Akram William 氏のデザインの特徴
Akram William 氏はエジプトのグラフィックデザイナー・アートディレクターです。彼のロゴは抽象よりも具象、フォントそのものにデザイン性を持たせ、ロゴ全体として絵画的な視覚効果を演出しています。
また、作風としてはポップでファンキーなものが多く、2016年ごろの作品ではスタイリッシュなものもいくつか見受けられますが、現在手がけているロゴの多くは、ゲームやキャラクターデザインまで込みのポップカルチャー的なデザインを取り扱っています。パーソナルロゴとしてポップな似顔絵も作成されていますね。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Akram ! )
キャンディをモチーフにしたポップパンクなロゴデザイン
こちらは氏の作品の中でも、後述の「Zombie COCKTAIL」同様、キャラクターデザインまで包括して一つの作品を作り上げているロゴデザインです。お菓子というモチーフから連想される甘さを思わせるショッキングピンクに、影を同系色の赤を多く含む紫で作り、ロゴに統一感を出しています。
キャンディは一般的にカラフルなものが多いですから、ロゴデザインは統一感を持たせておくとロゴと商品を相乗効果で引き立て合うことができます。また、食欲をそそる赤系統の配色に、キャンディという人工物ならではの光沢感をつけて「Candy」の文字をデザインさせています。文字や最背面のキャンディから滴る雫も、キャンディが私達の舌を誘惑する様子を見事に表現しています。
ゾンビがテーマながらおどろおどろしさのない、明るく元気なロゴデザイン
こちらも先程の「DIRTY Candy」同様、キャラクターデザインまでを包括したデザインが作られています。ゾンビは多くの映画やゲームで緑色をしており、やはり緑を基調としていながら、黄色を交えた明度の高いグラデーションにしていること、まるで文字が踊っているような軽妙なデザインをしています。「COCKTAIL」の方も漫画のような気づき線を使用することで、明るく元気なイメージを出しています。
ゾンビというテーマはこれまで幾度となく使用されてきたイメージですが、おどろおどろしさを抑え、明るく元気なイメージをつけることで、我々の最も身近な存在である日用品とミックスされたキャラクターデザインを可能にしています。 日用品がお化けに変化するというイメージは、日本の妖怪にも通じるものがあり、子供向け作品ではよく見られる演出です。遊園地やアミューズメントパークなど、活用法は多々ありそうです。
シンプルかつ読みやすい、子供服ブランドのロゴデザイン
キッズファッション&アパレルのロゴデザインで、こちらはブランド名のみを全面にはっきりと押し出した文字のみのデザインです。アパレル系のブランドではやはり名前を覚えてもらう、ロゴを覚えてもらうことが重要になりますから、見やすく読みやすく、シンプルなデザインのロゴが非常に視覚的に印象に残ることでしょう。
ロゴデザインによるブランディングは、視覚的にはっきりと印象づけることの他に、企業の持たれたいイメージがはっきりと表されているものでなくてはなりません。今回はキッズファッションですから、可愛いこと、男児女児どちらにも使いやすいもの、また、服によってカラーを変える必要がある可能性がありますから、そうした場合に対応しやすいこと、などが求められます。つるつると丸みのある光沢感がありながら、使われている色数は決して多くないこのデザインは、そんな要望を全て満たしていると言えるでしょう。
遊び心満載のキャッチーなバーガーショップのロゴ
レストラン・バーガーショップのロゴです。こちらは線も色数もシンプルなものを使用することで、BURGUR+GUARDというユニークな発想に違和感を抱かせず、調和の取れたデザインを実現しています。少ない線で描かれたハンバーガーの最上段に、パティでなく騎士の甲冑が乗っている様は、下にさりげなく、しかし読みやすいフォントで書き添えられた単語を読んで意味がわかった瞬間に、見る者の心に強いインパクトを残します。
人は全く未知のものより、既知のものに親近感を抱きやすいものです。先んじてイラストと単語の組み合わせで「理解した!」という体験を生むことで、カジュアルな飲食店として一歩身近な存在になっているといえます。
冒険の始まりを予感させる、ゲームのロゴデザイン
ゲームのタイトルロゴは、そのゲームの世界にプレイヤーが没入するための最初の入口となる重要なイメージを作るものです。キラリと輝く剣、歯車と鉄板でデザインされた「WORLDS」の文字はこれからの冒険の始まりを予感させ、プレイヤーにまだ見ぬゲーム世界をイメージさせるのに充分な役割を果たしていると言えるでしょう。
「WARS OF WORLDS」では、タイトルに立体的かつリアリティのある陰影のグラデーションを使用することで、飛び出してくるようなイメージを与えるのに対し、背景になっている剣や植物はあくまで平面的、2Dの世界のイラストレーションです。このようにどこを浮かび上がらせるのかによって3D/2D的視覚を使い分けることで、視覚情報の中心にタイトルが位置するようにデザインされています。
セルフ・ブランディングという姿勢のパーソナルロゴ
インターネットの発達した高度情報化社会において、情報は一方的にテレビや新聞を通じて供給されるだけのものではなく、双方向に発信し合うものになりつつあります。そこで、特にフリーランスのイラストレーターやデザイナー、コピーライターといった職種ではセルフ・ブランディングという考え方が必要になってきます。
実績やポートフォリオだけでなく、自ら自身にイメージをつけるというセルフ・ブランディングは、パーソナルロゴというデザインとマッチしています。例に挙げたものはAkram氏の自画像ですが、非常に親しみやすく、クライアントがわくわくするようなデザインを提供してくれるのではないかと期待が持てるものになっています。
まとめ
Akram William 氏のデザインはロゴに使用された単語の既知のイメージや価値観を崩すことなく、付加価値をつけるという方向性でのデザインが多く見られます。これは現在多方面で活躍している現実世界に付加価値をつけるというAR技術の考え方にも通じますが、現存する世界に少しだけ付加価値をつける、それはブランディングに際しても非常に重要な考え方の一つではないでしょうか。 地に足のついたブランディングイメージを提案できるデザイナー、それがAkram William氏なのです。
design : Akram William ( Egypt )
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