チラシデザインは0.5秒が勝負!
販促効果などがあるチラシ。実は0.5秒で判断されるのをご存知ですか?情報が溢れている現代において、人間は見た瞬間から0.5秒でそのチラシが必要か不必要が判断しています。要らないなら、即ゴミ箱行きです…。たくさんあるチラシの中から、目にとめてもらうためには幾つかポイントがあります。魅力的なチラシデザイン例をもとに、チラシ制作のコツをご紹介しましょう。
今回は、ニュージーランドのグラフィックデザイナー Levi Minnell さんの作成例を元に解説したいと思います。( Thank you Levi !! )
一番大切なのは最初のインパクト
チラシにおいて一番重要なのは、まず「見てもらう」こと。その為には、インパクトが大切です。こちらのチラシでは、キャッチコピーを堂々と真ん中に掲載しています。とてもわかりやすいですね。加えて、今にも走り出しそうなスポーティーな女性の腕がキャッチコピーにかかっています。その為、パッと見ただけだとどこか違和感を覚えます。「なんだろう?」と人間の好奇心を刺激する工夫が絶妙です。
違和感の正体に気づくと、片腕が前に出ていることでチラシ全体の躍動感が増しているという二重の効果を感じます。「POWER YOUR PASSION(あなたの情熱をパワーに)」というメッセージを画像でもわかりやすく伝えている一例です。基本的に爽やかな白色の背景の中に、青・オレンジ・黒という3色だけを使ってうまく情報を盛り込んでいます。シンプルな作りながら、人目を引きつけるのは、中央のキャッチコピーと画像の組み合わせを計算して作っているからと言えるでしょう。左上に「FITNESS & HEALTH EXP」というリードコピーが見られますが、全体を爽やかな調子でまとめ、アクティブな女性を広告塔に使っていることで、言外に美容効果のメッセージも込められていることがわかります。シンプルながら、よく計算して作られている広告の一例です。
必要な情報だけに絞る
こちらの中央に大きなキャッチコピーを効果的に使っています。黒い背景の中に、白いリボンが浮かび上がることで、効果は抜群です。メッセージも「WEDNESDAYS AT THE LOUNGE(ラウンジにて水曜日)」と、何だろう?と詳細を確かめたくなる上手い言い回しをしています。
どうやら音楽のイベントがあるらしく、その日付・出演者・場所など、必要最低限かつ十分な情報がコンパクトに記載されています。このチラシデザインのように、チラシに込める情報は、必要な分だけに極力削ぎ落としたほうがインパクトが増します。
加えて、中央のキャッチコピーの背景に動きのあるリボンデザインを起用することで、単調になりがちな画面の中に、動きを生み出して堅苦しくなりすぎないポップな印象に仕上げている点も秀逸です。モノトーンは人目を引きますが、やや重苦しい雰囲気を生み出しやすい配色です。しかしこちらは、イラストをうまく組み合わせて弱点を補いつつ、非常に力あるデザインに仕上げています。2色だけでシックに仕上げている点は、上品さも醸し出していると言えます。大人に訴えかけるチラシと言えるでしょう。
写真は有効なツール
こちらも白黒のモノトーン仕上げですが、文字だけのチラシとは随分印象が異なります。内容が違うことはもちろんですが、写真を使った効果の違いが大きいです。このチラシは真ん中に斜線を入れることで枠線効果をもたらしており、上下をうまくくぎって2つの情報を1枚のチラシにまとめています。
上には人物写真、下には建物の写真を使用していることで、同じモノトーンでも与える印象が違ってくる点もよく計算されていると言えるでしょう。字体も分けられており、たくさんの情報を詰め込まれているにも関わらず、全体的な印象は非常にスッキリしています。このように、写真はうまく利用すれば非常に有効なツールとして機能します。人物が白ジャケットであることで、画面全体が明るい印象を与えている点も注目すべき工夫です。カラーを捨てて、あえて白黒で仕上げている潔さが、画面全体に心地よい調和をもたらしています。
情報量が多いときは形式を揃えスッキリまとめる
こちらのチラシは、少し情報量が多めです。それにも関わらず全体的にスッキリまとまった印象に仕上がっているのは、形式を揃えていることによる効果と言えます。よく見ると、文字の先頭はすべて揃っており、使われているフォントにも統一感があります。また、文字はすべて横書きで斜体などに崩さず使用しているのに対し、図形部分にさりげなく同じ角度の斜線を用いることで、カッチリしすぎない適度な抜け感を演出しています。このチラシですと、キャッチコピーに当たる部分は大きな写真の部分と言えるかもしれません。チラシの半分近くを占める大きな料理の写真を見て「美味しそう」と五感を刺激したところで、「20%off」というメッセージが目を引きます。
実は相手が無視できないチラシというのは、「ベネフィット」を上手く伝えられるチラシと言い換えることができます。そのサービスを使うことで得られる効果や効能にあたる「ベネフィット」を真っ先に伝えることで、相手はそのチラシをじっくり読もうという気にさせることができるのです。こちらは「ベネフィット」が一瞬で伝わるので、細かい文字で補足を入れても読み進められるように工夫されています。
詳しく解説すると、情報量の多いチラシには5つの項目が存在します。まず目を引く「キャッチコピー」、次にその情報を膨らませる「リードコピー」、さらに詳しく説明する「ボディーコピー」、そして効果を約束する「オファー」や必要ならば住所情報などの「レスポンスデバイス」が加わることがあります。このチラシは、5つの項目をすべて盛り込みながらも、ゴチャゴチャさせず、スッキリした印象にまとめている好例となっています。
イラストだからこその遊び心
情報を正確に伝えるなら、写真が効果的です。見たままをありのままに正しく伝達できる力があります。対して、イラストだからこそできる遊び心があることも事実です。こちらの2つのチラシはともにイラストを面白く使っています。
向かって左のチラシは、写真をもとにしていますがあえて水色のイラストタッチで描かれていることで、逆に深みを増していますね。基本的に白と水色の爽やかな配色の一番下に、あえて手書きの文字を書き加えていることで、人間味を感じさせる効果を生んでいます。
向かって右のチラシは、イラストならではの誇張されたデザインを効果的に用いることで、強烈なインパクトを生み出しています。これを写真でしてしまうと、上滑りしてしまうかもしれませんが、個性豊かなイラスト風味の画像を使うことで、怖さと可愛らしさがマッチングした他にはないオリジナル性に溢れています。また、基本が黒い影のある白い文字の中に、一部緑色の文字を入れる加工をしている点も目を惹きつけられます。HALLOWEENのイベントのチラシであり、モンスターの人間に媚ない突き放した魅力が、逆に人々を魅了している仕上がりです。
写真を使うよりも、むしろ豊かなメッセージ性を伝えれらるのがイラストの面白いところかもしれません。効果的に使うことで、より複合的な意味合いを込めたチラシに仕上げることができます。
吹き出しという面白さ
今までのチラシに比べると、こちらは大変カラフルな仕上がりです。カラフルなコミックのキャラクターがひしめき合っている中で、情報を問題なく拾えるのは、吹き出し効果が大きいでしょう。
中央の部分の3つの吹き出しの中に、このチラシが意味する大切な情報が、ポップに収まっています。一番知りたい詳細を瞬時に拾えるので、キャラクターが溢れている絵柄は、むしろ会場の熱気を伝えるような、見ていて楽しい効果的な背景に収まっていると言えるでしょう。情報を効果的に伝えたいなら、文字や絵そのものの力に頼るだけでなく、吹き出しなどのデザインと組み合わせると面白いと言えます。わかりやすいだけでなく、キュートで迫力ある独自の世界観を構築することも可能です。
こちらのアニメ風のカラフルな色合いの中に、漫画から飛び出してきたような吹き出しが堂々と活用されていることで、見ているだけで楽しい世界観を演出しています。DJのイベントであることを忘れないために、さりげなく現実的なヘッドホンが添えられている点が、逆によいアクセントになっていると言えるでしょう。リアルと虚構を上手く組み合わせている、面白いチラシの一例です。
チラシの字体を工夫してみよう
こちらのチラシはキャッチコピーの文体を上手く活用していますね。ストリート感のあるグラフィティ風の文字を使うことで、豊かなメッセージ性が伝わってきます。
最初にお伝えしたとおり、キャッチコピーは重要です。文字そのものの文体を工夫すると、より注意を引きつけることが可能です。チラシデザインにおいて、キャッチコピーの配分は紙面の3分の1~4分の1以内がベストとされています。この製作者は、基本を上手く抑えていると言えるでしょう。
また、人間の自然な視線の導線であるアイフローも基本に忠実に活用していると言えます。アイフローは横書きなら「Z型」、縦書きなら「N型」に作成することが理想とされています。この形は、人間がストレスを感じることが少なく、一番自然に情報を収集する目の動きだからです。このチラシは、激しいダンスを披露する男性の写真を組み合わせることで、理想的なZ型に仕上げています。情報も読み取りやすく、素敵なチラシデザインです。
あえて男性の写真がぶれていることや、画面全体の色調を暗めにしていることで、男性的でアグレッシブな効果を生み出している点も見事です。暗い色は重たくなりがちですが、効果的に使用すると、カッコイイ重厚なデザインに仕上げることもできます。バランスが大事ですね。欲張らず、アクセントをブルーで揃えているのも良い感じです。
背景が物語性を生み出す
これは、DJのイベントチラシです。ゲストDJそのものに集客力がありますので、堂々として親しみやすい笑顔の人物をしっかり強調しています。このチラシに深みを持たせているのは独自の背景と言えるでしょう。
どこかの大都市の前に、印象的なザク切りのフェンスが配置されています。フェンスがあることで、平面の画面に奥行が生まれるだけでなく、一筋縄でいかなそうなワイルドなストーリー要素を付け足している点が洗練されています。もしかしたら、このDJの経歴を暗示する効果もあるのかもしれませんが、これらの背景があることで、1枚のチラシが絵画のように、独自の物語性まで醸し出しています。DJの人柄まで伝えているかのような興味深い広告に仕上げられていますね。
よく見ると、文字部分の背景色も単色ではありません。幅広いペンキをひと刷毛塗ったかのような黒字は、絵の具のような塗りムラを残していることで、今塗ったかのような瑞々しさを演出しています。絵の具が飛び散ったかのような細かい飛沫があるところも芸が細かいと言えます。チラシ下部の白っぽい背景も、年月を経過した壁のような硬質でレトロな装飾がなされており、全体的に非常に手が込んでいることがわかります。
シンプルに仕上げることも有効な手段の一つですが、このチラシのように、さりげない作り込みを加え精緻に仕上げることも効果的です。強調されている人物も、より目立たせることができますので、集客効果の高まりが期待できます。
内容に合わせてチラシの色調を変えてみる
このチラシは、スタイリッシュでありながらどこかレトロなあたたかみを感じます。ポイントは、全体的に茶色っぽく鮮やかさをあえて落として仕上げられていることでしょう。
紙媒体は、基本は白背景に黒文字を活用することが多いです。人が読みやすいからです。白抜き文字は目立ちますが、その分文字だけが強調されすぎてしまう恐れがあります。
しかし、工夫の仕方はあります。このチラシのように全体の色調をレトロ風味に統一することで、派手すぎないシックでオシャレな雰囲気に仕上げることもできるのです。色調が鮮やかだと、刺青をしたド派手でゴージャスな女性の雰囲気と相まって、やや人を選ぶデザインになってしまいそうです。茶色はアンティークな風味をプラスしてくれるので、年月が経過して日焼けしたポスターのようなどことなくノスタルジックは雰囲気が加わっています。
ロゴとの組み合わせもGOOD
こちらはロゴマークが上手く融合しているチラシです。しっかり見てみると、実は画面の後ろにたくさんの人の写真が使用されています。このDJイベントに出演する人々でしょうが、あえて文字やロゴの後ろの背景に使うことで、宝探しのような楽しさを加えるデザインに仕上がっていますね。人物写真の上に躊躇なく文字を配置することで、文字情報が強調されています。
ロゴ単体で見ても、完成されたデザインです。それをあえてチラシの一部に活用することで、印象深い効果をもたらしています。このチラシは、基本的に白と緑の2色を使っていますが、緑は実に様々な濃さを効果的に組み合わせていますし、白い文字も大きさやフォントが工夫されていて非常に読みやすく仕上がっています。プロの技が随所に生かされているにも関わらず、小技を強調しすぎないところが粋な仕上がりです。
目を凝らしてみると、人物写真も1人として同じポージングの人はいません。それぞれの個性が生かされていて、まとまっていながらもたくさんの人が溢れている面白みにあふれたデザインを生み出しています。このイベントに思わず足を運んでみたくなる楽しいチラシです。
時には排他的なチラシデザインも
石壁に直接書き込んだようなアーティスティックなチラシです。背景に独自のテクスチャを活用することで、味わいのある仕上げを施しています。フォントも工夫されており、全体的に洗練されたデザインであることから、どことなく芸術的な印象をもたらします。
チラシは広告媒体ですが、表現の工夫の仕方によって、1枚の紙の上に自由な世界観を表すことが可能です。絵画に目が奪われるように、1枚の作品に仕上げられたチラシは注目度が高いです。フォントがすべて違うところも面白いですね。セオリーとしては、フォントの種類は少なくする方が良いのですが、セオリーをあえて壊すのも、またひとつのセオリーです。
字体が変化していることで、硬質な背景に上を自由に文字が踊っているような印象を与えています。バラバラではなくきちんと情報が整っているのは、背景部分がしっかりしていることで全体的なまとまりの良さを生んでいるおかげでしょう。製作者のセンスの良さを感じる1枚です。
ところでこの国旗はどこの国のものだと思いますが?ヒントは中央のUAEの文字。これは、アラブ首長国連邦の略称です。アラビア語圏の国ですが、英語の文字が使われている点も趣深いオリエンタルな味わいを感じさせてくれます。
やっぱり一番大切なのは情報を届けること!
最後にまとめとしてこちらのチラシを紹介します。
これまでの凝ったチラシとは打って変わって非常にシンプルな作りですね。細かく見ると随所にプロの技を感じさせますが、このチラシにはチラシ制作における一番重要なポイントが抑えられています。
ターゲットに情報を届けるという姿勢です。このチラシは、大切な情報を的確に伝える効果に優れています。今まで紹介したポイントは、すべてターゲットにより効果的に情報を伝えるための工夫です。一番大切なのは、誰に・どんな目的で・何を伝えるのか、これらを明確にしておき、それをぶらさずに伝えることにあると言えるのではないでしょうか。
幸い日本にもチラシが溢れています。ここで紹介したポイントに注意しながら見てみると、今まで気付かなかったチラシの奥深さに気づきやすいと思いますよ。
Design : Levi Minnell ( NewZealand )
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