コロンビアと聞いて思い浮かぶのは、コーヒーですか、それともサッカーでしょうか?「マジックレアリズム」で世界中に影響を与えたノーベル賞作家、ガルシア=マルケスもコロンビア出身です。
南米コロンビアの第2の都市メデジンを拠点に活躍するデザインスタジオInvade Designは、ブランディングを核としてサービスを提供しています。視覚化に苦労しそうなコンセプトを、柔軟な発想でわかりやすく表現できるのが、同スタジオの魅力です。※記事掲載はデザイナーの承諾を得ています。(Thank you, Invade Design!)
ファストフードからカジュアルレストランへのリブランディング
アジアを旅行した友だち3人組が、街中の飲食店にインスピレーションを得て、「123WOK」をメデジン市内でスタートしました。開業は2011年。ファストフード店舗のようなこじんまりしたものでした。デリバリーサービスもありました。
当時のロゴは、1・2・3が、ビリヤードの玉のような赤・緑・黄色の丸数字で、「WOK」は、カートゥーンフォント風の書体でした。気軽な店舗にふさわしい親しみやすいデザインです。
このロゴは3年後にリニューアルされます。丸数字の色は赤に揃えられ、「WOK」もモダンな書体に変わりました。色はグリーン。ヘルシーな料理を提供しているという意味も込められています。
ロゴを継承しつつブランドアイデンティティを刷新
さて、ビジネスは順調に拡大し、2018年に広い店舗を新たに入手しました。これを機に123WOKは、リブランディングをInvade Designに依頼します。ファストフードではなく、カジュアルレストランにふさわしいデザインが必要となったのです。
同スタジオは、丸数字とワードマークとの組み合わせは維持しつつ、ミニマルでモダンなデザインにリニューアルしました。ワードマークは、独特な曲線を持つ太めのものに変わり、丸文字とのバランスが改善されています。色はモノクロームとしました。これによって、印刷物でも店舗空間でも使いやすいロゴとなりました。
さらに、カジュアルレストランとしての「123WOK」をイラストを使って表現することで、リブランディングをおこないます。Invade Designは公式サイトで次のように述べています。
「アジアといえばミニマリズムと生真面目さを思うひとが多くいます。しかし、123WOKにとっての東南アジアは、コントラストや肌ざわり、匂い、味に満ちあふれています。それはコロンビアの土地や気候にとてもよく似ているのです」
デリバリー用のパッケージ全体に描かれているのは、料理を産んだ土地の文化や食材にちなんだイラストです。モダンな木版画風スタイルで描かれています。ミニマリズムと豊かさが融合したような独特のデザインです。
また、レストランの壁には、アジアをモチーフにした『生命の川』と題したイラストが壁画アーティストによって大きく描かれました。これまでになかった「123WOK」ならでは独特の空間が生まれ、ロゴやパッケージなどとともに、生まれ変わったブランドからのメッセージが強く伝わってきます。
抽象的なコンセプトを巧みに視覚化したビールブランドのロゴ作成例
コロンビアのビールブランド「Guardián」のロゴには、「アートと科学をブレンド(mezclas, arte y ciencia)」のタグラインが添えられています。
クラフトビール「Guardián」は、創業者がプロフェッショナルとしての知識と情熱を注ぎ、一から作り上げた完璧な製法によって生まれました。ビール造りに必要な知識と熟練という客観的な能力と、絶え間ない努力とつきない情熱という職人的な緻密な努力。ある意味で反対の極にあるふたつの要素の結果が「Guardián」なのです。
このコンセプトを、Invade Designはとてもユニークなロゴで表現されています。相異なるふたつの世界を右手と左手で象徴し、スペシャルなものを大事に包んでいます。このロゴマークは、ブランドの頭文字「G」もさりげなく表現しています。
抽象的なコンセプトを視覚化する場合、理屈っぽい説明的なデザインになってしまうケースが少なくありませんが、「Guardián」はあたたかみを感じるミニマルなシンボルマークをとても巧みに作り出しました。
コワーキングスペースのメリットを「オカシナ恋人たち」で表現
メデジン市のコワーキングスペース「Communal」のブランディングにもInvade Designは関わりました。このコワーキングスペースは、トークイベントや話し合いにも利用できます。
クライアントであるCommunalのクリエイティブチームとの協働でおこなわれたブランディングのコンセプトは「マインドセックス(mind sex)」。過激に思えますが、知識の交換によっておたがいを高め合うような深い交流を表しています。自分の持っていないものを相手に見出して、それによって成長するというコワーキングスペースでの知的交流が、恋人同士の関係に似ているという発想です。
このコンセプトをロゴ化するにあたり、Invade Designは恋人同士がキスしているようにも、ひとりの顔のようにも見えるシンボルマークを作り出しました。
また、Communalのマニフェストは、「My mind > your mind > mindsex > mindset > reset > repeat」というユニークなものです。これは、「マインドセックス」を経てs、それまで持っていたマインドセットがリセットされること。さらに、新たな「マインドセックス」すなわち交流によって、そのプロセスが永遠に繰り返されることを意味しています。そのためのスペースがCommunalであるというわけです。ワードマークの「CO」が無限マークになっているのは、この永遠に繰り返されるプロセスが象徴されているのです。
アイテムによっては、ロゴに「オカシナ恋人たち(amantes dementes)」という文字が添えられています。このタイトルをつけたプロモーション動画も同スタジオが製作しました。動画では、ブランドのコンセプトが、刺激的、かつ、わかりやすくまとめられています。
Credits:
・invade design team
・Communal creative team
・Carolina Alzate, Camila Pardo, David Madrid and Miguel Murillo.
・Photography and video by invade design
・Commercial photography by Rads
・Art direction and production by Catalina Romero
・Architecture by Yemail Arquitectura
・Architecture photography by Alejandro Arango
食材へのこだわりを楽しく表現したレストランのワードロゴ作成例
レストラン「Vivo – Live Food」は、健康に良い料理を提供するために、自社農場で食材の栽培もおこなっています。ブランディングをInvade Designが手がけました。
同レストランのメニューやカートンボックスなどには「薬の前に農場(farm before pharm)」というタグラインが見られます。日本では「食は医なり」と言われますが、それと同じようなメッセージといえます。レストランVivoのオーナーも産地が健康の鍵であると考えているのです。それが、トレーサビリティにこだわり、自社農場で食材を育てている理由です。
また、「生鮮野菜(live food)」「農場からお手元へ(from the land to your hands)」というフレーズもあります。これらはすべて、素材にこだわって健康的な料理を届ける、というメッセージです。
Invade Designは、レストランVivoのコンセプトに基づいたシンプルで魅力的なワードロゴを生み出しました。文字の一部を少し隠しただけで、農地に実る作物に見えるようにしたデザインです。
同レストランのスムージーのボトルにも「Vivo」のワードロゴがつけられています。このボトルからグラスに注がれるのを見ると、まさに農地から届けられた新鮮でヘルシーな食材が提供されているのだと、ほほえましく再認識させられます。
Credits:
・Photography by invade design
・Art direction by Elisa Angel
・Interior design by Reeal
それ自体作品として楽しめる動画ポートフォリオ
数多くのブランディングを手がけているInvade Designですが、ロゴ作品の一部をまとめた動画をWEB上で見ることができます。ノスタルジックで軽快な音楽をバックに作品が紹介されていく様子は、古い映画のタイトルバック風です。
制作例はすべてモーションロゴ化されていて、たっぷり添えられた効果音もあり、飽きさせません。登場するアニメーションをながめているだけでも楽しめます。
動きと効果音が助けとなって、ロゴ制作の意図が推察しやすくなっています。いろいろなアイデアのヒントになるのではないでしょうか。
design : Invade Design (Colombia)
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