディングに効果的な場所と方向を見出し、明確な視覚的コミュニケーションに展開させながらブランド価値を高めていく、という彼らのデザインプロジェクト全般に対する姿勢を表しています。
まず最初に見ていただくのは、イギリスのロンドンに本社を置く、不動産マネージメント/アパートのネットワークシェアリングの会社です。Habica社は、管理している住宅・不動産をリフォームすることで、快適なライフスタイルを経験できる短期宿泊施設へとグレードアップ。それをハイクラスな人たちに利用してもらうサービスを展開しています。
Ori Studioは、「どんなことにも対応し決戦に打ち勝つ」というHabica社の企業コンセプトよりアイデアを得て、このプロジェクトのデザインキーワードとして『鋭いコントラスト』と『ソフトバランス』を設定し、デザインを始めたそうです。
Habica社の頭文字でもありhouse(家)を表す『h』を、力強いイメージに変形させて作られた人目を引く明るいオレンジ色のロゴマークは、様式化された家を表しています。このロゴマークをベースにした、柔軟で遊び心満載なグラフィックパターンもデザイン性に富み、 複数の媒体でセンス良く使用されています。
知識を共有するコミュニティーをシンプルに表現したロゴマーク
Neihangは上海にある知識共有コミュニティーです。様々な分野やセクションを有し、専門家と意欲的な学生との繋がりを育む活動を繰り広げています。
Ori Studioは、ロゴデザインの最初のアプローチとして、「指導教官」と「フォロワー」の繋がりを象徴することをコンセプトと設定しました。
二つの均等なパーツが絡み合い、最終的にNeihangの頭文字でもある『n』を構成して出来上がったロゴです。幾何学的に円を配置よく上手に組み合わせ、Neihangの活動そのものを表現したロゴマークですね。
ロゴタイプには、マークとの調和を満たすサンセリフ系のシンプルなフォントを採用。可視性にも大変優れています。基本カラーはビビットなオレンジ寄りの赤。
このコミュニティーを反映するような、多様なカラーパレットを使用した、親しみやすいイラストレーションで展開されるそれぞれのデザイン媒体も、非常に興味深いものに仕上がっています。
Ori Studio自身のCI計画・コーポレートロゴ作成例
こちらはOri StudioのCI (Corporate Identity、コーポレート・アイデンティティ)計画の事例です。
CIとは直訳すると「企業の自己同一性」。企業の個性や特徴を明確に表示し、イメージの統一を図るための戦略を意味します。企業の理念やコンセプト、ロゴ、またコーポレートカラーなど企業を表現するものは全てCIに含まれます。一貫したCIを使用することでブランドのイメージが形成され、強固なブランディングが創造されるのです 。
自らのCI計画をするにあたり、Ori Studioは自分たちのものづくりに対する精神を再認識することから始めました。彼らの目標とするデザイン哲学は、機能主義でモダニズムを提唱し、合理的な視覚的コミュニケーションと大胆かつシンプルなバランスのとれた美の追求を制作のモットーとしています。
これらのメッセージを反映して作られたのが、余計なものを全て取り払い、最低限の要素で構成されたロゴタイプです。
ロゴをベースとして、名刺、封筒、レターヘッド、各種パッケージデザインに展開し、Ori Studio社の合理的で洗練されたイメージを構築しています。
カラー展開は白と黒のモノクローム。「純粋さ」や「シンプル」をイメージさせる白色と「高級感」や「威厳」をイメージさせる黒色のOri Studioのコーポレートカラーは、彼らの制作理念を忠実に映し出したものと言えるでしょう。
企業のイメージ・コンセプトを正確に把握し、そのエッセンスをシンプルな形態でロゴデザインに反映させるOri Studioの作品を見てきました。
かのレオナルド・ダ・ヴィンチは、「究極の洗練さはシンプルであることだ」という言葉を残しています。無駄な修飾を削り落とし、シンプルなデザインを通して企業の理念を表現するOri Studioの制作プロセスは、ロゴデザインの基本であると言えるのではないでしょうか。
design : Ori Studio ( China )
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