イベントの告知や、スーパーの安売り、映画の宣伝、新店オープンのお知らせ…たくさんの人にメッセージや情報を伝えたい時、今も昔もチラシは有用な手段の一つです。SNSやweb、テレビやポスター、雑誌や新聞広告など宣伝の方法は数えきれないほど存在しますが、手元に残り、何の媒体も介さずにいつでも見返すことができるのは紙媒体です。
今回ご紹介するのは、ブラジルのグラフィックデザイナーKenneth Medeiros 氏のチラシデザイン作例です。ブラジルでパーソナルな仕事から大手クライアントのプロジェクトまで手掛けるKenneth氏は、音楽関係のプロジェクトに関わることが多く、数多くのアーティストやイベントのアートディレクションを手掛けてきました。中でも、イベントの開催を伝えるフライヤー(チラシ)の作例は豊富で、出演者たちのいきいきとした魅力を伝えるライブ感溢れる紙面づくりは、大変参考になるものです。彼の手掛けてきた『音楽』が聞こえてくるような臨場感満点のチラシデザインを見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Kenneth ! )
二人の男性ボーカルをさまざまな角度から表現するチラシデザイン
ブラジルの人気男性デュオ「Wiliann&Marlon。二人の卓越した歌唱力と、サルサの情熱的なリズムに合わせたパフォーマンスは多くのブラジル人女性を熱狂させています。精力的にブラジル国内で活動している二人のコンサートスケジュールの告知の為に制作されたのがこのチラシシリーズ。セクシーでエネルギッシュな彼らの魅力が伝わるよう、メインの画像は二人の写真を使用し、背景やパーツに変化を持たせることで、バラエティに富んだデザインを展開しています。
同じ素材を使用した異なる印象のデザイン
2点のチラシは、まったく同じ二人の写真を使用して制作されたデザインです。しかも、画像の大きさも配置する位置も同じ。違っているのは、背景や文字の入れ方程度ですが、この2つのチラシから受ける印象は大きく異なります。
この2つの作品の間にあるもっとも大きなイメージの差異は、ショーの規模の大きさです。上段のチラシでは、二人のアタマのすぐ上には屋根が迫っています。木造とトタン屋根でできた質素な建物の中にいくつも照明が下げられ、こじんまりとしながらも温かみを感じる風情あるライブハウスでのショーをイメージさせます。比べて下段のチラシは、赤と黒の情熱的なカラーリングに、バッグバンドが写る背景写真、センターには、アーバンなブルーで書かれたコピーが掛かっています。背景にステージの写真や無地のカラーが敷かれていることで空間の広がりを感じさせ、大きなホールでの熱いステージが想像できます。
こちらの2点のチラシデザインも同じ画像を使いながら、カラーやデザインの処理でイメージを変えたものです。上段は、黄色やオレンジの暖色系を使い、トロピカルな雰囲気を演出しています。手書きの文字や日程のバックにブラシを滲ませることで、より躍動的なイメージに仕上げています。下段のデザインは、モノクロに写真を変換し、赤と白のみで情報を記載することで都会的な大人の魅力を表現する一枚になっています。
出演アーティストを効果的に紹介するチラシデザイン
複数のアーティストが同じイベントやプログラムに出演する場合、フライヤーでの紹介の仕方にも気を配る必要があります。メインやサブ、ゲスト枠などの扱いの大小や、名前とビジュアルを一致させる必要性の有無、トータル的な雰囲気づくりなどさまざまなポイントがあります。Kenneth Medeiros氏は、そのようなイベントチラシをさまざまな条件に合わせ、画像加工で違和感なく紙面上でアーティストたちを競演させる、卓越した技術をもっています。
大勢のアーティストが集結するチラシデザイン
アーティストたちを奥行きある配置で並べ、ブラジルの風景やロゴマークまでも一緒に一つの絵として納めています。イベントの賑々しい雰囲気がよく伝わってくるチラシですね。
ライブの雰囲気を伝えるチラシデザイン
ライブの熱狂が伝わってくる背景に、強弱をつけた人物レイアウトが臨場感をより強めています。全体の構成がシンメトリーになっているのも美しく見えるデザインのポイントです。
アーティストの個性が競演するチラシデザイン
強弱をつけた二人のアーティストがロゴマークを介し、一つの絵柄になっています。光の当て方を考慮し、遠近感を調整することで違和感をなくしています。それぞれの表情の違いが、そのままアーティストの個性を象徴しているかのようです。
まとめ
Kenneth Medeiros氏のデザインするアーティストたちのフライヤー(チラシ)は、どれをとっても、こちらに語りかけてくるようなライブ感があります。それは、写真の使い方に大きなポイントがあります。人物写真を決して写真然として使用せず、そこに『居る』かのように扱うことで、彼らの音楽やキャラクターをよりダイレクトに、より身近に感じさせているのです。
人物が登場するチラシデザインでは、その扱い方でイメージは如何様にも変わります。Kenneth Medeiros氏のような表現方法を一つの好事例として参考に、デザインの幅を広げていきたいものですね。
design : Kenneth Medeiros ( Brazil )
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