スペインのバルセロナを拠点に活動しているデザインスタジオTATABI Studioの作品をご紹介します。同スタジオのミッションは、最高のブランドイメージとコミュニケーション戦略を提供することです。公式サイトには、「魂を込めてブランドを作り上げます(we create brands with soul)」という言葉も見られます。
主なサービス内容は、ブランディングやグラフィックデザイン、ウェブデザイン、パッケージデザインなどです。同スタジオの作品を見ると、プロダクトやサービスにシンクロしたデザインで、非常に巧みにブランディングがおこなわれているのがわかります。デザインのトーンは全体に洗練されていて、ゆとりを感じさせる上品さが特徴です。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。(Thank you, TATABI Studio!)
ポップコーンのちょっぴりゴージャスなパッケージデザイン例
最近ポップコーンをいつ、どこで食べましたか。映画館やテーマパーク、イベント会場、年中行事の屋台など、ポップコーンを食べるシチュエーションは、多かれ少なかれ非日常の色を帯びているように思います。
電子レンジ用ポップコーンのひとクラス上のブランド
お気に入りの映画を自分の家で楽しむときにも、気分を上げるためにポップコーンとドリンクを準備するというひともいると思います。そんなときに便利なのが電子レンジ用ポップコーンです。ブランドDiz-Diz Popcornは、パルメザンチーズ、カレー、シナモン、バニラの4つのフレーバーの電子レンジ用ポップコーンを販売しています。
このシリーズのパッケージデザインをDiz-Diz Popcornは、TATABI Studioに依頼しました。ポップコーンはカジュアルなお菓子ですが、Diz-Dizのポップコーンはグルメなラインの商品で、見た目にも華やかな雰囲気を持っています。競合との差別化を図るために、Diz-Dizが要望したのは、ぜいたく感のある楽しいデザインでした。カラフルであると同時にエレガントなパッケージが求められたのです。
コンセプトは神々のポップコーン
クライアントの商品のポジショニングに見合った解決策として、TATABI Studioが考えたデザインコンセプトは、ギリシャ神話をベースにしたものでした。すなわち、「オリンポス山の神々がポップコーンを食べるとしたら、それはDiz-Diz Popcornだ」というものです。そして、そのコンセプトを視覚化するために、大理石模様とメタリックな素材をキーとなる素材として選択しました。
日本の贈答品などでは標準的ですが、海外の包装としては珍しく多層構造になっています。大理石の板のように見える外装を開けると、メタリックな袋が顔を出します。4つのフレーバーに合わせた、ゴールドやシルバーなど4色の袋には、サンセリフ書体のテキストがかっちりとレイアウトされています。一般的なポップコーンのパッケージデザインとは印象がずいぶん異なります。
フレーバーの表示の仕方も一風変わっていて、どのフレーバーの袋にも4つともリストアップされていて、該当する名前だけが太いウェイトで記されているというものです。
ポップコーンが入っている紙の容器も大理石模様です。この容器は真上から見ると星型に見えます。また、横から見ると大理石の花器から背の低い花が顔をのぞかせているようにも見える、とても凝った作りになっています。全体に、非常にラグジュアリー感のあるパッケージングで、ちょっとあらたまったパーティーに出しても場にそぐわないということにはならないでしょう。
コピーライターのためのミニマルで写実的なロゴデザイン
フリーランスのコピーライターAbel CasadoのためにTATABI Studioがユニークなロゴを作りました。要素としては、名前の頭文字であるAとC、それにフキダシです。しかし、このようなシンプルな要素であっても、あしらい方次第でメッセージと強い印象を与えることができます。このロゴはその良い例といえるでしょう。
アウトラインのAが重ねてあるのは、ノートやメモの象徴でもあるからです。コピーライターは、大量の資料を読み、キャッチコピー案を何本も書いてクライアントの要望にこたえます。また、Cは名前の頭文字であると同時にコミュニケーション(communication)の頭文字でもあります。このCをフキダシに入れることで、Casado氏がクライアントと密にコミュニケーションをとることが表現されています。
プロジェクトのプレゼンテーションを見ると、インクがしたたり落ちた汚れがビジネスカードやステーショナリについています。Casado氏の仕事やロゴのコンセプトがうまく表現されています。もちろん実際のビジネスカードには汚れはついていませんが、はじめからインクの汚れも一緒に印刷しても面白いかもしれません。
サステナブルなハミガキ製品のパッケージ&コンセプトデザイン制作例
プロダクトデザイナーとのコラボレーションで、TATABI Studioは、自然派ハミガキ製品のコンセプトプロダクトをデザインしています。そのパッケージは、地中海に浮かぶメノルカ島に着想を得たユニークなものです。メノルカ島は、マヨルカ島やイビサ島ほどメジャーではありませんが、その分、透きとおった海と白いビーチが楽しめる隠れたリゾートです。
動物や魚がゴミ袋をのみ込んだり、マイクロプラスチックの増加など、プラスチックが自然環境に与えるダメージが問題になっています。無駄なプラスチック削減のためのひとつのアイデアとして考えられたのが、環境負荷の小さなハミガキペーストのコンセプトモデルです。ブランド名は「Iki」。まったくの推測ですが、もしかすると日本語の「息」からとられてネーミングかもしれません。
ミントやローズマリー、セージなどのハーブ、粘土、海塩といった天然成分から作られたハミガキ用ペースト。それに組み合わせるのは、プラスチック素材が使われていない歯ブラシです。そして、ペーストを入れる容器は再生プラスチック製ですが、使い捨てではなくペーストを詰め替えられるような作りになっています。
ブランドロゴは幾何学的でシンプルなデザインです。Kのアームが波しぶきのようになっているところがほっこりします。ペースト容器の上部とリフィル部は、素焼きの焼き物を感じさせる仕上げでオーガニックなタッチを演出しています。また、どことなく愛嬌のあるシルエットは、美しいビーチで遊ぶカモメをモチーフにデザインされました。
ファッショナブルなビーチパラソルのための手ざわり感のあるブランディング制作例
こちらもコンセプトデザインのプロジェクトです。架空の「Omba」というブランド名を設定しておこなわれた、都会的に洗練されたビーチパラソルのプロダクトデザインとブランディングです。
砂紋のように見えるパラソルの模様は手描きされたものです。縁飾りとのコントラストによって、軽やかで都会的なプロダクトになっています。手描きのパターンは、ブランディング用のほかのツールにも展開されています。
このプロジェクトでは製品カタログも作られました。このカタログのデザインは、プロダクトのトーンを伝えるうえで非常に重要な役割を果たします。糸でとじた手作りパンフレットは、糸と同じ色の紙で大切に包装されています。パラソルそのものを手にする前から、プロダクトのトーンとスペシャルな感じが伝わってきます。
海辺のそよ風にゆれる布、あるいはゆったりとした波を思い起こさせるワードロゴは、小文字で組まれているので、あたりのやわらかいプロダクトデザインにマッチしています。
design : TATABI Studio (Valencia, Spain)
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