ヨーロッパとロシアのちょうど境目に位置するウクライナ。西のモダンでセンシティブなデザインエッセンスと、東のエキゾチックでグラフィカルなテイストがミックスされ、魅力的なデザインやアートが数多く生まれています。
そんなウクライナでグラフィックデザイナーとして活動しているni_se 氏。彼もまた、ブランドに合わせたさまざまなデザインアプローチを持ち、幅広い表現方法で数多くのロゴデザインを手掛けています。ブランド名や文字、関連するイラストなど、コンセプトに合わせ多様なモチーフをシンボルに仕立てていく手腕は、職人技と称するにふさわしい仕事ぶりです。バラエティ豊かな彼の作品を見ながら、ロゴデザインがもつ表現の可能性について考えていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, ni_se! )
ブランド名の頭文字をモチーフにしたロゴデザイン例
食品ブランドのロゴ
健康に配慮した食品を取り扱うブランド「Fit Food Factory」のロゴマークです。シンボルマークとなっている図柄は人参をイメージしていますが、その人参を形作っているパーツを見てみると、一つ一つが「F」の文字をアレンジしたものになっています。「Fit Food Factory」は略すると「FFF」。シンボルマークに使用されている「F」もきちんと3つ。細かなところまで配慮されたユニークなロゴマークです。
カフェ&バーのブランドのロゴ
こちらはCafé&Bar「Black Box」のロゴマークです。このシンボルマークもブランド名の文字「B」をデザインし、パーツとしてシンボルマークを構成しています。このシンボルマークの面白いところは、「Black Box」という名の通り、「B」を使って立方体=箱を形作っているところです。「B」の形を面ごとに微妙にアレンジしており、空間的な広がりを感じさせるよう工夫されています。
WEBアプリ開発スタジオのロゴ
正式名称は「i space」。「i」を逆さまにし「!」とすることで見る人へのインパクトを強めます。業態はwebやアプリケーションの開発を手掛けるスタジオのようです。アイデアをカタチにし、商品としてリリースする企業にとって、人の興味や関心を引くアテンションはとても大事なキーワード。そのアテンションをあらわすモチーフとして「!」は適したマークといえるのではないでしょうか。
スピーカーのパーツメーカーのロゴ
ハイエンド機種のスピーカーに使用するパーツ供給をしている「giom」という企業のロゴマークです。シンボルマークの元になっているのは頭文字の「g」、そして上部にちょこんとついた丸は、「i」の「・」だと思われます。「g」を大文字にして斜め45°回転をかけた円形に近いこのデザインは、スピーカーに使われるユニットのかたちが由来になっているのではないでしょうか。シンボルマークは、がっしりとしたラインで製品のイメージを作り上げ、ロゴタイプは、品のあるセリフフォントを用い、上位機種の部品メーカーらしい雰囲気を醸し出しています。
住宅関連企業のロゴ
このロゴマークは、「H」と「A」のモノグラムでできている、住宅関連メーカーのものです。一見するとホテルかなにかの回転ドアのようにも見えますが、両外側の四角く囲まれたスペースは「H」の2本の縦線を、真ん中にある長方形のスペースは「A」の三角形の部分をあらわしています。1本引かれた横線は「H」と「A」の共通の要素として存在しています。ラインだけで組み立てられた単純そうにも見える図柄でありますが、2つのイニシャルが見事に融合しており、上にクラウンを乗せることで住宅関係の企業ロゴに相応しい品格も感じさせています。
鞄専門店のロゴ
こちらは「Zucabag」というユニークな鞄類を扱う専門店のロゴマークです。シンボルマークは「Z」をモチーフにしていますが、同時にバッグのフォルムもモチーフにしています。両端に飾りをつけた「Z」の文字はオリエンタルな雰囲気を含みつつ、一風変わったバッグのデザインのようでもあります。「Z」の上に引かれた横線がバッグの持ち手になっているのがポイントですね。
動物をモチーフにしたロゴ作成例
住宅メーカーのロゴ
住宅メーカーのロゴマークです。「PATRICK」というブランド名の下にあるタグラインには「Green House」とあります。四つ葉のクローバーをくわえた小鳥のシンボルマークが示すのは、「自然と共存する住みよい家」というようなキャッチフレーズなのではないでしょうか。可愛らしい小鳥がポーチに遊びにくるような、幸せな暮らしを想像させるロゴマークです。
広告代理店のロゴ
「Smart Foxes」という広告代理店のロゴマークです。まるで折り紙の展開図のように描かれた、幾何学的なキツネをイメージした図柄がシンボルマークとなっています。3匹のキツネたちの顔にも見えるこの図柄、見様によっては建物を構成する一角や、炎のようにも見えます。見る人のイマジネーションをかきたてる抽象的なロゴマークです。
モバイルアプリ開発会社のロゴ
日本でもおなじみのアスキーアートをシンボルマークにした「TGCG」というモバイルアプリケーションを扱う会社のロゴマークです。通信業界に携わる業態らしい、ネット社会の象徴のようなシンボルマークです。海外のアスキーアートというと、スマイリーと呼ばれる、:-)や:-(のような横置きの顔文字がよく知られています。この「TGCG」のシンボルマークになっているのは、うさぎのような動物を模した縦置きのアスキーアート。もしかすると日本の縦置きのアスキーアートにヒントを得たのかもしれませんね。
モバイルアプリのロゴ
「Snapster」というモバイルアプリケーションのロゴマークです。可愛らしくも躍動感溢れるイルカが、こちら側に向かってきているような図柄です。このイルカは体全体をくねらせ「S」のカタチをあらわしています。写真をシェアするようなSNS機能をもつアプリケーションは、シンプルなデザインのアイコンやロゴマークが主流ですが、あえて差別化を狙うのであれば、このようなキュートな動物をモチーフにしたロゴデザインもアリなのではないでしょうか。
さまざまなタッチで描き分けるイラストをモチーフにしたロゴデザイン
ベトナム料理店のロゴ
ベトナム料理を提供しているカフェのロゴマークです。ベトナムといえば民族衣装の「アオザイ」や、笠のような形をした帽子「ノンラー」がよく知られています。そして、同じくベトナムを流れる国際河川「メコン川」も有名です。現在では観光の目玉ともなっているメコン川の川下り。細くて長いボートにノンラーを被った船頭さんが舵をとる風景は、ベトナムのイメージそのもの。そんな風景を切り取ってロゴマークにしたのがこのカフェのロゴデザイン。背景の赤に黒が際立つアジアらしい印象のロゴマークです。
フードデリバリーサービスのロゴ
こちらは健康的な料理のデリバリーをしている「Foodman」という宅配サービスです。先ほどのアジアンテイストとは打って変わって、モノラインで描かれたシンプル&モダンなイラストです。料理を作ったシェフがそのまま宅配でしてくれるような、ダイレクトでスピーディーなイメージを具現化しています。
高級加工肉ブランドのロゴ
最後にご紹介するのは、独特のタッチで描かれた手書きイラストでシンボルマークを作り上げた「Meat Tradition」という高級食肉加工のブランドロゴです。大昔の石版から抜け出してきたような、シルエットで表現された人物や文様、そして古代文字のような雰囲気で書かれたロゴタイプ。昔から伝わる伝統の技法で肉を加工し続けているというコンセプトを表しているのかもしれません。
まとめ
スタイリッシュで都会的なデザインのものから、レトロな風合いをもったイラスト、愛らしい動物など、時代も国境も超えたボーダレスなデザインが溢れていました。ロゴデザインを手掛けるデザイナーとして、引き出しが多いに越したことはありません。彼のように、クライアントの業態や要望に応じて柔軟に対応できる、センスと実力を身につけておきたいものですね。
design : ni_se ( Ukraine )
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