買い物に行き、陳列棚にずらりと並んだ商品を見て、皆さんが一つの商品を選択する基準はどんなことでしょうか。お馴染みの愛用品はともかく、同等レベルの品質の商品から一点を選択する手助けとなるのは、知っている会社のロゴであったり、ネーミングが面白くて興味を持ったりと様々ですが、独創的で素敵なパッケージデザインを見て思わず立ち止まってしまった、という経験をお持ちの方も少なくないかと思います。
パッケージデザインの目的は、瞬間的に人の目に留まり手に取ってもらうこと。商品の特徴や価値を視覚的に伝え、他の商品との差別化をユーザーに認知してもらうのがパッケージデザインの役割です。また、素敵な包装だから中の商品も素晴らしい・美味しいに違いない、というユーザーの購買心理や行動に影響を与えることのできるのもパッケージなのです。 商品とユーザーを繋ぐ第一の接点であるパッケージはブランディングにも大いに関わる大切なデザイン媒体で、適切で効果的なデザインを施す必要があります。 今回は、食品・嗜好品の数々の魅力的なパッケージデザインを発表しているQUZEND design & developmentの仕事をご紹介します。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, QUZEND design & development!)
QUZEND design & development社は、ロシア西部の都市サンクトペテルブルクを拠点に活動を展開しているグラフィックデザイン事務所です。「あなたのビジネスのために、優れたデザインをクリエイトする」を事務所のモットーとし、世界各地のクライアントにブランディング・パッケージデザイン・WEBデザインを含む様々なサービスを提供しています。
世界観を伝えるコーヒー豆のパッケージデザイン
はじめに見て頂くのは、コーヒーのパッケージングプロジェクト『COFFEE TERRA』です。 コーヒーと言えば、地域を問わず世界中で沢山の人たちに愛されている嗜好品ですね。生豆の選別がされ、正しく抽出されたグルメコーヒーのブームが世界的に流行している中、そのパッケージデザインにも多大な関心が寄せられているのが現状です。これに伴い、ここ近年のコーヒーのパッケージのデザインレベルは全般的にとても高くなってきています。もちろん出来上がるコーヒーそのものが美味しいということが大前提ですが、豆の栽培産地やロースト方法、コーヒーブランドから提案するライフスタイル、ショップがあればそこに集う人のコミュニティ感など、コーヒーを通じて展開される世界観を図柄に落とし込んだ洗練されたデザインのパッケージがよく見られます。
QUZEND社の提案するパッケージデザインにも、世界各地から選び抜かれた新鮮な豆をローストしたという特別性や、味わいの深さを感じさせられる数多くの要素が盛り込まれています。 デザインのベースとなるのは、淡い水彩画で描かれたようなコーヒーの木のイラストレーション。このイラストレーションとあぐらをかいてリラックスしながらコーヒーを満喫する人物像をマークとしたロゴが、豆のパッケージやテイクアウト用のカップなどCOFFEE TERRA社の全てのパッケージデザインに用いられています。
コーヒー豆のパッケージのカラーリングには、背面部分に茶色、情報を明記する部分はモノクロームを採用。ちなみに、一般的な傾向としてコーヒー豆のパッケージに茶色が利用されるケースは多く、茶色がコーヒーそのものやナチュラル感を彷彿させるところからきています。
包する豆の情報には、栽培地域、コーヒー豆の苦みや酸味などの味チャート、利用できる抽出機器など、世界地図や各種アイコン的なイラストレーションを用いながらわかりやすくラベルのように構成され、ビジュアル的にも美しく仕上がっています。
誠実で落ち着いたテイストのこのパッケージは、高品質できちんと工程を踏んで製造されたコーヒー豆を連想させ、パッケージデザインの正しい効果を奏したデザインと言えるでしょう。
土地の文化やカラーを取り入れたラベルデザイン
次に見て頂くのは、『e-liquids “Indian’s Fog』のパッケージです。 「e-liquids」は様々なリキッド(味)が楽しめる電子タバコのフレーバーです。その種類は、タバコ味だけではなくフルーツ系やスイーツ系、メンソール系などバラエティーに富んでいます。世界的に大流行の兆しを遂げる電子タバコフレーバーに、QUZEND社は『Indian’s Fog (インドの霧)』と称したシリーズのラベルデザインを試みました。 フレーバーのラインナップは四種類。それぞれのフレーバーは赤青黄緑系の基調色四色のラベルの色と対応し、 味の違いを表しています。
真紅のラベル「delawere」 はフレッシュブルーベリーとクリームのホームメイドケーキ味、水色の「sheyenne」はキャラメルのグラッサージュがプラスされた瑞々しい青リンゴの味、緑色の「navajo 」はナッツとジューシーなスイカを混ぜ合わせた冷たいドリンク味、そして黄色の「kiowa 」は桃とブラックベリーのネクターを加えたホームメイドのレモネード味となっています。カラーリングがはっきり分かれているので、一目で味の違いが把握できるようになっていますね。
「インドの霧」というシリーズの名称に沿って、ラベルデザインの中心となったイラストレーションのモチーフはインド人が神聖な生き物としている牛の頭蓋骨を採用。オーナメントの羽飾りを雄牛の頭蓋骨に付けたインドの民族装飾をベースにし、シンプルかつポップにアレンジしてできたのがこのイラストレーションです。手描き風のタイポグラフィーで綴られたIndian’s Fogのテキストや、ラベルの下段に配置された民族装飾のパーツとも同調し、一体感のある様相を創り上げています。
オーガニックフルーツチップスのパッケージデザイン
こちらのデザインは、乾燥フルーツチップスのパッケージです。 昨今の大規模な食糧生産の技術的進歩や最適化に伴い、世の中に出回る食品の95パーセントは防腐剤や化学添加物、味を増強する香料、過剰な量の糖分を添加した食べ物となっています。特に軽食・スナック菓子は、添加物の影響を顕著に受けやすい食品のひとつです。
しかし、食の安全性や健康への意識が年々高まる今日、改めて有機的な自然食の重要性が問われ、健康志向のトレンドが全世界的に広まっています。 このような現状の中、「Frustiefood」社が提案するのは、砂糖、遺伝子の組み替え物質、またあらゆる化学物質を一切添加することなく、天然のフルーツやベジタブルを薄くスライスし自然乾燥させたチップスです。気軽に食べられるスナックで、手を汚さずいつでも何処ででも味わうことのできる大変健康的な食材です。
QUZEND社はこのフルーツチップスのパッケージデザインを提案しました。 まず目につくのは、各種のパステルカラーで構成された豊富なフルーツのラインナップ。爽やかで優しい色調のカラーリングから、「自然食」「オーガニック」「健康」などのキーワードがイメージされます。
こちらのパッケージデザインも前述のIndian’s Fog同様、パッケージを見ただけで中身を推察できるようになっています。オレンジがかった黄色のパッケージにはパイナップルのチップス、橙色にはオレンジ、赤色はピンクグレープフルーツ、黄緑色は洋ナシ、黄色はレモン、そして緑色はグリーンアップルのチップスと、ロシア語の文字が読めなくても色とバックに記されている果物のイラストレーションで認識できます。
それぞれ彩度を上げたカラーで塗られた中心の正円にはFrustiefood社のロゴと内包するチップスのフルーツ名 、そして「フルーツチップス」「添加物なし」のテキストもセンス良く配置され、シンプルながらもメリハリのある人目を惹くデザインとなっています。
オーガニック化粧品のラベルデザイン
最後は、オーガニック化粧品『Elemi』のラベルのデザインです。 一般的にオーガニック化粧品とは、農薬や化学肥料を使わず遺伝子操作をしない有機栽培によって育たられた植物・精油から作られた化粧品を指します。
エレミ(Elemi)はフィリピンに自生する樹木を意味し、その樹木からとれた100%の樹脂に他の天然成分の素材を組成して製造されるのがこの商品で、QUZEND社はこの化粧品シリーズの新しいラベルのデザインを提案しました。
Elemiの天然精油に、有機栽培のフルーツや植物などをそれぞれ組み合わせた各種のエッセンシャルオイルやアロマオイルがこのシリーズのラインナップ。ラベルデザインの基本となったのは、Elemiの葉と使用されるレモン・ローズマリー・カカオ・ライムなどのイラストレーションです。美しく繊細に描き込まれたこのイラストレーションは丁寧な仕事や質の高さがイメージされ、化粧品そのものの品質イメージをアップさせる様相です。また、光沢がかったラベルの紙からは、製品の稀少性も感じさせられます。 カラーリングには淡いトーンの黄、緑、青色が採用され、「自然との調和」や「身体に優しい」印象を与える配色です。
全体的に、穏やかなテイストの中にも高級感が伺えるデザインに纏められており、Elemi製品のアイデンティティーを忠実に反映したデザインです。
まとめ
QUZEND design & development社のパッケージデザインは、対象となる商品を明確に伝えるために内容に見合ったモチーフやカラーリングをスマートに使い、視覚的に統制のとれたデザインを創造していることが特徴です。 パッケージデザインを一目見ただけでその商品の品質や魅力をダイレクトに感じさせ、どの年齢層の消費者にも共感されるテイストを想像するQUZEND社のデザインの仕方は、パッケージデザインの正攻法と言えるのではないでしょうか。
design : QUZEND design & development (Russia)
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