「brado」ポルトガル語で「叫び」という意味の言葉です。ブラジルのデザイン事務所 BRADDA design は、この「brado」が自分たちのマニフェストだと言います。太古の昔から人々は自身の思いや情熱を信念として心に刻んできました。その信念の元に動くとき、人々はその信念を声にだし、叫びに変え思いを伝播していきました。やがて、叫びは形をもち旗になります。その旗を目印に同じ信念をもつ人々が集まり、やがては力になる。そのような人の営みこそがブランドの原点ではないのでしょうか。
BRADDA designは、ブランディングの原点を見つめ、ビジネスの礎となるアイデンティティの創出に力を入れています。プロジェクトチームは、創意工夫、責任のある仕事、親密なコミュニケーション、完璧なデザイン力の4点を柱に掲げ、国内外の企業からのオファーに応え続けています。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, BRADDA design! )
登山をキーワードにデザインされた、ビジネスコーチングサービスのロゴ作成例
「Alpp」は中小企業向けにはじめられたビジネスコーチングサービスの名称です。アプリを通じ、ビジネスを成功に導く事業戦略をレクチャーする画期的なシステムです。このサービスの立ち上げに際し、ネーミングやロゴデザイン、ブランディングが考えられました。
このビジネスコーチングの使い方は至ってシンプル。アプリを介して配信されてくる情報を受け取り、それを実践していくだけ。アプリケーションとしての使い方はシンプルですが、実際にビジネスにおいて成功するためにしていかなくてはならない「実践」の部分はそう簡単ではありません。この事業にとって主人公となるのはビジネスマン。ビジネスマンたちが“成功”というゴールに向かって進んでいく、それがストーリーです。そして、その傍らで成功へのガイドや必要なツールを提供していくのが、このコーチングシステム。
この関係性は何かに似ています。勇者が冒険に出かけるロールプレイングゲームや、高みを目指すプロスポーツプレーヤー…これらいくつかの候補の中からブランドのコンセプトに非常に近いものとして、険しい道を物ともしない山頂を目指す「登山」をモチーフにすることになりました。ユーザーはビジネスの頂を目指すアルピニスト、Alppは、ユーザーをサポートし、必要なツールを提供するガイド。サービス名を「アルピニスト」と「アプリ」の両方をイメージさせる「ALPP」とし、ロゴデザインが進められました。
ロゴタイプは丸みを帯びたオリジナルのサンセリフ体で作られました。親しみが持て、尚且つ近未来的なフォルムでもあります。ポイントとなっているのは頭文字「A」です。業績の上昇を象徴する矢印と山の両方を象徴しています。
アプリ内のグラフィックやポスターデザインなどに登場する際、「A」の中心にあるグリーンのラインはぐんと伸び、上昇のイメージを強く抱かせます。ポスターにあるキャッチコピーは、ポルトガル語で「あなたを次のレベルへ導く」と書かれています。まさに登山におけるガイドのようにビジネスでも同様の役割を担っていることがわかりますね。
ビジネス指南をわかりやすくビジュアル化するために、アプリの世界から抜け出てきたようなデジタルな雰囲気漂うキャラクターたちが、さまざまなビジネスシチュエーションを解説しています。ブランドカラーである、先進的なイメージの鮮やかなグリーン、冷静で理知的なブルーで世界観を統一しています。
「迷路」をモチーフに構築されたビジネスコーチングサービスのブランディング
「Norden」はドイツ語で「北」を意味します。地図やナビゲーションではいつも「北」を上にして見ることが多く、また北の空に輝く「北極星」は旅人をいつでも正しい方向へと導いてくれます。Nordenはフランチャイズカンパニー向けのビジネスコーチングサービス事業を主にしています。フランチャイズの起業主の多くは、事業を興すのが初めてであったり、異業種からの転職等でビジネスの経験に乏しい方が多いと、ユーザーを対象にした調査から明らかにされました。Nordenは、そうした確固としたリファレンスを持たないフランチャイズ起業主にとって「導き」の存在になるべく、北の意味をもつ「Norden」という名前を得たのです。
成功という道のりへの挑戦という意味でイメージが重なる「迷路」がNordenを象徴するモチーフとして選ばれました。入口と出口が必ずあり、迷いながらもゴールへ到達する様はビジネスの歩む道と同じ。そして、その迷路を効率よく進むナビゲーターとなるのがNordenです。ロゴマークのシンボルマークとなっている「N」の頭文字を模したマークも、迷路の一片をあらわしています。また、二つの凹型はクライアントであるユーザーと、サプライヤーであるNordenをあらわし、その両者が重なることで道があらわれるという暗喩も含まれています。
ロゴマークや迷路をビジュアル・アイデンティティのベースとし、数々のステーショナリーや、webサイト、チラシなどが制作されました。情熱とクールさをあらわす、赤と黒をブランドカラーとし、シンボルマークが描く安定感のある正方形をキーエレメントとしてデザインを統一しています。
遊びゴコロを生かしたアイディアが光る、フードトラックのブランディング
子どもたちが集まるパーティーや、屋外イベントでの出店などで人気の軽食を提供するフードトラックのブランディング事例です。フードトラック「Coxinha」のオーナーは、商売よりも楽しみを優先した遊びゴコロのあるビジネスをはじめようとしていました。トラックの名前にもなっている「Coxinha(コニーシャ)」とは、ブラジル版コロッケのような食べ物で、子供から大人まで広く愛されています。
そんなCoxinhaのトラックの横に書かれているキャッチフレーズは「コシーニャは真剣なビジネスです」という、その食べ物のイメージとは真逆ともとれるメッセージ。このCoxinhaのブランディングは、イメージと言葉の矛盾を楽しむ、遊びゴコロをフルに生かした戦略なのです。
Coxinhaのロゴは、コシーニャを製造しているという想定の工場がシンボルマークになっています。まるでトラックの中が大工場であるかのような、機械仕掛けでコシーニャが生産されていく様子をイラストで描き、ショップカードやトラックのボディにデザインしています。ロゴタイプやシンボルマークも、グリッドを使い精密に作られており、この類の業種には珍しいロジカルな設計になっています。
店舗に関わる機能や役職も、「研究開発部門」「人事部」「エンジニアリング」など、工場や製品開発を行う企業で使われるようなかしこまった表現を好んで使用しています。徹底したシリアスぶりに、思わず笑みがこぼれてしまうようなユニークなブランディングです。ただ、このようにこだわった演出をすることで、他にあるフードトラックとは明確に差別化がされ、最終的には多くの人々に認識してもらうことができるという計算された戦略でもあるのです。
ビジネスライクな演出をする一方で、ビジュアル的には、ビビッドな2色を使い、印象に残るデザインを仕掛けています。この黄色と紫という組み合わせは色相環上で反対側に位置する”補色”と言われる組み合わせで、互いの個性をより引き立たせる効果をもっています。料理のコーディネイトでもよく使われており、自然界の中でもよく見られます。黄色と紫といえばサツマイモの色合いを思い起こしますね。食にはプラスのイメージとなる「美味しそう」な組み合わせです。
ハッシュタグを取り入れSNSを意識したブランディング
ブラジルの「The Shake Shoppe」はミルクシェイクをトラックで販売する移動販売車。主なターゲットは女性。50~60年代のレトロな可愛らしさを現代風にアレンジしたいというのがオーナーの意向でした。
50~60年代のダイナーを思わせる、ビビッドなピンクをベースにし、爽やかなミントブルーを合わせブランドカラーとしました。グラス柄を散りばめた背景に、ピンクのボトルのエンブレム、その中には女性らしいしなやかなラインと、はつらつとしたフレッシュなイメージを備えたサンセリフ体で書かれたロゴタイプ。そして弧を描くように添えられたタグラインには「Shake your day」とあります。
まさに現代の象徴ともいえるSNS。その情報拡散能力は衰えることをしりません。そのSNSで拡散を促す記号、それがハッシュタグ(#)です。タグラインにある「Shake your day」にハッシュタグをつけ、トラックに大きくプリントすることで、街中でトラックを見かけた人や、トラックでシェイクを購入した人がこぞってシェイクのある日常をSNSにアップしはじめました。デザイン的にも今を感じさせ、戦略的にも大きな成功を収めたこの仕掛け、現代における効果的なブランディング手法の一つといえるのではないでしょうか。
テイクアウト用のカップやPOPなど、ロゴマークと同じデザインコンセプトに基づき制作されています。持っているだけでも絵になりそうなキュートなデザインは、ターゲットである女性の心にヒットしたのも頷けますね。
まとめ
Bradda designのプロジェクトは、どれもクライアント企業が進むべき方向性を共に模索し、コンセプトに見合ったデザインや戦略を提供するという、ブランディングの根幹を重視したものでした。企業側に一歩踏み込み、ネーミングやコンセプトの設定から携わるその事業姿勢は、事務所としてのスキルが高く、また多くのクライアントから信頼されているからこそできる、ワンランク上のブランディングなのではないのでしょうか。
design : BRADDA design ( Brazil )
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