デザインを見ることが好きな方は、「ロゴの素晴らしさを発見する楽しみ」をよくご存知かもしれません。ロゴを作っているデザイナーでしたら、なおのことでしょう。まだ「楽しみ方」を未体験な方には、是非この記事をキッカケにロゴデザインの世界を堪能していただきたいと思います。また、素晴らしいロゴに感動した経験が多いために、自身のデザインに行き詰まっているデザイナーさんのヒントになるかもしれません。今回はウクライナのデザイナーRuslan Nos さんの作品を参考に、楽しい気付きをご紹介できればと思います。※記事掲載はデザイナーに許諾を得ています。(Thank you Ruslan !!)
発見する楽しさに気付かせてくれるロゴデザイン1
ロゴデザインの中に隠れたイメージを発見した時は、誰かに言いたくなるものです。最初にご紹介するのは「発見する楽しさ」に気付かせてくれるこのロゴです。こちらは、教育系会社のロゴです。本や辞書が3冊ある横に、鉛筆のフォルム。これが学校の建物にも見えるようデザインされています。「鉛筆」と「学校」のイメージをひとつのオブジェクトの中に反映しています。「フォルムは完全に鉛筆、そこに時計を配置するだけで学校に見える」ここが、このデザインの面白さです。シンプルな一工夫でイメージは何倍にも膨らむ可能性を持っています。
発見する楽しさに気付かせてくれるロゴデザイン2
パッと見ればペリカンでしょうか。鳥のシルエットであることが見て取れます。これは映画会社のロゴです。このデザインの秀逸だなぁと思わされた点は「映写機」の形を鳥のフォルムにまで展開させたと思われる部分です。そういえば映写機は口が飛び出している動物のシルエットに見えますよね。さて、隠れたイメージは見つかりましたでしょうか?そうです!鳥のクチバシの部分ですね。これは、映画監督が「よーい、スタート!」と言いながら”カチンッ”と鳴らす「カチンコ(ボールド)」をかたどっています。
発見する楽しさに気付かせてくれるロゴデザイン3
こちらはウクライナの国際ニュース通信社のロゴマークです。社名の頭文字「y」からできています。何の会社のロゴかが分かった時、左側のシルエットが何であるかに気づきますよね。吹き出しマークです。漫画のセリフではもちろん、今ではメッセージのやり取りでもこのマークが見られるようになりました。「メッセージ・ニュースを発信する」をイラスト化した素晴らしいデザインです。この吹き出しからは、「意見」や「メッセージ」など単なるニュースに留まらないという、この通信社の意志が垣間見えます。「何かがイラスト化されているのだけれど、見る側に一歩考えさせるデザイン」これもまた、目を奪うロゴの魅力ですね。
発見する楽しさに気付かせてくれるロゴデザイン4
真っ赤な背景が目を引く「メキシカンソース」のロゴマーク。ナチョスやタコスに合う、辛くてスパイシーなソースであることが想像できます。背景をグリーンにすることで、青臭さが癖になる青とうがらしのメキシカンソースにもなりますね。とうがらしをモチーフにしたこのロゴマークには、何が隠れているか分かりますか?少し難しくなりましたが、メキシコといえば・・・。そう「太陽」です!メキシコで太陽は、王冠(コロナ→クラウン)、王様を意味する重要なシンボルマークです。とうがらしの形の中に、太陽を忍ばせたのは「メキシカンソースの王様!」と、この商品への発展や願いが込められていると感じます。ただメキシコの雰囲気を押し出したければ、もっと分かりやすく太陽と、とうがらしを区別して配置できたはずですから。さりげないデザインとは、こういうものなのではないでしょうか。
発見する楽しさに気付かせてくれるロゴデザイン5
映画関連グループ「CINEMA SPACE」のロゴマーク。自由で斬新なデザインですね。楽しそうな人が3人いろいろな方向を向いています。 “SPACE”から宇宙の意味を込めてキラキラした空間を浮遊している人を描いたのかと思います。映画を観る空間とリンクするイメージですね。それぞれの顔が映画のフィルムになっているのもポイントです。
「誰に向けてのサービスか」を明確にするロゴ1
ロゴを制作する際に「誰に向けてのサービスであるか」を明確にすることも大切です。まな板の上に食材が乗っているんので、一目瞭然にレストランのロゴデザインであることが分かります。ロゴの可愛さから、肩肘張らずに入ることができるお店だと分かりますね。そしてもうひとつ、このデザインの魅力は「ボトルに入った船」が浮かんでくるところです。魚を調理するまな板と、ボトルシップのダブルミーニングです。海の幸を扱うお店の粋なサプライズですね。素敵なロゴデザインです。
「誰に向けてのサービスか」を明確にするロゴ2
続いてこちらのロゴデザインを見ていきましょう。ロシア語で「KOTOB」はネコを意味します。「7匹のネコ」というテキストロゴ。猫をモチーフにした、愛らしい要素が組み込まれています。文字のフォルムも丸く、傾いていたりと子供が喜びそうな文字にデザインされていますね。つまり「子供に向けてのサービスである」ことが分かります。「これは何の動物かな〜?」の問いかけに、元気に答える子供の姿が浮かんできますよね。子供が集まる楽しい空間を提供しているクラブのロゴマークです。
使用用途に寄り添うロゴデザイン1
こちらは洋服のブランドロゴです。レタリングという(主に手書きで)文字を装飾して雰囲気を演出する方法で作られています。「対象を限定しないデザイン」手法で、可愛いさや、クールでスタイリッシュなど、その商品を所有することで得られる感覚を視覚化することができます。意志の強いネーミング「Likeme 〜私のように〜」は自己主張だけではなく、素材、ディティールにこだわっているのだろうと想像させてくれます。洋服ブランドで頻繁にロゴを使用する箇所は首元のタグの部分ではないでしょうか。ポケットの端につけられる刺繍かもしれません。このロゴはそういった用途に対応した縦横比で制作されています。
使用用途に寄り添うロゴデザイン2
これはジュエリーブランドのロゴです。この鳥のフォルムから見えてくるアルファベットは「E」と「e」ですね。美しく細い線で描かれているこのシンボルマークは、洗礼されたシンプルなジュエリーを連想させます。使用用途は洋服と違い、ロゴマークをプロダクト自体に直接付属することが少ないでしょう。その代わりにボックスなどのパッケージに使用されているのではないでしょうか。丸みを帯びたリングボックスでも、長方形のネックレスのボックスでも合うよう正円に近い形になっています。そして、ジュエリーを優しく包み届けてくれるボックスにデザインされたこの鳥はきっと「幸せを運ぶ鳥」なんですね。
使用用途に寄り添うロゴデザイン3
この革製品のブランド「ADELIS」のロゴは、用途に対しての柔軟性を発揮してくれています。革製品でのロゴを見せ方は、焼印や押印が主流で小さなプロダクトに潰れがちな小さな焼印は難しいものです。
そこで鳥、A、王冠、ADELISを分解し、セレクトして使用できるように想定して作られています。もはや焼印の制限ではなく、製品デザインの可能性幅を広げています。
何か違和感を覚えたら、じっくり見てみよう1
これまでロゴの見方を色々とお話ししましたが「この隠れたデザイン、気付かれないのでは?」と思ったロゴを2つご紹介しましょう。これは街の情報発信グループのロゴです。ハート、チケット、木、矢印?形のわかるものが4つ配置されていますね。病院とか、楽しいイベントや、自然あふれる風景とか。その街の情報が、地図の印のようなイラストで表現されていて可愛いらしく思います。この自治情報配信グループは「X(エックス)」をモチーフにしているそうです。一見Xの文字はロゴデザインの中に存在しないように思いますが、アイコン同士の空間に注目すると、そこにXが浮かび上がります。こういった部分を、ネガティブスペースと呼び、このネガティブスペースをうまく利用すれば、ロゴに深みを生むことが可能になります。
何か違和感を覚えたら、じっくり見てみよう2
このロゴは文字通り、カメラ・その周辺機器のロゴです。隠れたデザインに気が付いた今は、いつでも「それ」を見てしまいます。しかし長く分かりませんでした。テキストに動きを出すために「T」を変形させているのだろうか。でも、同じサイズ、ラインの箇所にはそれはしていない・・・。「Photo」と「Tech」を分割して読ませたかった為に「oを中央の「・(点)」に見せたかったのか。最もしっくりこないのは「T」。なぜ右上と左上の別箇所を変形させたのか。シンプルなテキストに、なぜこんな歪さを加えたのだろうか・・・。
そう考えながら、違和感を眺めていた時に、真ん中の「o」に“視線”を感じました。分かりますか?そう、「カメラ」です!! 分かってしまうと、今はもうその部分にばかり目がいってしまいます。
想像することで楽しむロゴ1
ここからは、想像する楽しさを共有したいと思います。これはリバプールにある探偵事務所のロゴマークです。勇敢な騎士は、頼り甲斐がありますよね、道なき道をどんどん突き進み、真実を見つけ出してくれそうです。 企業アイデンティティが「厳格で勇敢な調査を行ないます。」ということでしょうか。想像させてくれるロゴって楽しいですよね。このロゴマークの楽しいところをもうひとつ。遠くから見ると、馬が前進しているように見えます。1998年創業なのでしょう、「19」と「98」が両サイドに分かれて配置されていて、動きを表す装飾になっています。制作者の意図は明言できませんが、ここで言いたいのは「ロゴを見る楽しみは、想像すること」なんです。
想像することで楽しむロゴ2
同じく、こちらも想像してみましょう。このロゴは何をイメージして作られているのでしょうか。もしもこれが、文具メーカーや、ボールペンの製品ロゴだと、「滑らかな書き心地」でしょうか。飲食店のロゴであれば、一筆書きで作られる文字を光らせた看板「ネオンサイン」を表現していそうですよね。
実際、このロゴは歌手の方の名前ロゴだそうです。このロゴの魅力は、曲線部分の滑らかな丸みです。そして、書き出し・書き終わりがある文字「C」「s」「t」「n」「t」「e」の先端部分には丸みが無いことと、文字の細さから、筆圧の軽さを感じます。少し右肩上がりで、ササッと書かれたスマートなサインという印象ですね。
ストレートに分かりやすく伝えるロゴ
これまで、グッっと考えたり、イメージしたりするものが多かったですね。こちらはクールダウンと思ってください。無理せず、分かりやすく、思考にスッと入ってくるロゴデザインをご紹介します。映画に関する情報配信グループのロゴです。「cinema = 映画」「ville = 村」という意味です。この言葉に合わせてロゴが形成されていますね。全体のフォルムは、映画の映写機、そしてその中は、村を連想させるシルエットがたくさん組み合わされています。木々、太陽、家、蝶々、空などですね。万人に向けて、分かりやすく親しみを持って付き合ってもらえるロゴは、究極こういうものなのかもしれません。
“ロゴの素晴らしさを発見する楽しみ”は感じられましたか?紹介したこのロゴの数々は、ウクライナのデザイナー Ruslan Nosの作品です。これほど多種多様に楽しませてくれる彼のデザイン力は圧巻ですね。
Designer : Ruslan Nos (Ukraine)
・この記事は制作者に許諾を得て掲載しています。
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