韓国のソウルを拠点に活動しているデザインスタジオMaum Studioは、飲食業から建設業までさまざな分野のクライアントにサービスを提供しています。
ブランディングを中心に、アイデンティティデザインから空間デザインまで幅広く対応。また、オリジナルデザインのステーショナリーなどのプロダクトもリリースしています。同スタジオの制作例を見ると、デジタルネイティブのポップ感と、ときにはユーモラスな親しみやすさが、ひとつの大きな特徴として感じられます。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。(Thank you, Maum Studio!)
大人気ハンバーガーショップのグッズをデザイン
ハンバーガーショップ「Shake Shack(シェイクシャック)」は、ホットドッグの移動式屋台が起源でした。ニューヨークで2004年に1号店をオープン。ホルモン剤を使わないアンガスビーフ100%など、素材にこだわった品質の良さが人気です。2015年に日本初登場で話題となりました。2016年には韓国ソウルにも店舗を開き、ブームをまきおこします。
ハンバーガーをモチーフにしたダイアリーセット
韓国シェイクシャックのために、Maum Studioはダイアリーセットを企画・デザインし、制作しました。ダイアリー、1年間のミニカレンダー、ポストイット、ペンが1セットになっています。
セットのコンセプトは、「シェイクシャックの材料はいつも新鮮」というものです。そこで、トマト・レタス・ポテト、そしてパティのイラストがダイアリーの表紙に大きくあしらわれています。セット一式を入れるケースには、パンをイメージした色とテクスチャが選ばれました。
ダイアリーセットを集めるとシェイクシャックのハンバーガーを思い出す?
ダイアリーの表紙に描かれた幾何学的でシンプルなイラストは、背表紙をまたいでいます。レタスのグリーン、トマトのレッドなどが背表紙にも見えます。ダイアリーセットをいくつか集めて、イラストが全種類そろったときに、ダイアリーを重ねて上下をケースではさむと、ハンバーガーが1丁上がり!…というわけです。
Client: SPC(South Korea Shake Shack)
Direction: Yoonji Lee
Graphic Design: Yoonji Lee, Hyunjin Lee
Date of completion: 2022.1
Photo: Juyeon Lee
緻密に構築された建設企業のリブランディング
Maum Studioが手がけた住居開発・建設企業のリブランディングは、とてもインパクトの強いものです。クライアントの業態にふさわしい緻密なデザインシステムにもとづいて、ミニマルなデザイン要素が豊かに展開されています。
ブランドコンセプト「ライフバランス」を視覚化
韓国の建設会社Daewon(デウォン)社は、住宅事業のブランドとして「Cantavil(カンタービル)」を掲げています。ブランド名のもとになっているのは、「歌うように」という意味の音楽用語「cantabile(カンタービレ)」です。居住者が歌いたくなるような幸せな家を提供する…という思いを込めて作られました。公式な説明はありませんが、おそらく「vil」は、大邸宅や別荘を意味する「villa」をヒントにしたのではないでしょうか。
快適でバランスのとれた住空間を提言するCantavilは、ライフスタイルブランドとしてアイデンティティを再構築しました。ブランドのコンセプトは「ライフバランス」です。
ブランドの価値は、「よりよい生活」「よりよいスタイル」「より高い価値」です。それを、それぞれ「シンプル(シンボル化)」「柔軟(システマチック)」「直感的(明瞭)」というキーワードに落とし込んでいます。そして、ビジュアルコンセプトを「調和」としてブランド・アイデンティティを視覚化しています。
ミニマルで力強いロゴデザイン
以前のシンボルマークは人物の躍動感を表現しているようなデザインでした。あたらしいシンボルマークは、太さの異なるバーを3本重ねたとてもシンプルなものです。しかし、たったこれだけで高層建築物を連想させるところに、巧みさが感じられます。
ロゴタイプの書体は、書体「Optima」を思わせるサンセリフ体です。太さの異なるバーを組み合わせたシンボルマークにマッチするような、垂直方向と水平方向のウェイトの差のコントラストが印象的です。グレーの色も濃くなりました。ロゴ全体に、先代よりも力強いデザインです。
「カンタービル・レッド」を中心に展開される厳密かつ柔軟なデザインシステム
カラーパレットは、「カンタービル・レッド」「カンタービル・グレー」「カンタービル・グリーン」からなっています。ブランド・アイデンティティは、このカンタービル・レッドとシンボルマークを構成する3種類の太さのバーを核にしています。
シンボルマークは3本の線で構成されています。一番細いバーに対して、その2倍の太さ…3倍の太さ…と整然とした設定です。この太さの異なる3種類の線は基本的なデザインエレメントとして、あらゆるところに姿を見せます。
たとえば、居住空間に関連するピクトグラムは、太さの異なる線で描かれています。男性・女性・消化器・Wi-Fi・リサイクルマーク・駐車場だけでなく、自転車やペットのピクトグラムも統一したデザインです。
ペーパーバッグ やマグカップ、ノート、ボックスなども同じモチーフで徹底。カスタマーはどのようなタッチポイントでも、同じブランド体験が得られます。
Client: DAEWON
Description: Brand Identity Relaunch
Project Lead team: DAEWON(Yongseok Kim, Yeonwoo Choi)
Design Direction: maum studio(Dalwoo Lee), Garam Kim
Graphic Design: maum studio(Yoonji Lee, Hyunjin Lee, Jaewon Chung, Kyungryun Ju Han, Jaewon Chu
Space Design: Eunhye Oh, Munho Choi, Youngbak Jeong, Hanwool Kim
Date of completion: 2022. 4
Photo: Juyeon Lee
オリジナルキャラクターでわかりやすく説明するシステム家具のブランディング例
韓国のコロン・グローバル社は、住宅から工場までを対象とした建設分野、ITソリューションを提供する情報技術分野、材料や肥料、化学製品をあつかう商品販売部、そして輸入車販売を手がけています。
同社の「Kankan Smart Space(カンカン・スマート・スペース)」は、カスタマイズしやすくデザインされたモジュラー・ファーニチャーです。Kankan Smart Spaceを使うと、韓国のアパートの規格化された住居スペースのなかでも、居住者それぞれの生活にマッチした空間を作り出せます。
事前にシミュレートできるポップアップブック付きキット
アパートに入室予定の居住者が、Kankan Smart Spaceの組み合わせ方を事前にシミュレートできるキットを、Maum Studioが手がけました。
ライフスタイルや家族構成別に5種類のキットがあります。ひとり暮らし、カップル、子供がひとりの3人家族、子供がふたりの4人家族、高齢者カップルです。
各キットに含まれているのは、パンフレット、ポップアップブック、ハガキ、鉛筆、エコバッグです。ポップアップブックは部屋の壁と人物が立ちあがり、部屋の様子を立体的にイメージできます。
親しみやすいオリジナルキャラクター「カンカン・ファミリー」
Maum Studioは、5種類のキットに登場する居住者を「カンカン・ファミリー」としてイラストで描きました。キャラクターは、家具の側面図をヒントに作り出されたユーモラスなフォルムをしています。
キットと一緒に制作された動画では、キャラクターのアニメーションが、軽快な音楽をバックにKankan Smart Spaceの全体像をわかりやすく説明してくれます。
このカンカン・ファミリーのキットを、Maum Studioはブランド・アイデンティティ・デザインとしています。単に販促ツールキットとして制作されたのではないということです。カンカン ・ファミリーのイラストやポップアップブックなど、キットのコンセプトからビジュアルのタッチまで、ブランディングの観点から検討され、デザインされています。
Client: KOLON GLOBAL CORPORATION
Description: Brand Identity
Direction: Dalwoo Lee
Graphic Design: Yoonji Lee, Hyunjin Lee, Jaewon Chung, Kyungryun Ju
Date of completion: 2022. 3
Photo: Juyeon Lee
design : Maum Studio (Seoul, Korea)
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