
毎年違った展開を見せるファッションの世界。デザインのテイストは時代背景や流行に影響され、常に変化を続けています。ファッショントレンドが毎年変わるように、ロゴデザインにもトレンドというものがあります。その時々の、世界の出来事やそれによって左右される人々の気分。それらを反映し生まれたデザインがヒットすることによって、自然とデザインのトレンドも変遷していきます。
ここしばらくトレンドの中心にあるのが、「シンプル」や「ミニマル」といったキーワード。デザインのテイストとしても、フラットなものや均一なラインなど、シンプルに徹したものが好まれる傾向にあります。
今回ご紹介するのは、ロシア出身のデザイナー Vladislav Smolkin 氏です。ロシアのミュージシャン一家に生まれた彼は、幼いころからクリエイティブな表現をすることが当たり前の環境にあったそうです。音楽という表現を経て、彼が辿り着いたのは「グラフィックデザイン」の世界。世界各地を渡り歩き、様々な人、環境に触発された彼が、今、得意としているのは「ミニマル」なデザイン表現。彼はミニマルなデザイン表現を、最短でアプローチできるインパクトの強い表現だと評しています。見る人へストレートに伝わる彼のロゴデザインがどのようなものか一緒に見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Vladislav! )
「コンセプトをミニマルに表現する」とは「コンセプトの核心を1つの形に凝縮する」こと
この事例集のロゴが「コンセプトをミニマルに表現している」と評されるのは、ブランドのコンセプト全体ではなく「コンセプトの最も核心的な1要素」だけをロゴの形に翻訳しているからです。
コンセプト全体を1つのロゴに詰め込もうとすると、ロゴが複雑化し、ミニマルから遠ざかります。コンセプトの中から「この1つだけが伝われば、残りは自然と連想される」核心を見つけ、その核心だけを形にする。この「核心の特定」が、ミニマルなロゴ制作の最初の、そして最も重要な工程です。
シンプルな子供服ブランドのロゴデザイン作成例

子供服ブランド「LOLOCLO」は、柄やプリントを一切使わない、カラーとデザインだけで子供服を作る一風変わったメーカー。メーカーの服作りにかける思いを尊重し、シンプルながら、子供らしく覚えやすいロゴマークをデザインしています。

明るく爽やかなライトブルーは、青空をイメージさせるような元気でユニセックスな明るいカラーリング。丸みを帯びたサンセリフ書体のロゴタイプは、やさしく可愛らしい子どものイメージにピッタリです。

そして、LOLOCLOのシンボルマークのモチーフとなっているのは、ハンガーと小さな子どもが乗って遊ぶロッキングホース。この2つのイメージを掛け合わせ、子供衣料のイメージを作り出しています。

このシンボルマークを揺れる木馬のように傾かせて表現することで、ロゴのイメージに動的な要素を与え、子供服に相応しいはつらつとした印象と、木馬をやさしく揺り動かしながら大人が見守る温かなイメージの両方を伝えています。




そうして作られたロゴマークは、ショッピングバッグやWEBサイト、ショップカード、商品タグなどになり、ブランドの世界観をさまざまな形で発信しています。

飛行機をモチーフにした旅行代理店のロゴデザイン作成例

カザフスタンを拠点にしている旅行代理店「BRONIX」。ワールドワイドに「旅」を提供する同社は、「飛行機」をモチーフにしたロゴタイプを採用しました。


一見すると見逃してしまいそうなほどシンプルに馴染む飛行機のフォルム。社名「BRONIX」の「X」 を飛行機の形と重ね、さりげなくロゴタイプの中に飛行機の形を取り入れています。


ロゴタイプだけだと、それほど目立たない飛行機のシンボルマークですが、Tシャツやノートブックなど、グッズのデザインに使用されると、飛行機の形に沿ったラインがあらわれ、まるで航空図のようなデザインに変わります。

上の画像はトラベルブックですが、建物を真下から見上げる写真の中にロゴマークを置くことで、シンボルマークの飛行機が空を舞っているようなビジュアルを作り出しています。

ロゴマークとしてだけではなく、その後の展開を考えたロゴデザインは、見ていて気持ちが良いほど、グッズやブックレットのデザインにはまります。
オンラインビジネスの会社向けに作られたロゴデザイン作成例

ドバイにあるオンラインビジネス企業「OASIS OF INNOVATION」。ビジネス向けのアプリケーションやインターネットサービスを提供している同社は、ユニークなアイデアや斬新なサービス形態が顧客から支持されています。

海岸線に面した国際都市国家ドバイは、世界でも稀有な場所。そこに、新たなイノベーションの風を吹かせる同社は、それにふさわしいシンボルを備える必要がありました。シンボルマークのモチーフとなったのは、新たな発想やイノベーション・クリエイティビティを象徴する「電球」と、ドバイとオアシスを象徴する「ヤシの木」、海岸を想起させる「砂と波」。この3つを合わせ、電球の中でヤシの木が輝く印象的なデザインが生まれました。


ロゴタイプは「A」 の字が印象的なフォルムをもつ、角丸のサンセリフ書体。シンプルで親しみのあるロゴタイプの中にフラッグのような「A」 が入ることで、先進的な印象をプラスしています。

もう一つ、このロゴマークと似た形のものがあります。それは、ドバイのシンボル的ランドマーク「パームアイランド」です。世界最大の人工島であるパームアイランドは、商業施設や高級ホテルが立ち並ぶ、現在開発中の一大リゾート地。ヤシの木を模した人工島群の周りを取り囲むように、さらに島が設けられ、上から見たその様子は電球の中のヤシの木そのものです。
ドバイを象徴する景観と重なるイメージは、企業にとっても大きなプラス。ドバイを代表するような企業に成長できるよう、大きな励みになったことでしょう。

ミニマルなロゴの「品質」を判断するための2つの質問
この事例集のようなミニマルなロゴの品質を判断するとき、以下の2つの質問が有効です。「このロゴをさらに1要素削っても意味が伝わるか?」(伝わるなら、まだ削る余地がある)。「このロゴに1要素足したらデザインは良くなるか?」(良くなるなら、削りすぎている可能性がある)。
この2つの質問で「これ以上削れず、これ以上足す必要もない」と答えられる状態が、ミニマルなロゴの「適正な密度」です。この地点を見極めるには、実際に「削ったバージョン」「足したバージョン」を作って比較する作業が不可欠です。頭の中だけでは判断できません。
パスタをモチーフにしたイタリア料理店のロゴデザイン作成例

モスクワにあるイタリア料理店「Pasta Bravo」。パスタの原料となる素材からこだわった本格派のこの店は、数あるイタリア料理のメニューの中でも「パスタ」を重点的にアピールするロゴデザインを求めていました。

そこでモチーフに選ばれたのは、店の看板商品である「パスタ」。店名になっている「BRAVO」は、イタリアで喜びや喝采を表現する時に使われる言葉。「いいね!」マークでお馴染みのGOODサインをパスタであらわしたシンボルマークが制作されました。


パスタをフォークでクルクルと巻き取る動作を思わせるらせん状のラインが、手指の形を象り、しなやかなGOODサインを形成しています。シンプルなロゴタイプと合わさり、遊び心を持ちながらも、どこか品格を感じる余裕のあるデザインです。


カラーはオリーブやオーガニックを連想させるモスグリーンを使い、カードやボトルなどさまざまなシーンでキービジュアルとして使われています。
まとめ
シンプルでミニマルなデザインは今にはじまったものではなく、ロゴデザインの世界では昔からある普遍的なスタイルです。実際、大企業のブランドロゴマークは、シンプルでミニマルなものが多く、多くの老舗ブランドでそれを目にすることができます。一見、誰にでも作れそうなシンプルなロゴデザインですが、単純であればあるほど、その形に求められる完成度は高く、また、他のブランドのロゴマークと形が重複しないよう注意も必要です。
そんな中でVladislav Smolkin 氏は、シンプルでありながら、ブランドが訴えたいコンセプトを見事に内包したデザインを創出し、さらにロゴデザインの先にあるビジュアル展開まで見据えた秀逸なロゴマークを数多く手がけていました。今、求められる「シンプル&ミニマル」なロゴデザイン。その単純さとは裏腹な、一筋縄ではいかないロゴデザインを作るには、コンセプトの本質を捉え、多角的な視野に立ってデザインを掘り下げる必要があるのではないでしょうか。
design : Vladislav Smolkin ( Russia )
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