企業やブランドのイメージを一目で人々に認識させ、その歴史や理念、社会的存在性を顕著とするのに重要なロゴマーク。
日本で総称されているロゴとは、企業・団体・個人・サービスなどを象徴した図形の「シンボルマーク」と、ブランド名・商品名・社名などをデザインした文字で表す「ロゴタイプ」の二種類を指します。ここ最近のロゴ傾向としてシンボルマークの採用が減りつつあり、名称をしっかり覚えてもらうことを最優先としたロゴタイプのみにするケースが増えてきています。しかし「シンボルマーク+ロゴタイプ」の両方でオーソドックスに構成されているロゴはまだまだ主流。視認性の高いロゴタイプとメッセージ性を秘めたシンボルマークを上手に調和させて出来ているロゴは、いつの時代でも多くの人に共感を持ってもらえるものです。
今回は、 CaveLantern 社のロゴ制作例をご紹介します。CaveLantern 社は、西アフリカに位置するガーナ共和国の首都アクラでグラフィック制作を営むクリエイティブスタジオです。時代の変化に柔軟に対応しつつ、ユニークでオリジナル性の高いデザインを制作し、人の記憶に残るようなブランディングデザインを遂行しています。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, CaveLantern! )
情報エンジニアリングサービスを展開する企業のロゴ・ブランディング
最初にご覧頂くのは、彼らの代表作である『APOTICA』のブランディングです。 「APOTICA」はITハード・ソフトウエアを開発・販売し、顧客がビジネス上のあらゆるITプロジェクトに対応できるように支援する情報エンジニアリングサービス会社です。プロフェッショナルなエンジニアやコンサルタントを配し、エンタープライズネットワーキング、セキュリティーシステム、データ管理、物流管理、配電システムを含めたビルディングサービスなど、幅広い分野からITプロジェクトの成功に必要な情報を提供し、最適なパフォーマンスを保証します。
CaveLantern社は「アフリカ市場において信頼性を感じさせ、他社との差別化を図るにふさわしい、ユニークなビジュアルアイデンティティー」を目標としました。APOTICA社の社名を丸みのあるサンセリフ系フォントの小文字で綴ったロゴタイプと、「あなたのビジネスを継続的にサポートするハイテク企業」というキーワードを持つAPOTICA社をイメージさせる青い三角形のシンボルマークで構成されているロゴマークです。
過去において、小文字表記のロゴタイプは大文字だけのロゴに比べ知覚されづらい、と敬遠されていた小文字ロゴですが、最近では頻繁に見られるようになってきています。より企業・ブランドに親しみやすいイメージを与える効果を持つ小文字ロゴの普及は著しく、大文字に比べてフレキシブルなデザインを展開しやすいという理由から、近年多くのデザイナーが好んで使うスタイルとなりました。
CaveLantern社は、小文字でも認識しやすいロゴタイプを形成。小文字特有の柔らかい曲線でカジュアルな様相を醸し出しつつ、視認性を一層高くするために文字間や高さの調整が施されています。
シンボルマークのデザインは、ビルディングや配線・物流・コンピュータといったAPOTICA社を取り巻く環境や風景がモチーフとなっています。進歩的で多方面に業務を展開するAPOTICA社を物語るこれらのモチーフからインスピレーションを受け、モノラインのシンプルの三角形シンボルが出来上がりました。
ロゴタイプの「apotica」と三角形のシンボルマークが横並びで配列したものがメインロゴマークで、両者のサイズや間隔・高さなど、視覚的なバランスを綿密に配慮して仕上げられています。 カラーリングは文字部分が白色、シンボルマークはスカイブルー、背景にはネイビーブルーが採用。この三色はAPOTICA社を象徴するコーポレートカラーとなり、APOTICA社のグラフィック媒体全てはこのカラーリングで彩られています。
ロゴタイプやシンボルマークが単体で使われる場合の配置規則や、媒体に応じたコーポレートカラーの使用法、各テキストのフォントの規則などを明確に設定したビジュアルガイドが作成され、ロゴをベースに統一したブランディングデザインが展開されています。
IT分野のプロを要請するトレーニングセンターのロゴ・ブランディング
続いて、『IMPROTECH』のブランディングを見てみましょう。 IMPROTECH社は、世界最大のコンピューターネットワーク機器開発会社 Cisco Systems. Inc. が提供する専門知識のトレーニングセンターで、サハラ砂漠より南の地域であるサブサハラ・アフリカ内のネットワークの強化を業務としています。 IMPROTECH社の企業理念は、IT分野のプロフェッショナルだけを養成するのではなく、ネットワークのスキルを持つアマチュアにもレベルの向上を目指すこと。この理念を基に、Cave Lantern社はIMPROTECHブランドのビジュアルアイデンティティーの形成を行いました。
IMPROTECHを視覚的に表すモチーフとして CaveLantern 社が設定したのは、多様なネット(網)を形成し、生存力の高い「spider(蜘蛛)」。蜘蛛の巣(ネットワーク)を迅速にあらゆる方向へ的確に張り巡らす蜘蛛は、IMPROTECH社のイメージや未来感を表現するのに最適なモチーフですね。 このモチーフより、縦線に30度の傾斜を施したグリッドを使って蜘蛛を象ったシンボルマークが形成されました。
フルバージョンのロゴは、蜘蛛のシンボルの右横に「IMPRO/TECH」の2段で組まれた大文字のロゴタイプを配置したもの。このロゴタイプはSofia Pro Boldフォントに調整を加えて出来ていて、Sofia ProフォントはIMPROTECH社のコーポレートタイポグラフィーに設定されています。
シンボルマークを構成するそれぞれのライン幅と「IMPRO/TECH」の各文字の一片の太さを合致させ、レイアウトや余白の取り方にも充分な配慮がなされ、この事例でもシンボルマークとロゴタイプの兼ね合いはとてもバランスの取れたものとなっています。
ロゴの配色にもみられるように、ベースのカラーリングは紫・グレー・白の三色。これに、やや薄めの紫色・空色・黄色・紫と青のグラデーションカラーを加えた総七色がコーポレートカラーに設定され、全てのグラフィック媒体の配色に適応されました。
その他ロゴデザインの制作事例
CaveLantern社は、他にも様々な秀逸なロゴをデザインしています。
腕時計メーカーPatriot Watchesのロゴです。前述の『IMPROTECH』ロゴ同様、シンボルマークを構成するラインと「PATRIOT」の各文字のラインの太さがリンクしたデザインです。
Hairitageはガーナ共和国のアクラ市を拠点とするヘアリテール・メイクアップセンターで、様々なカラーやテクスチャー・スタイルをカスタムメイドでウイッグを製作しています。 CaveLantern社が目指したのは、エレガントで階級の高さを感じられるビジュアルアイデンティティー。そのベースとなったのがこのロゴタイプのデザインです。 「a」「t」「g」「e」字の語尾にはカールした髪をイメージさせるような様相が組み込まれていますね。 各文字の高さ、文字間を巧みに調節し、どことなく古典的でもありながらモダンでスマートなイメージを醸し出すロゴです。
Novaspiceはガーナ共和国のスタートアップ企業で、健康的な有機栽培ハーブやスパイスの生産に携わっています。 丸やバツ、三角、四角などの記号を上手くレイアウトしてシンボルマークを形成し、その下に二段で構成した小文字のロゴタイプ「nova/spice」を配置したロゴマークです。 「元気の良さ」や「刺激感」がこのシンボルマークからイメージさせられ、グリーンを基調としたカラーリングからは「ナチュラル感」、小文字のロゴタイプからは「優しさ」「フレンドリーさ」が伝わるデザインです。
まとめ
企業・ブランドのイメージやメッセージをいかに忠実にロゴの中に反映させることができるかが、ロゴデザインの重要ポイントです。 企業の本質を的確に表現したシンボルマークと、大文字小文字それぞれの性質を上手く生かし、シンボルマークとの釣り合いを考慮したロゴタイプで構成された CaveLantern 社のロゴ作品は、視覚的な安定感に富み、オリジナルで高いデザイン性を感じさせられます。
design : CaveLantern ( Ghana )
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