
紅茶の国として有名なイギリス。実はコーヒーが大変好まれています。街中のカフェでは多くの人が家族や友人と過ごす時間を楽しみ、家庭でも好みのフレイバーのカプセルを挿入して1杯を作るエスプレッソマシーンが浸透しています。
そして、スーパーマーケットでも人気ブランドのコーヒーが買えるなか、日本のUCC上島珈琲がUESHIMA COFFEE COMPANYとして登場しました。
このコラムでは、日本を意識したUESHIMA COFFEE COMPANYの美しいパッケージを紹介します。
UCCの海外向けパッケージに見る「日本ブランドであることの視覚的な打ち出し方」
UCCのイギリス向けパッケージでは、「日本のコーヒーブランドであること」が視覚的に打ち出されています。日本語のテキスト要素、和を感じさせる配色、日本の美意識を反映したレイアウト。海外市場において「日本ブランドであること」自体が差別化要素になる場合、それをパッケージでどう表現するかが設計の核心です。
ただし「日本っぽさ」の表現は、やりすぎるとステレオタイプになり、控えすぎると日本ブランドであることが伝わりません。UCCの事例は、日本語テキストをデザイン要素として洗練された形で組み込むことで、「ステレオタイプではない日本らしさ」を実現している点が参考になります。
UCC上島珈琲の歴史を知ろう

Meiji – stock.adobe.com
上島忠雄商店として兵庫県神戸市に創業したのが1933年。その後、1951年に上島珈琲株式会社として設立、同時に東京支店も開設されました。
1969年に世界で初めて缶コーヒーを開発したのも上島珈琲ですし、1972年には業界初の家庭用レギュラーコーヒーのテレビコマーシャルを始めたという、ユニークな歴史を持つ老舗珈琲店だということを改めて感じさせられます。
80年代にはジャマイカに直営農園を作ったり、ブラジル、シンガポールやタイで海外ビジネスの展開が始まりました。国際的なビジネスはさらに拡がり、2018年にUCC International株式会社が設立されたのです。
上島珈琲は「妥協を許さず完璧を追求する」という日本の匠の思想を持ち、コーヒー一杯一杯にそれらを凝縮しています。
UESHIMA COFFEE COMPANYがイギリスに登場

2021年1月26日、日本のコーヒーブランドが「UESHIMA COFFEE COMPANY」としてイギリスに上陸しました。オンラインでの購入の他、Waitroseという王室御用達のスーパーやロンドンの寿司店などとパートナーシップを結んでいます。
Decades of culture, 87 years of craft, 10 minutes for you(数十年に渡る文化、そして87年のクラフトヒストリーを10分で)というキャッチコピーがありますが、UCC上島珈琲ならではの魅力が付加価値となっています。
上島珈琲は日本独自の職人文化を1杯のコーヒーに注ぎ込んできたとともに、環境を考慮する変化への柔軟性も持ち合わせています。
サステナビリティはコーヒーの作り方だけでなく、パッケージにも取り入れられています。廃棄を最小限に抑え、容易に100%リサイクルができるように考慮されました。
様々な商品やサービスにサステナビリティが取り入れられることが一般的になったイギリス。UESHIMA COFFEE COMPANYにとってもパッケージはそのデザインだけでなく、企業の理念を表現することを可能にしたと言えるでしょう。
UESHIMA COFFEE COMPANYのラインナップ

UESHIMA COFFEE COMPANYのラインナップを紹介します。
コーヒー豆、グラウンドコーヒー、ネスプレッソに使えるカプセルタイプそしてコーヒーバッグが用意され、日本を意識したネーミングによってイギリスの他メーカーとの差別化を図っています。
ブレンドは以下の3種類です。
・House Blend – ハウスブレンド
・Fuji Mountain – 富士山
・Tokyo Roast – 東京ロースト
日本をあまり知らなくても、富士山・東京というワードは多くの層をカバーします。これからのラインナップもどんなネーミングになるのか期待されます。
日本の美、こだわりのミニマリズム
UESHIMA COFFEE COMPANYのコーヒーパッケージは究極のミニマリズム。デザインブランディングはロンドンのTHE CLEARINGが担当、「完璧を追求」を打ち出しました。
長い歴史と先端技術がぶつかり合う緊張感のあるデザインに使われる色は、黒の文字と赤のサークルのみ。日本の国旗と同様の色使いが白地のパッケージに映え、スタイリッシュなイメージをだしています。シリーズ化された商品は、モダンなシンプルさが逆にスーパーマーケットの棚で目立つ効果を大きくしています。
パッケージに書かれている情報もとてもシンプルです。
・UESHIMA COFFEE COMPANY
・KOBE 1933
・Fuji Mountain
・富士山
・コーヒーの種類
・コーヒーの濃さ


UESHIMA COFFEE COMPANYのデザインは、外国人から見た典型的とも言える日本をよく表しています。
そして、もうひとつ特筆したいのがKASHUŪ氏による「書」のイメージです。
書道家KASHUŪ氏の「書」によって完成するパッケージデザイン
UESHIMA COFFEE COMPANYのパッケージデザインのメインとも言えるのが、それぞれのコーヒーに使われている「書」です。
これらの書は書家である佳萩(かしゅう)氏によるものです。佳萩氏はロンドンを拠点に、精力的に書の心を世界に伝える活動をしています。
エレガントかつ斬新な筆の動きによって勢いを感じるとともに、UCC上島珈琲が現在まで大切にしてきた職人の技を表現するセンスが活かされていると言えるのはないでしょうか?
気軽に日本の老舗コーヒー店の味を海外で
コーヒーの味はもちろん、イギリスといえば紅茶、日本といえばグリーンティといったイメージを払拭するかのようなUESHIMA COFFEE COMPANY。そのパッケージはミニマリズムだからこその美しさを持ち、日本が好きな外国人、興味を持つ人にとって魅力的で受け入れられやすいデザインとなっています。自宅のキッチンにシンプルな美のコーヒーパッケージが置いてあれば、それだけでも気分が上がるでしょう。
匠の思想を持ち続け、長い歴史を大切にしつつも新しい世界に挑戦するUESHIMA COFFEE COMPANY。同じく歴史を持つイギリスで、職人の心意気はコーヒーのパッケージとともに大いに受け入れられるのかもしれません。
「UESHIMA COFFEE」と英字表記にすることの戦略的意味
UCCがイギリス市場では「UESHIMA COFFEE」というブランド名で展開していることは、パッケージ戦略上の重要な判断です。「UCC」というアルファベット3文字の略称よりも、「UESHIMA」という固有名詞の方が「人名に由来するブランド」としての物語性を持ち、クラフト感や創業者の想いを連想させます。
ブランド名の表記をローカライズする際、「略称」と「正式名」のどちらを選ぶかで、消費者に与える印象は大きく変わります。略称は覚えやすいが無機質、正式名は覚えにくいが物語性がある。市場環境とターゲットの嗜好に応じて、「この市場ではどちらの表記が響くか」を判断する必要があります。

<プロフィール> ビスコム
ロンドン在住ライター。イギリスに住み、さらに強くなったデザインやアートへの興味をライティングに活かす。インテリアにも食指が動き、Edward BulmerやWilliam Morrisのセンスに憧れる。剣道道場運営やボランティア活動も行ない、バランスのとれた在英生活を満喫中。
※掲載商品・パッケージ等のデザインは当サービスの制作実績ではありません。
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