ポーランドで15年以上のキャリアを積むデザイン事務所「Mamastudio」は、ビジュアルコミュニケーションに特化したロゴ/ブランディング案件を多数手掛けています。彼らの強みはそれぞれ専門分野をもつスペシャリストが在籍していること。デザイン、インテリア、マーケティング、金融等ブランディングに関わるほとんどの分野をカバーしています。
そんな彼らが意識しているのが伝統とモダニズムを融合したブランドデザイン。美しい自然、中世から今も残る城跡や、カラフルな情緒溢れる町並み。そうした、ポーランドが昔からもつ伝統的な側面を生かしながら、現在のアートやトレンドも取り入れ、魅力的なブランドづくりを仕掛けています。※記事掲載はデザイナーの許諾を得ています。(Thank you, Mamastudio! )
頭文字と山頂風景を重ねて表現したスキー用品メーカーのロゴブランディング
ポーランドのカスタムメイドのスキー用品メーカー「Monck Custom」。ブランド名にある「Monck」は英語の「Monk(=僧侶)」に由来しています。Monck Customのスキーづくりは、正直でシンプル。機能性を重視し、発注主に合った最高のギアを提供することが彼らの使命です。その製品づくりに対する姿勢は、敬虔な僧侶に通じるものがあります。思いを持って仕事に専念し、完璧なる製品づくりに日々邁進する。そのような意味合いを含んだ、Monck Customに相応しいロゴマーク制作からブランディングははじまりました。
シンボルマークはMonck Customの「M」を象り制作されました。このシンボルにはもう一つベースとなっているものがあります。ポーランドでもっとも標高の高い山、タトラ山の山頂です。ポーランドのスキーヤーにはお馴染みのタトラ山とブランド名の頭文字を重ね合わせ、シンプルかつ力強いシンボルマークが完成しました。
シンボルマークに加え、ロゴタイプも制作されました。シンボルマークにも使われた鋭角な角をもつ「M」と、横に広く伸ばされたような「N」が印象的です。この「N」は、スキーヤーに合わせ、製品を調整し、どんな要望にも対応するという柔軟さをあらわしています。
ロゴマーク自体は、シンプルで飽きのこないモノクロで設定されています。その代わり、シーズンごとにカラーパレットが設定され、スキーの先端やボディに差し色として、ロゴマークと共にプロダクトデザインに取り入れられています。
制作されたロゴマークを基本にビジュアル・アイデンティティが設定され、カードやステッカー、Tシャツなどが展開されています。デザイン自体はシンプルに、スキー板と同様の斜めラインや自然のモチーフなどを使い、質の高さを感じさせる品のあるデザインでまとめられています。
バックカントリーでのスキーに重宝されている木製スキー。Monck Customも材料に木の心材を使用しています。大自然の中にあっても風景に溶け合うような木目のスキーは見た目にも美しく、同時に材料へのこだわりも表現しています。
ワイルドなパッケージで男心をくすぐる男性用石鹸のブランディング
「Zew for men」は、ポーランドからウクライナへ延びる険しい山岳地帯 : ビエシュチャディ山地で採れる炭を原料にした男性用石鹸です。「強さ」「自然」「男性」「アクティブライフ」をコンセプトにブランディングがすすめられました。
ロゴマークはインパクトを重視し、「Zew」を力強く表現することになりました。波打つようにアップダウンを繰り返すラインで書かれた「W」は、ビエシュチャディ山地の厳しい山並みを表現し、それと同時にそこに生息するオオカミや犬のモチーフも兼ねています。繰り返す波は、力強いバイタルサインのようにも見え、自然に息づく強い生命力を感じるロゴマークに仕上がっています。
石鹸に直接彫り込むことで、ロゴマークと商品とが一体となり強い存在感を放っています。ブラックに映えますね。
設定されたロゴマークを基に、パッケージデザインが制作されました。ロゴタイプと同じフォントを使用し、黒一色のベースに、ハイコントラストな白で品名や注釈が書かれています。側面に書かれているのは、使い方や原料、肌への影響等です。これらの情報を見やすく整理するためにアイコンがデザインされ、それぞれのカテゴリーをすっきりと見せています。右に見えるフラップ部分にある羽と草がクロスしているマークは、ビエシュチャディ山地の緯度と経度をビジュアライズしたものです。商品特性を伝えるため、細部に渡りこだわって制作されたパッケージデザインです。
最後に、ZewのCMを動画でご覧ください。ロゴやパッケージを通して伝えてきた世界観がそのまま映像になっています。商品の姿はあえて出さず、男のワイルドライフを描く様は商品のコンセプトそのものを表しているのではないでしょうか。
https://vimeo.com/138632092
イラストとカラーコードでナビゲートする、フィットネスジムのブランディング
ポーランドの都市型フィットネスジムチェーン「City Fit」は、アスリートだけでなく、一般の都市生活者に健康な毎日を送ってもらうために、通いやすいジムを目指してオープンしました。今回Mamastudioが依頼されたのは、都市部に建設される2階建てジムのブランディングです。ジム内は9つのゾーンに分かれており、利用者にとってはどこになにがあるのか覚えづらく、迷ってしまうのではないかという問題点も孕んでいました。
そこで彼らが考案したのは、それぞれのゾーンに象徴的なイラストを制作し、それに伴いそれぞれ独自のカラーラインを設定することでした。この2つをセットでゾーン内の壁や柱などにプリントすることで、そのゾーンでの運動内容が一目でわかるようになりました。
イラストと一緒に登場していたカラーラインですが、この使い方が非常に革新的です。上の画像をご覧になってわかるとおり、それぞれのゾーンがどっちの方角にあるかということをビジュアルで表現し、ナビゲーションの役割を担っているのです。階段につけられたクリアパネルにプリントすることで、上の階にどんな施設があるのかも一目瞭然ですね。
また、ナビゲーションという役割だけでなく、各ゾーンに統一感を与えるようなインテリアデザインの要素も兼ねており、スペース全体がそれぞれのカラーに対応してデザインされています。
同様に施設内各所での注意喚起のサインもイラストでアイコン化されています。こうした細かい部分まで徹底して統一することにより、ジム全体が高いクオリティのもと運営されているというイメージを定着することができます。また、それが利用者のモラル向上にも繋がり施設運営に良い結果をもたらすのではないでしょうか。
そして最後にもう一つ。ロッカーにはランダムにモチベーションを上げるさまざまなスローガンがプリントされています。これらは写真に撮られ、ソーシャルネットワークで数多くシェアされているそうです。こうしたちょっとした遊び心ある仕掛けが、話題に火をつけるのかもしれませんね。
築100年以上のビルをまるごとリブランディング!Mamastudioプロデュースのデザインホテル
ワルシャワに位置するデザインホテル「Auter Rooms」。築100年以上経つビルディングをMamastudioが主導でリノベーションし、4室だけのとっておきのホテルを作り上げました。ワルシャワを愛してやまない彼らだからこそ作り上げた特別な空間。東欧の歴史の匂い漂う部屋に「今」のポーランドのデザインが融合した、世界中から注目される唯一無二のホテルです。
このホテルのコンセプトは「鍵」。最近でこそカードキーが普及し、なかなかその姿を見ることが少なくなりましたが、元来、ホテルに宿泊すると最初に手渡されるのが「ルームキー」なのです。その鍵をホテルそのものをあらわすモチーフとし、また、このホテルを拠点にワルシャワの魅力を知ってもらいたいという想いから、このホテル自体をワルシャワの「鍵」として捉えています。
そこで制作されたのが、「鍵」をモチーフにしたホテルのロゴデザインです。「Autor Rooms」の「A」を鍵の中心に据え、モノラインで描かれた横向きの鍵。その姿は紛れもなく「鍵」でありますが、ホテルと街との繋がりを表しているようでもあります。
デザイナーが主導でプロデュースしたホテルというだけあり、そのアメニティグッズのクオリティも素晴らしく、こだわりぬいた品々ばかりです。ホテルを訪れる人々はもちろん、各国のお洒落に敏感な人々からも注目を集め、日本国内でもグッズ販売がなされるほどです。
宿泊客に街を存分に楽しんでもらいたいという想いを込め、シティガイドやマップも作成されています。まさに街を知るための「鍵」となるアイデアですね。
旅の思い出になる、オリジナルステッカーです。東欧らしい色使いと素朴で可愛らしい図柄が好印象です。お土産用に持ち帰るも良し、エアメールに貼り添えて送るも良し。3種類のパターンの中から、送る相手が喜んでくれそうなデザインをチョイスする楽しみもありますね。
「Autors Rooms」とは、直訳すると「作家の部屋」となります。リノベーションを主導してきたMamastudioと共に制作してきた地元アーティストたち、「作家」の想いがたっぷり詰まったワルシャワの「鍵」となる場所、それが「Autors Rooms」です。ポーランドに訪れることがあれば是非宿泊してみたいですね。
まとめ
専門家集団らしい、スケールの大きな仕事が印象的でしたね。しかし、そのどれもがコンセプトの意を忠実に汲み、ビジュアルに落とし込んだロゴデザインが中心になっていたように思います。そのロゴデザインから発展し、パッケージデザインやプロダクト、インテリアやポスター、フライヤーとブランディングの裾野を確実に広げています。機能的かつ美しい彼らのプロジェクトは、今、国内外から大きな注目を集めています。古き良きポーランドの魅力をさらに魅力的に見せる彼らの仕事は、これからのブランディングの良い参考になるのではないでしょうか。
design : Mamastudio ( Poland )
最後までお読みいただきありがとうございます。共感する点・面白いと感じる点等がありましたら、【いいね!】【シェア】いただけますと幸いです。ブログやWEBサイトなどでのご紹介は大歓迎です!(掲載情報や画像等のコンテンツは、当サイトまたは画像制作者等の第三者が権利を所有しています。転載はご遠慮ください。)
サイトへのお問い合わせ・依頼 / 各種デザイン作成について