クリスマスやハロウィンはもともと西洋発祥の文化ですが、気がつけば日本の文化に溶け込み、当たり前のように毎年イベントとして楽しんでいます。それは日本だけではなく、アジア圏の各国でも言えることで、宗教的な枠組みを超え、この2つのイベントは各国の文化に浸透しているようです。
今回ご紹介するのは、台湾のグラフィックデザイナーYue Syuan Wu 氏のポスターとチラシデザインです。彼のデザインするハロウィンやクリスマスの世界は、馴染みのあるイベントのモチーフを現代のアジアテイストに昇華させたような独特なもの。エネルギッシュでディープな切り口がとても新鮮に感じます。西洋文化と東洋文化が織り成す不思議な世界観をデザインを通じ体感してみましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Yue ! )
ハロウィンに開催されたストリートフェスのポスター&チラシデザイン
ハロウィンの時期に行われた街頭ライブイベント「街頭重聲」。路上をジャックし、派手に行われたこのイベントは、『ハロウィン×音楽』をコンセプトに、ハロウィンの奇妙な世界と鳴り響くような音の世界とがミックスされたユニークなビジュアルを軸に、ポスターやチラシ、フラッグなどさまざまなものがデザインされています。
拡声器が象徴的なイベントロゴデザイン
ハンドスピーカーをモチーフにした、今にも音が響いてきそうなシンボルデザインと、右肩上がりのシャープで動きのあるロゴタイプで構成されたロゴデザインです。「街頭重聲」というのは「ストリートフェスティバル」を意味し、その下にあるコピーは「絶対後悔しないハロウィン」というような意味合いのようです。稲妻のように曲がったほうきがデザインを締め、全体にアグレッシブで「音」を感じるデザインに仕上げています。
プラモデルを模したポスターデザイン
イベントのポスターデザインです。ハロウィンのイメージカラーといえば、パンプキンのオレンジ。このイベントのコンセプトカラーのオレンジは、さらに濃く、鮮やかに発色するような色味です。ベースカラーの黒と組み合わせることで、漆黒の夜に光るような気味の悪さも醸し出されています。
かぼちゃや骸骨、コウモリや宇宙人(?)などのお馴染みのハロウィンモチーフと、楽器やロックコンサートで見かけるハンドサインなど音楽と所縁のあるモチーフが、まるでプラモデルのように骨で繋がっています。そこに先ほどのロゴマークが加わることで一つの絵としてまとまりを得ています。
本来関係のないハロウィンと音楽を、骨を媒介に繋げることで2つの世界をしっかりと結び付けていますね。
アートワークを踏襲したDM/チラシデザイン
同様のデザインでチラシも制作されています。ポスターと比較すると、タイトルや日時、料金等必要な情報が白抜きとなり、イベントの情報がよりスムーズに伝達されるよう配慮されています。
会場を彩る短冊型のポスターデザイン
街頭や会場に吊り下げるフラッグ型のポスターも、モチーフを大きく扱いインパクトを強めつつ、場所や時間等伝えなければならない情報はわかりやすく工夫されています。
その他グッズ・装飾デザイン作成イメージ
バッジやTシャツ、店内ディスプレーなども制作され、イベント全体を、このハロウィンカラーが統一しています。ポスターと同様のパネルがステージ背景にもデザインされ、イベントの雰囲気を盛り上げています。ハロウィンの夜に台湾の街を震わせたこのイベント、普段とはまったく違う、特異な空気が通りを席巻したのでしょう。
合辦│臺北市文化局
主辦│誠品生活、財團法人台北市文化基金會西門紅樓暨臺北市電影主題公園
協辦│Doobiest Store 、節拍廣場、社團法人台北市西門徒步區街區發展促進會、kosuiya 、Dickies、 星球工坊 、聖瑪莉
アジアンテイストに描かれたサンタクロースのポストカード制作例
次にご紹介するのは、Yue Syuan Wu氏が運営するデザイン事務所が発行した、サンタクロースが全面に描かれたクリスマスカードのデザインです。独自に制作したオリジナルフォントを使い、独特のタッチで描くサンタクロースは、普段私たちが知っているサンタクロースとは違い、どこか東洋的な匂いがします。
まるで中国の雑貨や玩具を売るお店に並んでいる人形のような、ふくよかで優しげな表情のサンタクロース。筆のようなタッチのカリグラフィで描かれる、単調でありながら複雑な絵柄は、昔からある中国の大衆的なイラストを思い起こさせます。
それと対照的に描かれているコントラストの強い派手な配色や、背景にあるドットで描かれたミラーボールのような球体、近未来的な遊び要素溢れるオリジナルフォントなど、西と東、静と動、今と昔をミックスしたような渾然一体としたポストカードのデザインです。
まとめ
西洋の伝統と東洋の今が合わさることで、混沌としたアジアの風が感じられるような気がします。西からやってくる文化をただ受け入れるだけだった時代から、入ってきたものに対し自分たちなりの解釈を加えアレンジしていく今の時代。それは、長い年月を経て異文化を吸収し自国のものにしたからこそできるのではないでしょうか。
近頃は、日本の文化をはじめ、アジアの文化も西洋のデザインに影響を与える場面が多くなってきています。これから更に登場してくるであろう、異文化との交流が生む新たなグラフィックデザインが楽しみですね。
design : Yue Syuan Wu (Taiwan)
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