「こんなときに○○がいてくれたら!」
「もしもこれが○○だったら面白いのに…」
「まるでこれは○○みたい!」
人のアタマの中は、日々さまざまなイマジネーションで溢れています。実際、目の前にないものでもアタマの中ではその様子を思い描いたりするものです。そうした想像の世界を実際に作り、ドラマや映画、アニメーションなどの作品にすることで娯楽の文化は成長してきたわけですが、広告の世界も然り、空想の世界をかたちにすることがよくあります。
ポスターやチラシなどの広告デザインを実写で表現する場合、屋外撮影であればロケハンからはじまり撮影場所の検討、スタッフや出演者が現場に赴いての撮影、屋内撮影であればセットを用意したりとなかなか大変な作業です。それが現実にはない空想を描くものなら、尚更技術面の対応やセッティングが大変でしょう。
そうした一連の問題を一気に解決するのが3Dレタッチです。通常、グラフィックデザインでは2Dの画像を加工しグラフィックを作るというのが一般的です。2Dでも十分リアリティに迫る画像は制作できますが、やはりモノの側面や影、質感、動きなどを完全に再現することはとても難しいことです。3Dはそのような分野を得意とし、まるでそこにあるかのようなリアルな表現を実現します。
今回ご紹介するのは、ペルーにある3Dデザインスタジオ「Midas Art Studio」の広告デザインです。彼らは3DCGを駆使したビジュアルデザインを得意としています。そのクオリティは大変高く、どれも目を疑ってしまうほどの完成度。身近なテーマを取り上げた「ありえない」広告の数々をお楽しみください。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you,Midas Art Studio! )
いつでもお客様の側に!銀行の広告デザイン
大海原にサーフボードにまたがり語らうサーファーと銀行員。この広告デザインのコンセプトは、いつでも、どんなときでも顧客を想う銀行であること。それを体現するために、この広告シリーズの中では、銀行員が顧客のいるところならばどこへでも駆けつけています。
これはサイクリング中に同じく自転車に乗り顧客と会話をしています。先ほどのサーフィンの時もそうでしたが、顧客の話に親身に耳を傾ける銀行員の表情にとても好感がもてます。
山中でのランニング風景です。3作通し、本来別々の画像であった背景の美しい風景と登場人物たちが違和感なく溶け合っています。光や影が現実以上にはっきりと描かれ細部まで鮮明に見せています。焦点をあてたい部分をしっかりと描きだし、現実と非現実の境目を漂う独特の雰囲気は、人々の注目を集めるに値するビジュアルではないでしょうか。
こうした広告がどのように作成されたのか見ることができるメイキング映像もありますので是非ご覧ください。
https://vimeo.com/184800045
https://vimeo.com/185077000
https://vimeo.com/185084143
Cliente: Scotiabank Agencia: Carne Campaña: Scotiabankers Directora de Cuentas: Ivana Chavez Ejecutiva de Cuentas: Vanessa Graham Head of Art: Piero Oliveri Director de Arte: Edgar Torres Diseño Gráfico: Erika Cavero Productora: Lilian Aste Foto: Carlos Rojas
頭痛のタネは子供の工事?鎮痛剤の広告
多くの女性が悩まされる偏頭痛。頭が痛い時に、大きな音や振動は勘弁してもらいたいものです。しかし家庭にいるとそうもいっていられません。幼い子供たちはこちらの状況などお構いなしに家の中を飛んだり跳ねたり、兄弟がいたなら大きな声で会話もするでしょう。元気なときなら可愛い子供たちも、頭痛の最中は余裕をもって見てあげられないものです。
そんな女性たちの辛い姿を画像にしたのがこの一枚。ソファに座る母親の前になんと大きな穴が。傍らには幼い子供たちがしっかりヘルメットまでかぶって絶賛工事中です。頭が痛い女性には、子供たちの騒音がこんな風に見えるという想像の世界です。
床に空いた穴、飛び散る木や石、土。どれも実際に穴を開けたんじゃないかというリアルさですが、3Dを駆使したものです。
驚きの制作画像は下記よりご覧ください。
https://vimeo.com/178065224
「こうなる前に、頭痛薬」など、画像を補足するキャッチコピーなどが入り完成するのでしょう。想像の世界をリアルに再現した面白い広告です。
Cliente: Laboratorios Teva – Kitadol Agencia: Circus Grey Director General Creativo: Juan Carlos Gomez de la Torre. Directores Creativos: Emilio Diaz, Edher Espinoza V. Director de Arte: Martin Asato, Edher Espinoza V. Redactor: Juan Carlos Mendoza Director de Cuentas: Roxana Pando Ejecutiva de cuentas: Lucero Ugarte Fotográfo: Alex Freundt Productora: Vanessa Gomez Retoque y 3D: Midas Art Studio
名画の中にさりげなく登場するパンの広告
レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた名画「モナ・リザ」は世界でもっともパロディー化された名画とも言われています。ご多聞に漏れず、彼女が手にしているのはペルーで人気の菓子パン「todinno」。絵画と同じ油彩のタッチでしっかりと商品が描かれているように見えますね。これももちろん、3Dレタッチによるグラフィックです。
広告の手元を拡大して見ても、周囲の色や光の当たり方にまったく違和感がなく一枚の絵にしか見えませんね。また、モナ・リザが手にしている部分が商品に影を落とし、実際に持っている姿を描いたかのように見せています。Todinnoを抱えたモナ・リザの微笑は「早く帰って食べたいわ」などと考えているのではと想像させてしまうほど、自然に商品と馴染んでいます。
こちらも有名な名画「ヴィーナスの誕生」をパロディー化した広告デザインです。両手にtodinnoをもつヴィーナス。本来左にいるのは西風の象徴で、ヴィーナスの乗った貝殻を岸へと吹き寄せている姿なのですが、ヴィーナスの両手にtodinnoを持たせることで、西風たちがまるでtodinnoを羨ましそうに見つめているかのような絵画に見えてきてしまいます。名画の世界に異物が混ざることにより、新たなドラマが見えてきて想像力をかきたてられます。
こちらも見事に絵画のタッチに同化していますね。
最後に登場するのは、ミケランジェロが礼拝堂の天井に描いたことで知られる「アダムの創造」です。本来この絵画は、神が最初の人間となるアダムに生命を吹き込もうとする一瞬を描いた神々しいテーマの作品です。しかし、アダムの手にtodinnoがのることにより、神が「その美味そうなものはなんだ?」とでも言っているかのようなtodinnoを主役とした物語になってしまっています。
壁のクラックまで忠実に再現され、その上に壁画として商品が描かれているように見えますね。これほどまでに精巧なパロディー広告はそうはありません。
名画をモチーフにした3作品、実によくできていました。誰もが目にしたことのあるものに目新しいものを加えることで、人々の先入観を打ち破り、意外性とユーモアが見る側へ強く印象を残します。また、見る人それぞれがその絵からはじまる物語を想像し、見て楽しめる作品となっています。こうしたインパクトが強く話題性のある広告デザインは、SNSなどを通じ拡散されることがよくあります。
Agencia: Circus Perú Producto: Todinno Director general Creativo: Juan Carlos Gómez de la Torre Redactor Charlie: Tolmos Director de Arte: Yasu Arakaki Director de cuentas: Luciana Pigati Director de fotografía: Alex Freundt Productor de Agencia: Renzo Zuleta Post Producción: Midas Art Studio
人々の営みに溶け込む、巨大飲料の広告
密林の中、流れ落ちる滝。滝壺には色鮮やかな鳥や蝶たちが飛び回っています。まさに秘境と呼べるようなそんな風景に異様なものがそびえ立っています。巨大な炭酸飲料です。異様と言っても、背景に輝く日の光を受け光り輝くその姿はすでに景色の一部。湖の中に立つ巨岩といった風情です。まわりを漂うカヌーに乗る人々もその存在に違和感など覚えている印象はまったくありません。
これも3Dレタッチで作られた広告デザインです。ボトルのシズル感とこの熱帯の雰囲気がよく合っています。圧巻の制作過程を動画でチェックしてみましょう。
こちらは夕暮れの海とボトルを背景に踊る若い男女。この作品も、ボトルを介した光の表現が素晴らしく美しいです。
ボトルをやぐらに見立てカーニバルが行われています。空には花火が上がりとても華やかな風景。ここでもボトルは人々の営みの中に溶け込み、風景の一部となっています。
これら3作品に共通するのは「違和感がないことに対する違和感」。画像の中にいる人々は、この巨大な炭酸飲料に対して何ら違和感をもっていません。当たり前の日常風景としてこの異物を受け入れていることが、見ている側が受ける強烈な違和感となっているのです。画像の美しさに加え、この違和感が広告を見る人に強い印象を残すポイントとなっているのです。
Cliente: The Coca- Cola Company Perú. Producto: Inca Kola. Agencia: McCann Lima. DGCs: Nicolás Romanó / Mauricio Fernández-Maldonado. Dirección de Arte: Christian Silva. Redacción: Frank Martí. VP de Cuentas: Andrea Rosselló. Supervisora de Cuentas: Chio Moyano. Producción: Carla Dextre Fotógrafo: Jaques Ferrand. Casa Realizadora: LAFÓRMULA still & motion.
どのグラフィックも通常にはありえない、非現実の世界を精巧に作り出していましたね。
本来、不自然であることが自然なかたちでそこにあることに、人は違和感を覚えます。そのような広告デザインは必ず目を引き話題になることでしょう。技術の進歩が目覚ましい昨今、3Dレタッチの世界はもっと手軽に身近になっていくはずです。これからどんな意表を突いた作品が登場してくるのか楽しみですね
created by : Midas Art Studio ( Peru )
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