施設や企業のロゴマーク、施設のパンフレットやチラシなど、世の中には数多くのデザインがありますが、パッと目を引くデザインにはいくつかパターンがありあます。色のコントラストが強いもの、ユニークな仕掛けを施してあるもの、大きな文字やイラストで目立つものなど様々ですが、共通して言えるのは、「インパクト」のあるものです。有名な広告の法則に「AIDMAの原理」というものがありますが、最初の「A」は、まさに、「Attention」=「注意」をあらわしています。しかし、どんなデザインでもインパクトがあればいいかというと、そういうものでもありません。コンセプトに合わない目立ち方をすれば、ブランドのイメージを壊してしまいます。あくまで、ブランドの主張したいイメージでインパクトを残すことが重要なのです。
ドイツのデザイナー Luis Dilger 氏は、シンプルでありながら、エレガントで洗練されたデザインを得意としています。気品を感じるデザインというのはいくつもありますが、彼のデザインはそれだけではなく、「新しさ」を感じる革新性を併せ持っていることが大きな特徴です。施設や人物、ブランドの特性を見極め、コンセプトに則した革新的な見せ方をする、彼のデザインプロジェクトから代表的なプロジェクトを紹介します。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Luis! )
映画の発展に寄与したWilli Burthの記念ミュージアムのロゴとパンフレットデザイン
ドイツの映画技術のパイオニア、Willi Burth氏は若い頃から映画を愛し、上映技術の発展に人生を捧げました。現在の投影技術の礎となった彼の技術は、科学技術部門でのオスカーとして知られる最高位の賞を数々受賞し、故郷に錦を飾りました。 そんな彼の映画の発展と共に歩いた人生を称える記念ミュージアムの設立に伴い、ロゴマークとパンフレットのデザインをLuis Dilger氏が制作しています。
洗練と斬新さが光るミュージアムのロゴデザイン
考案されたロゴデザインは、大きく分けると2つのパーツから成ります。一つは、ロゴタイプとオスカーの半身を象ったモチーフから構成されるロゴマーク。もう一つは、大きなうねりを描くシンボルデザインです。このうねりは、画像下にも書かれている通り、ミュージアムのイニシャルである「w」と「b 、映画フィルムと、Williが発明したフィルム巻き上げ機をモチーフにしています。
従来のロゴマークのセオリーとは大きく異なるバランスと構成ですが、施設のコンセプトをしっかり押さえ、尚且つ、型に縛られない自由さと新しさをもったインパクトの強いロゴデザインです。
ロゴマークをアイデンティティとしたパンフレットデザイン
ミュージアムを案内するパンフレットは、ロゴマークのデザインをビジュアルのキーにしたインパクトの強いデザインが施されました。 表紙は、シンボルデザインのうねりを地紋のように使い、Williの歩んだ人生の軌跡とフィルムに託された長い映画の歴史を表現し、そこにオスカーを携えたロゴタイプが鎮座しています。白黒のコントラストが美しくもモダンで、オスカーのゴールドが品よく華を添えています。
トビラになる部分には、シックな赤な背景に、当時のWilliの様子がノスタルジックに写し出されています。映画館のシートを思わす赤にモノクロの写真。当時の映画館をイメージしたデザインですね。
中面は、黒を基調としたデザインに、境目なく並べられた写真の数々。スクリーンと館内の暗闇をモチーフにしたデザインに、Williの軌跡を語るテキストが並びます。
懐かしい当時の映画館の雰囲気と、現代アートに通じる斬新なロゴデザイン。その2つがバランスよく融合し、一つのパンフレットを構成しています。ミュージアムのコンセプトをデザインを通して伝える、素晴らしい制作例です。
まとめ
ミュージアムのコンセプトである、Willi Burth氏の功績を称えつつ、その仕事を現在の映画の世界へと繋ぐ革新的なアートワークが、彼の偉業を過去のものに留めない、現在進行形のイメージを感じさせることに成功しています。
Luis Dilger氏の、大胆なアイディアと繊細な配慮が『シンプルでエレガンス』というオーソドックスな見せ方を、さらにワンランク上のデザインに昇華させ、コンセプトを想定以上の表現力で形にしています。 ロゴデザインを考える時、その先にあるパンフレットやチラシ、ポスターなどの展開を踏まえ、型にはまらない大きな視野で捉えることも、時には必要なのではないでしょうか
design : Luis Dilger ( Germany )
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