美しいものを目にした時、一瞬時が止まったように心を奪われるような瞬間を、誰しも経験したことがあると思います。デザインは、ビジュアルを通して見る人へ意図を伝えるツール。とくにロゴデザインは、簡潔に伝えたいコンセプトを表し、見る人の記憶に残るようなカタチが望ましいといわれています。そのカタチには、ユニークなものやインパクトのあるもの、流行のデザインを取り入れているものなどさまざまですが、美しさも人の心を捉える一つの手段です。
スペインのグラフィックデザイナー María Hdez 氏は、女性らしい感性を生かし、ブランドのコンセプトを美しく、シックに表現することに長けています。彼女のデザインは、透明感を持ちながらも深みがあり、多くの人を魅了してきました。
どのようにして、美しく魅力的なロゴデザインが作られていくのか、実例を見ていきましょう。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, María ! )
2つの円から生まれた美しいブライダルハウスのロゴデザイン
「Las Rozas」は、戸建ての家をブライダル用に貸し出すハウスウェディングサービス。サービスを提供する際、カップルに鍵を渡すことから、鍵のカタチをロゴデザインのモチーフとしました。
ロゴの作り方
María Hdez氏は、ロゴをデザインするにあたり、クラシックな鍵の装飾をいくつも眺め、どのようにデザインに反映することができるか徹底的に研究したそうです。
その研究から浮かび上がってきたのは、「円」の存在です。クラシックな鍵の多くは、円をベースに装飾がデザインされており、安定感と優雅さをもつフォルムが完成されています。
そこで、2つの円をブランドのイニシャル「R」を象るように重ね合わせ、ロゴグリッドとし、それをベースに優雅な曲線と印象的な3本の直線が描かれました。そのフォルムは、鍵の持ち手部分の調金細工のように繊細で美しく、品格を感じるもの。鍵を表現するのと同時に、2つの円の重なりは、結婚指輪の交換も意味しています。
名刺・ショップカードのデザイン
カードなどの印刷に用いられる際は、光沢のある金色で箔押しされ、一層エレガントな装いに。一生に一度のブライダルに相応しい輝かしいデザインです。
各種アイコンのデザイン
ブランドのロゴデザインと一緒に、パンフレットなどの販促ツールに使用されるアイコンファミリーも同様の手法でデザインされています。テーマは、ブライダルにちなんだフラワーやベル、ハートや音楽など。繊細でやさしいタッチで描かれたアイコンたちはブランドの雰囲気づくりに一役買っています。
美と健康を象徴するエステサロンのロゴデザイン
スペインのメリダに開かれたサロン「Belleza y Salud」。日本語に訳すと「美と健康」を意味しています。男女の隔てなく利用できるこのサロンの魅力を広く伝えるため、ロゴデザインを中心としたビジュアル・アイデンティティが考えられました。
ロゴの構成要素
シンボルマークのベースとなったのは、「美」をあらわす花と葉、「健康」をあらわす十字のカタチ。花と葉のカタチをシンメトリーに展開し、全体を十字のフォルムにまとめています。
ブランドカラー
ブランドカラーは、女性らしい淡いピンクと、男性にも対応できる深みのある濃紺。アールデコ調のロゴマークが映える、品のある色合いです。
ロゴを活用した各種アイテムのデザイン
ロゴマークは、化粧品やパッケージ、便箋などあらゆるツールにデザインされています。ピンクとブルーをグラデーションで入れたものや、ロゴマーク同士をつなぎ合せ格子状の模様にしたものなど、さまざまな工夫を凝らし製品化されています。
シンメトリーのデザインは、安定感をもたらします。故に、展開の幅が広く、どんなデザインに取り入れても美しく収まります。ことさら、シンプルながら繊細に描かれた「Belleza y Salud」のロゴマークは、大きさや形状を選ばず、どんなツールになってもその存在感を際立たせています。
業績の成長をイメージさせる金融サービスのロゴデザイン
保険や金融商品を扱う「cheshill」。ロゴタイプは一見すると、カタチを整えられたクラシックなただのセリフ体のように見えますが、そのフォルムは、景気や業績の成長をコンセプトに据え、計算されたロゴデザインなのです。
ロゴに込められた意味
金融機関のパンフレットなどには必ずと言っていいほどよく登場する棒グラフ。市場の動向や業績の推移などを表わすのに多用されています。一般的に、右肩上がりで上昇するほど業績がよく、成長または好転していると捉えられます。Cheshillのロゴデザインは、この右肩上がりのグラフをコンセプトに考えられました。
Cheshillの「ill」を棒グラフに見立て、斜め60°に一直線になるようにカットし上昇線を描いています。また、2か所ある「h」も同様に斜めにカットし、全体の印象を整えています。
ブランドカラー
カラーは、ベージュと濃紺の2色を使い「ill」の部分を紺色で彩色することで、「右肩上がり」の印象を強めています。カードやウェブサイトなど、ロゴタイプを使ったブランディングでは、クラシックで品格のあるセリフフォントと、アーバンな色合いを使うことで、都会的で洗練された印象を表現することに成功しています。
まとめ
どのロゴデザインも、美しく品のあるデザインでしたね。María Hdez氏の素晴らしいところは、ただ美しいだけではなく、ブランドに関わるデザインはすべてコンセプトに根差し、デザインを使って表現することで、そのコンセプトをより鮮明に、そして上品に昇華させている点です。そのように、豊かに表現できるのは、コンセプトについて理解を深め、デザインに着手する前に、リサーチや下調べを怠らないからではないでしょうか。
どんなにデザインに精通していても、ブランドに関する理解が足りなければ、上辺だけのビジュアルづくりで終わってしまいます。デザイナーは次から次へと案件をこなすことが多い職種ですが、どの案件にも情熱を注ぎ、ブランドが伝えたいメッセージを理解して、代弁できるデザインを生み出すことがデザイナーの使命の一つなのかもしれません。
彼女の仕事を参考に、コンセプトを明確に美しく表現できるロゴデザインを作っていきたいですね。
design : María Hdez ( Spain )
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